第8話 遭遇しちゃいけない人、発見!!!
「いや、別に今となっては泊まってもらって構わないんですけど…。」
こうして付き合うことになったので、気にすることではないかもしれないけど。
「実はー、、、」
「実は?」
「実は海斗君が学校から出てきた時から後ろ、ついてたんだよね。」
「えっ!?」
「それでー、私、海斗君が公園でぼーっとしてるの見て、急いで一旦家帰ってさ。それから一泊できるくらいには準備して公園に戻ったの。案の定、海斗君はまだぼーっとしてたからさ。」
「そうだったんですね。」
「許して!?悪気があったわけじゃなくてね!?ほんとに!?」
「いや、流石に不審者感があったら家になんか入れないですよ。」
「私は不審者感がなかったと?」
「ないとは言わないですけど、光莉のお姉ちゃんだって言うんで。」
「光莉のお姉ちゃんねー。それだけで信用してもらえるんだから。それだけ光莉はいい子なんだね、どこでも。」
突如として光莉の名前を聞くと、顔を下に向けて、あからさまに落ち込む。
俺は地雷を踏んだと確信して、朱莉さんのそばに駆け寄った。
「いや、光莉のお姉ちゃんだからというか、一応知人ではあるので。俺でも別に仲良くない友達のお姉ちゃんに話しかけられても、無視しますよ?」
「それは私だから、話してくれたと?」
「ま、まぁ、そう言うことです。」
朱莉さんはさっきまでの暗い顔をどこかに追いやったのか知らないが、すごいニコニコになっている。
「私ね、海斗君が居ないと生きていけないの。だからこれからはちゃんとそばに居てね?」
「もちろん。そばにいさせてください。」
「えへへ。約束だよ?」
朱莉さんは俺に小指を差し出し、指切りをする。
そして朱莉さんは少し声のボリュームを上げて言う。
「よーし!ケーキ、買いに行くぞー!」
コンビニに行こうと決めてから約30分以上が経過していた。
俺たちは家のドアを開けて、外に出る。
歩き始めた朱莉さんはどこか冒険に行くのかと思わせんばかりに、心を躍らせている。見ればわかる。鼻歌を歌いながら、若干スキップをしながら歩いている。
俺は少し先を歩く朱莉さんに追いつくように小走りをする。そして俺は朱莉さんの手を取り、手をつなぐ。
すると朱莉さんは一旦立ち止まって、俺に聞く。
「ふーん?そんなに積極的だったの?海斗君って。」
「いや、積極的というか、恋人ってこういうことするのが普通じゃないかなって。」
「そっか!そういうものか!」
朱莉さんは秒速で納得し、ぎゅっと手を繋ぎりしめる。俺たちは手を繋ぎながら歩き始めた。
俺はコンビニに向かう途中、朱莉さんに質問をした。
「朱莉さん、今日の朝ご飯、多分買い出しに行ってから作りましたよね?」
「ふぇっ!?」
「いや、あの味噌汁の味、いつも自分が作るだしの味とは少し違った気がして。それに卵も切らしてたはずなのに目玉焼きも作ってくれてたので。」
明らかにおかしいとは思った。あんなに料理を作れるほど、食材が残ってたとは思えない。いくら月一で買い出し行ってるとはいえ、あともう少しで冷蔵庫の中身も無くなりそうだったのだから。
「もー、バレちゃったかー!海斗君、鋭いねぇ〜。」
「買い出し、行ったんですか?」
「そりゃ行きましたよ!朝、6時に起きて、冷蔵庫開けたら、全然食材ないし!わざわざスーパーまで行って、買ってきてから作ったんだよ。」
「尚更のこと感謝でしかないです。ほんとありがとうございます。」
「いいの、いいの。私が無理矢理、昨日は押しかけちゃったから。せめてものお礼だよ。」
聖人にも程があるんじゃないかってレベル。
俺は申し訳ないと思いつつ、これ以上俺が感謝をしても、朱莉さんは「いいんだよー。」としか言わない気がする。
俺は今日、コンビニで買うスイーツを大盤振る舞いしようと決意した。
そこまで遠くないコンビニまで来た。歩いて15分くらいのところ。家のすぐ近くというか、ここしかコンビニがないと言った方がいいだろう。
俺たちはコンビニに入り、スイーツコーナーへと向かう。
「朱莉さん、なんのスイーツが好きなんですか?」
「スイーツかー。なんだろう。ケーキと、エクレアも好き。あとシュークリームとプリンとか。あと和菓子も好きだなぁ。」
「じゃー、全部買いましょ!」
「えっ!?いいって!そんなことしてもらうほど、私何もしてないから!」
俺は朱莉さんが必死になって遠慮しているのを見て、笑いながら言い返す。
「朱莉さんには朝ごはん、作ってもらったんで、お昼ご飯だと思ってください!」
俺がそう返すと、朱莉さんは『そう?』と遠慮がちに言う。
「ほら、なんでもいいんでいっぱい買いましょ!」
「うん!わかった!それじゃー、遠慮なく買ってもらうよ!」
俺らがそう言いながらスイーツを選んでいる時だった。
「お姉ちゃんと横にいるのは海斗!?」
突然俺の名前が聞こえる。それと同時に朱莉さんも動きが止まった。
俺たちは恐る恐る振り返る。
そこにはなんと俺の元カノで、今カノの妹の光莉がいた。
俺は突然のことに声が出なくなり、俺が横を見ると同じく横を向いた朱莉さんと目が合った。
「遭遇しちゃいけない人、発見!!!」と言葉を交わさずにテレパシーで感じ取った。
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