第11話 平日が終わると訪れるモノ

 俺らが光莉に遭遇した日から一週間が経過した。「もうそんなに経ったのか」と思えばいいのか「まだ一週間なのか」と思えばいいのか分からないのだが。


そんなことより、この一週間にあった事を説明しよう。






 まずは土曜日の後の話。朱莉さんは俺の家に住む!と言って、自分の家から洋服から何からほぼ全てを俺の家に持ってきた。もちろん朱莉さんが自分の家に戻ると、光莉がいたらしいが、無言で出てきたらしい。




日曜日はお互い、これからどうやって生活していこうか?とかの話し合いをしていた。

朱莉さんはもう社会人で会社員。バリバリのキャリアウーマン。それもあって、俺みたいな高校生と付き合うのは難しいかなとか思ったりもしたけど、朱莉さんの愛はそんなものじゃなかった。


「どんだけ仕事が忙しくても、今後海斗君と暮らすためなら、何も苦じゃないし。それに何がなんでも時間、作るから!」


と言い張って、仕事と恋愛を両立させるらしい。






 その次の話。朱莉さんも大変だが、それ以上に大変だったのはこの一週間を過ごした俺。


 もちろん俺は学校があるので行かなければならなくって、いつものようにこの一週間を過ごそうと、月曜日、登校したのだった。しかし、光莉にフラれたこともあって学校中は大騒ぎ。「光莉がフリーになった」とか「光莉の彼氏、二股してた」とか。朱莉さんのデマから始まった騒動はもう収集のつかない事態になっていた。


学校の女子からは二股彼氏とか言われている俺だが、男子からはそんなことは一切疑われないし、ある程度はメンタルがボロボロにならずに過ごせた。その理由は俺の友達の運の良さだろう。


俺の親友で幼馴染である水野洸太は学校一の美男子。

女子からの視線の絶えない男。

女子と絡まざるを得ないくらいの男なので、こいつに絡んでればもしかしたら彼女できるかも、とか考える奴がいる。

そんな奴たちが洸太に絡みたくて、近寄ってくる。

しかし洸太はいつも俺の側にいるので、どうしても俺も会話に混ざってしまい、結局色んな男子生徒と仲良くなるのだ。


その甲斐あって、俺がそんなことをする奴じゃないと少なくともクラスメイトの奴らは思っているのだろう。


朝、学校に登校すると、早速洸太が話しかけてけてくる。


「海斗、おまえ二股するような奴じゃねーよな。なんでこんな噂たってんだ?」


「俺も知らん。二股してないのにフラれたよ。」


まぁ、こんな感じで洸太以外の人たちにも色んなことを聞かれた。




しかし質問攻めも案外キツイ。俺は何も悪くないのに色々別れた理由とかも聞かれたりして。それでも質問攻めよりももっとキツイのは、周りからの視線。何より女子からの視線はとんでもなく冷たかった。



正直、病むのも分からなくない感じ。



それでも俺はメンタルを保てていた。



その理由は、友達の運の良さと、家に朱莉さんがいるから。



人と一緒に過ごすって、こんなにも温かくて心地のいいものなのかと感動した。


毎日、学校から帰宅してから勉強やらを済ませると、朱莉さんが帰ってくる時間帯になっている。

俺が夜ご飯の準備をしている途中に朱莉さんが仕事から帰ってきて、朱莉さんそのままお風呂に向かう。

そして朱莉さんがお風呂から出てきた頃にご飯も完成して…。


といった感じで案外にも同棲はすんなり行くものだった。


朱莉さんのためにご飯を作るとか、朱莉さんのためを思えば自然とメンタルも回復して、やる事をやるように体が動く。


俺は朱莉さんのことが本当に好きなんだなって思う一週間だった。








 そして今、土曜日の朝である。俺が目を覚ますとまだ朱莉さんは眠っていた。


忙しくも充実した一週間を過ごした俺。朱莉さんにもそうであってほしいが、何よりもこの休日は俺たち、カップルにはとてもありがたい休日。


同い年ならば生活リズムはある程度似ているのかもしれないが、俺らは高校生と会社員のカップル。


お互い朝早くに家を出て、俺は多少早く家に帰るが、朱莉さんが家に帰ってくるのは7時ちょっと前。それに今週はなかったが、残業も時々あるらしく、一緒にいられる時間はせいぜい夜の8時頃から次の日の朝まで。


そんなカップルが朝から一緒に過ごせる日を待ち望まない訳がない。


そんな事を考えていると、朱莉さんが目を覚ましていた。俺らはベッドからわざと出ずに、お互いに顔を合わせてニコニコしているだけの時間を過ごす。


これだけで幸せ。


ここから始まる俺らの休日。


お互いを深く知る休日。

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