第7話 えへへ。バレちゃったー。

 壮絶な一日を終えた次の日、土曜日なので俺はアラームをかけていなかった。それもあって、俺が目覚めると、時計は10時を回っていた。


俺は驚いて飛び起きる。すると昨日の夜、一緒に寝たいと騒いでいた朱莉さんが俺の横にいなかった。




もうとっくに起きていてリビングにでもいるのだろうか。


俺はリビングに向かった。そしてリビングのドアを開けるとそこにはソファーで寝ている朱莉さんの姿があった。


「なんでこんなところで寝てるんだ?」


俺は意味が分からず、リビングに入っていくと、ダイニングテーブルには色々な料理が置いてあった。


「これ、朱莉さんが作ったのか?」


並んでいる料理を作るだけでもざっと一時間は裕にかかるだろう。

朝からこんな物を作らせてしまったのか。

俺はゆっくり朱莉さんに近づく。そして朱莉さんの横に座り、耳元でつぶやく。


「おはようございます。朱莉さん。」


するとビクッと驚いて、飛び起きる。


「うわっ!海斗君!起きてたの!おはよう!」


「朱莉さんがこの料理作ってくれたんですよね。すいません、なんか。」


色々申し訳ないなと思い、感謝の意味も込めて謝罪をした。

すると朱莉さんは俺に優しく抱きついてきた。


「昨日は私がいっぱいわがまま言っちゃったし、一緒に横で寝てくれたんだもん!私が海斗君のためにって言ったけど、実際、私が一緒に寝たかっただけだし…。」


「朱莉さんは悪くないですよ。」


「でも、わがまま言っちゃったのは本当だからさぁ。」


「わがままも言ってください。俺、彼氏ですよ?朱莉さんのわがまま、ちゃんと聞きますから。」


「ほんと?」


少し照れくさそうに聞き返す。


「もちろん。朱莉さんの甘える姿も見たいので。」


俺がそう返すと、朱莉さんは顔を赤くして、それを誤魔化すかのように立ち上がった。


「わ、私、朝ごはん作ったから!早く食べようよ!」


朱莉さんは照れ隠しのようにダイニングテーブルへと向かった。






 食事をとり終えて、正午を回りかけた頃。俺も朱莉さんも朝食を取り終えたあと、ソファーに座っていたが、朱莉さんはすぐに寝てしまった。しかも俺の肩に頭を乗せて。


朝早くからごはんを作って、疲れてしまったのだろう。

申し訳ないことをした。


俺は一時間ほど朱莉さんの頭を支えるようにして、ソファーに座りながらスマホをいじっていた。


しかし流石に俺も何時間も座っていられるわけでもなく、そろそろ動きたくなってきた。


俺は水を取りに行くために、朱莉さんの頭をそっとどかして立ち上がる。


水を飲み終えても、朱莉さんはまだ起きておらず、俺はコンビニでも出かけてお菓子でも買ってこようかなと思った。


「朝ごはんが遅かったし、朱莉さんも疲れてるだろうから、お昼ご飯は作らずに少しケーキでも買ってこよう。」


俺はつぶやき、自分の部屋に向かった。




お出かけ用に服を着替えて、俺は買い物の準備をする。


大抵買い物に行く時は、冷蔵庫の中身が無くなった時。たまにデリバリーで頼んだりするため、食材を買い物に行くのは月一程度。お菓子と飲み物とかは学校帰りに買って帰ったりするので、こうして休日に外に出ることもあまりない。

外に出るといえば、散歩に行くくらい。家の近くを散策したり、新しいお店ができたら行ってみたり。と言うものの、最後に散歩に行ったのは一ヶ月以上前の話。




 俺は出かける支度を終えてリビングに行くと、そこにはちょうど今起きて伸びをしている朱莉さんの姿がある。


「んー、海斗君、どっか出かけるの?」


「ちょっと買い物でも行こうかなって。朝ごはんが遅かったので、お昼ご飯はいらないですし。でもお腹空くだろうからケーキでも買いに行こうかなって。」


すると朱莉さんはという言葉に目を光らせる。


「ケーキ!?ケーキ買うの!?待って!私も行きたい!」


朱莉さんは突然立ち上がって、駆け足で俺に近寄る。


「ちょっと待ってて!今、お出かけの準備するから!」


朱莉さんはそういって、リビングから出ていった。





 朱莉さんが準備を始めてから、15分ほど経った。一向に朱莉さんの準備が終わる気配がない。


俺は気になって、ソファーに座っていたのに、立ち上がって確認しに行こうとした時。


ガラガラと朱莉さんはリビングのドアを開けて、入ってきた。


「お待たせー!ごめん!少し遅くなっちゃった!」


そこに居たのは、少しだけメイクをした朱莉さん。

しかもしっかりお出かけ用に洋服も着替えてある。


「あのー、朱莉さん、洋服、持ってたんですか?」


「あっ!」


「朱莉さん、さては俺の家に泊まる気、満々でしたね?」


「えへへ。バレちゃったー。」


バレちゃったと言うその顔も可愛い。そんな顔したら、許しちゃうでしょ。







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