第9話 フラれた理由聞いても、私のこと嫌いにならないでね?
もはや逃げ場もない状況なので、お互い笑うしかなかった。
「もういい。海斗には本当に呆れた。そんな人だとは思わなかった。」
光莉はそう言いとげて店を去って行った。
俺は意味が分からず、頭の上に『?マーク』をいっぱい浮かべた。
朱莉さんは気まずそうな顔をしている。
そりゃ気まずいに決まってる。だって、妹だもん。
「ま、まぁ、ひとまずスイーツ買って、家戻りましょ。そしたら、話でも、ね?」
「う、うん。」
朱莉さんはそう言いながら、何個かスイーツをカゴに入れて、俺とレジに並んだ。
スイーツを買い終えて、店を出てから、朱莉さんは一言も喋らない。もうそろそろ家に着くのに、何一つとして喋らない。行きの時とは大違いのテンション。
俺は朱莉さんの手を取って、手を繋ぐ。どうも落ち込んでいて、見ているこっち側も悲しくなってくるような感じ。
俺たちは一言も喋らずに家まで向かった。
家に着いてからも朱莉さんは無言だった。
珍しいというか、昨日今日の朱莉さんを見ていてこんなに喋らないのはだいぶメンタル面が厳しいのかな?とか考えたりもした。しかし俺はさっきの状況が気まずくて、何も喋れないというよりかは、朱莉さんが何かを隠しているようにも見えた。
とはいえ当の本人は何も言葉を発しないので何も分からない。
俺は気になって尋ねる。
「あのー、今買ってきたスイーツでも食べながらでいいんで、少しお話ししませんか?」
すると朱莉さんは我に帰ったかのように、返事をする。
「あっ!あぁ!そ、そうだね!」
俺と朱莉さんは向かい合って椅子に座り、先ほど買ったスイーツをテーブルに並べる。
「朱莉さん、さっきの状況、気まずかったですよね?」
俺は確認から入った。
「うん、そうだね。」
少し笑いながら返事をする。
「俺と朱莉さんが一緒にいること自体には、光莉は驚いてるようには見えなかったんですけど。なんせ光莉が『海斗には呆れた。』って言ってたんで。俺、そんなに悪いことしたかなって。フってきたの向こうなのに…。」
明らかに光莉の発言がおかしいよね?と確認のために喋っている時だった。
「ごめんなさい!!!!!」
朱莉さんが突然、俺が喋っている途中に大きな声で謝ってきた。
「いや!なんですか!?そんなに頭下げないでください!!!」
朱莉さんは椅子から立ち上がって、そのまま土下座を始めた。
「いや、ほんとに!どうしたんですか!?俺、何も理解できないんですけど!?」
「本当に申し訳ないことをしてしまった。海斗君には申し訳ないことを…。」
「何をしたんですか!?朱莉さんが俺に何したっていうんですか!?」
「私が海斗君のことを悪者扱いさせてしまった…。」
「?????」
これまた訳の分からないことを言い始めた。
「それってどういう意味なんですか?てかちゃんと椅子に座ってくれませんか?」
「う、うん。わかった。」
朱莉さんは椅子に座り直すと、俺がフラれた経緯について一から説明を始めた。
「昨日、私、海斗君にフラれた理由、教えなかったよね?」
「そうですね。教えてもらってないです。」
「フラれた理由を言うね。」
「はい。」
「フラれた理由聞いても、私のこと嫌いにならないでね?」
「それは分からないですけど。まだ聞いてないんで。」
「うん。そうだよね。嫌われても仕方ないや。図々しいお願いだよね。何せ光莉が海斗君のことフったのは、私がデマを流したからなんだからさ。」
「?????」
さっきから朱莉さんから出る言葉が全く理解できない。
「私が光莉に海斗君が二股してるってデマを流したの。」
「……。」
「私が海斗君のことを好きなったのは光莉と付き合った時だったの。」
「ほ、ほう。」
「光莉が家族に彼氏ができたって報告してきて、今度、家に連れてくるねって。それで一回宇佐美家に来たことがあったでしょ?」
「あ、あぁー!そんなことありましたね。でもあの時会ったのは光莉のお母さんだけだったような…。」
「その時私も家にいたの。もちろん海斗君のことも見てた。その時一目惚れしちゃってね。」
「そう、だったんですね。」
「その日を境に海斗君だけは絶対に光莉から奪うって決めたの。いつも私より光莉の方が良いところが多くて、それでも私の方が光莉よりも海斗君を幸せにできるって。見せつけたくって。約半年間、海斗君の跡をつけ回して、ストーカーして。私生活から何から全て理解してるつもりだった。」
「……。」
「でもストーカーしてるだけじゃ、奪い取れないって。」
「そ、そうですね。」
なんだか犯罪まがいなことになってきた。
「だから私が光莉に言ったの。『光莉の付き合ってる海斗君、二股してるよ。』って。」
「ん?」
「私は海斗君のストーカーもしてたから、クラスメイトとか、海斗君がよく一緒にいる友達とかの名前も大体わかるから。」
「少し怖いんですけど。」
そう言ってみたものの何故か朱莉さんは熱が入って語り続けた。
「私がそう言ったら光莉はキレてね。そんな男と付き合ってたなんて、って。」
「俺、だいぶ悪いやつに仕立て上げられてますね。」
「案の定、光莉は次の日、海斗君のことをフってさ。それが昨日ってこと。」
「あの、説明してもらった後で申し訳ないんですけど、全く理解してないんですけど。」
「へっ?」
当たり前だろう。こんな話、信じられないよ。
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