明かされた真実と直接対決
俺は21時にある場所に向かう。予想通り、そこには人影があった。
「やっぱりか……エリス」
「…… やっぱりバレちゃったか。なんでわかったの?」
いつも訓練に付き合っていた岡の上には、楽しそうなエリスがいた。
「まずミオ本人ではない誰かが動いているのは確実だ。ミオがそれほど上手く嘘をつける様子はないし、ミオ本人にしては行動や発言が不審すぎる。
そして、今回の件では殺意は感じなかった。おそらく純粋に話しをしたかった、声をかけたかった、手紙を渡したかったという気持ちだけだろう。
見た目はミオにそっくりだった。そこから候補はミオとそっくりなミオの姉達と考えていたわけだ。ただ、ミオの姉達は怪しげなミオ?に話しかけられた時点ではまだ会ったことはなかった。会話もしたことがない相手に話しかけられるとは思えないため、現実的に考えて選択肢にはないだろう。そして話をした感じもミオ?と一致しない。この時点で犯人ではないと判断した。
そこで残る可能性は…… 変装だ。しかし本人にそっくりな変装をするなんて怪盗でもない限り難しいだろう。そこで俺は自身に掛けられている魔法「変身」を思い出したわけだ。可能性はアリエッサの魔法で変身したヘッズオブラウンジの4人。この中で話し下手という特徴と、「集合場所を指定できる」思い出の場所があるのはエリス一人だ。
そしてエリスは最近サクラに戻ってきたのでタイミング的にも一致する。ということでアリエッサにエリスに変身魔法をかけたか聞いたらあっさり認めた、というわけさ」
「なるほど……。やっぱりカミトはすごいね。私の自慢の師匠だよ」
エリスは嬉しそうだ。
「久しぶりに帰ってきたらカミトが別のチームに入って楽しそうにしていて…… しかも毎日カフェに入り浸って女の子と仲良くしてると聞いて嫉妬しちゃった……」
「まあ、楽しんでいるのは事実だが…… どっちのチームも俺にとっては大事だぞ。ヘッズオブドラゴンは俺のチームだよ」
「それがわかってよかったよ。…… それで今日のお願いは、わかってると思うけど久しぶりに本気で勝負がしたい。お互い魔法禁止で……どう?」
「ああ、そんなことだろうと思った。いいぞ」
エリスから訓練用の剣を渡される。なんだかんだで忙しかったから久しぶりの対戦だ。LV10になってからは初めてか?
「じゃあ始めるね。まずは先手ということで……」
自己加速魔法なしでエリスが弾丸の速さで突っ込んでくる。相変わらず凄まじいな。
左を攻めたと思ったら右に切り替わり、突いたと思ったら後ろに逃げ、変幻自在な剣技を披露するエリス。厄介な点は、エリスの剣は決して軽くはないということだ。訓練用の剣とはいえ一撃でも喰らうとかなりの衝撃を受けることになる。そしてそれによって生じる隙をエリスは見逃してくれないだろう。
魔法なしだと全ての攻撃に対応しないといけないので神経を使う。俺は一つ一つ確実に捌きながら前進する。
「相変わらず壁と戦っているみたい……」
「こっちは必死だけどな。さて、じゃあ次はこっちのターンだな」
俺は攻撃にシフトする。リズムを刻みながら剣を振り下ろす。必死で防御するエリスに剣をふるい続ける。
「馬鹿力は変わらずね……」
「まあな。これが龍でも切れる剣さ」
俺は隙を与えないように切りつけ続ける。しかし有効打はまだ与えられていない。
「守ってばかりだと勝てないぞ。どうするんだ?」
「うーん…… こうする」
ごっ。エリスが見舞ってきたのは鋭い蹴りだった。避けきれず腹で受け止める俺。予想外の一撃に驚きを隠せない。
「どう……? 新しい技」
「いいものを見せてもらったよ。俺も真似させてもらおうかな」
蹴りで生まれた距離を縮め、激しい撃ち合いが始まる。ほぼ互角の戦い。
そしてお互いに蹴りやパンチを加えるようになり、殴り合いの様相になる。
30分が経過し、俺はこれ以上戦っても決着はつかないと判断した。
「ふう、まあこれくらいにしておこうぜ」
「そうね…… 楽しかった。流石師匠……LV3になっても腕は落ちてないね」
「まあ、そのあたりは気をつけてるよ。とりあえず帰ってアリエッサにヒールをかけてもらうか。疲れたな」
「そうしよう……」
俺達は拠点に戻る。
「ねえ、明日デートしてくれない……?」
「おお、いいぞ。どこに行きたいんだ?」
「内緒…… 明日ついてきて」
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