第10話 光莉よりも劣ってるけど…。

全く理解できなかったので、もう一回説明してもらった。

要約するとこんな感じ。


1 俺が光莉に告白をした。そしてOKをもらった。


2 その数週間後、俺は光莉の家に招待してもらった。


3 俺が光莉の家に招待された時、俺は光莉のお母さんには挨拶をしたが、朱莉さんにあった記憶はない。しかし朱莉さんは俺のことを見ていた。


4 その時、朱莉さんは俺に一目惚れした。 


5 その日を境に朱莉さんはいつも光莉には何事も負けていたが、自分こそが俺を幸せにする人だと見せつけるため、彼氏奪還作戦に出たという。


6 その作戦の第一ミッションが俺をストーカーするということ。


7 ストーカーをして、俺の私生活やらを洗いざらいにした後、朱莉さんは光莉にデマを流したと。


端的にまとめても、まだ複雑な気がする。何度説明されても理解できる自信がない。混乱する頭をどうにか動かして、なんとか理解する。


俺は朱莉さんに尋ねた。


「朱莉さんはこの行為が正しいと思うんですか?」


この答えで俺は朱莉さんとの付き合い方を考えようと思った。


もし朱莉さんが、この行動が正しいというのなら、俺は朱莉さんと別れる。

もし朱莉さんが、この行動が間違いというのなら、一緒に解決策を考える。




正直、俺は光莉と付き合うことに疑問を持ち始めていた。


あれほどの美少女と一緒に毎日帰ったり、お出かけに行ったり。幸せだったのだろうけど、何故かいつも俺は距離を感じていた。どう足掻いても越えられない壁。


何度も言うが、光莉は格が違いすぎた。




朱莉さんは少し黙り込んだ後、口を開いた。


「私のしたことは取り返しのつかないこと。海斗君が好きだったであろう光莉を無理矢理、引き裂いたんだから。私は愚か者です。今すぐにでも私を殴って、光莉の元に行ってください。」


そう告げる朱莉さんの目には涙があった。


「私が無理矢理引き裂いたの。海斗君は何も悪くないのに、さっきも光莉にあんなこと言われて。私のせいで。ほんとに許されないことしちゃった。ごめんなさい。ごめんなさい。」


朱莉さんは大粒の涙を目から落としていた。

俺も泣きそうになったが、涙を堪えて、朱莉さんに言う。


「もう過ぎたことだからいいんです。本当なら許せないことかもしれないですけど、朱莉さんの本気度は伝わりましたし。光莉から奪うためにそれだけ努力をしたことも事実なんですから。」


朱莉さんは親にも光莉と差別されてきたんだろう。

昨日の発言からも分かる通り、少なくとも朱莉さんはちゃんとした愛情をもらってはいないのだろう。

光莉が羨ましい。その感情が爆発したのが今回だったのだろう。光莉から俺を奪う。そのためなら半年かけてでも、俺のことを調べたのだから。


俺は朱莉さんに抱きついた。


「朱莉さん、あなたの努力が実ったことを光莉に見せつけましょう。朱莉さんがどれだけ光莉よりも優れているか。俺を幸せにするにはどっちの方がいいのか。これから俺と朱莉さんで見せつけましょう。」


歯止めをかけていた涙も止まらなかった。俺は嘘かのように涙を流していた。


朱莉さんも涙を流す。


「ありがとう。海斗君。こんな私だけど…。光莉よりも劣ってるけど…。」


「やめてください!光莉よりもずっとずっといい子です、朱莉さんは。」


お互い抱きつき合いながら涙を流す。


付き合って二日目のカップルとは思えないよな。









 あれから数時間が経ち、朱莉さんも俺もだいぶ落ち着いて、ソファーでお互いの頭をくっつけながら座っていた。


なんとなくつけたテレビを見ながら、無言で一時間は経っている。時折、朱莉さんの方をチラッと見ると、向こうも俺のことをチラッと見返してきて、笑顔でまたテレビを見始める。


俺は突然、朱莉さんに抱きついた。なんの意味もなく。


「へぇ!?」

「朱莉さん、好きです。」

「う、うん。ありがとう。」

「離れないでください。」

「わ、わかったよ。」


なんの意味もなく、ではない。訂正。甘えたかった。


「朱莉さん、カワイイです。」

「ふぇ!?」

「俺のものですよね?」

「そ、そうだよ?」


自分でも馬鹿みたいだなって思うけど、こんなこと朱莉さんだからできるんだ。

光莉だったらできない。


やっぱりお姉さんだ、朱莉さんは。






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