エリスとのデート

 朝、寝室から起きてラウンジに向かうとエリスがいた。

「おはよう、カミト。今日は私についてきてね」

「ああ、わかった。朝ご飯はどうする?」

「……時間が勿体無いから、歩きながら食べよう……」

「了解」


 俺はエリスの後ろを歩く。サクラの中心街に向かっているようだ。買い物でもするのか?

 そんなことを考えながら歩いているとエリスが立ち止まる。

「ここだよ」


 辿り着いてのは冒険者ギルドだった。

「依頼を受けるということか?」

「そう…… 最近二人で活動することも減ってたからたまにはね」

 エリスは相変わらず戦闘好きなんだよなあ、と思いつつカミトは付き合う。


 窓口で受付嬢にエリスは言う。

「気分的にいっぱい受けたいから今日出来る依頼全部持ってきて」

「は、はい、かしこまりました。少々お待ちください……」

 受付嬢も緊張しているようだ。まあいきなり著名な冒険者が来てなんでも良いから依頼をくれと言われると困るよな。


「どんな依頼があると思う……?」

「うーん、まあ無難に商人の護衛とかかな? でもさすがに俺達が護衛するレベルの商人が都合よくいるわけないよなあ。そうなると魔物だな」

「まあ、無難に魔物だろうね…… 強い魔物いると良いんだけどね」

 まあなんでも良いから依頼をくれと言われて適当に渡すわけにはいかないだろう。冒険者の世界はバランスとメンツが重要視されている。安い報酬の簡単な依頼に最強の冒険者を当てがうわけにはいかないのだ。


「お待たせしました。今お願いできる依頼ですと、キラービーの討伐とギガントゴーレムの討伐、後は少しレベルが下がりますがマンドラゴラの採取があります」

「わかった。全部受けるね」

「ありがとうございます! それではよろしくお願いします」


 キラービーは面倒な魔物の代表格である。一体一体はそれほど強くないが、大体巣を作っており大量の群れと戦うことになる。魔法の感知能力が優れており遠距離魔法の発動に気づいてガードしてくるの厄介だ。


 ギガントゴーレムは劣化版サイクロプスだ。まあこれに関しては俺達なら楽勝だろう。唯一の注意点は倒した直後に自爆する点である。


 最後にマンドラゴラの採取は…… 低レベル者にはハードルが高く、高レベル者からは旨みがないので避けられる依頼だな。採取可能な場所が森林の奥深くにあるため、登場する魔物が高レベルな点だけが注意点だ。


 ギルドの受付にキラービーの巣の場所とギガントゴーレムの発見場所を確認する。二人だと索敵の面で難があるな。後方支援がいないからな。


 俺達はサクラを出て森に到着する。

「さてどこから攻めるか?」

「とりあえずキラービーの巣まで全速力で…… どっちが早く着くか競走しよう……」

 そういうとエリスは駆け出した。自己加速魔法まで使ってとんでもない速さで森の中を進んでいくエリス。いくらなんでも速すぎる。俺は必死の思いでエリスの後を追いかけた。


 走ること30分、キラービーの巣の周辺に到着する。

「エリス早すぎだろ…… 疲れたよもう」

「師匠…… 遅くなったね……」

「お前が早すぎるだけだ。さあとりあえず気を取り直して狩りとするか」

「そうだね……」


 身を屈めながら探索しているとキラービーの大群を発見する。

「前方にキラービー発見。突撃するか」

「そうだね」

 エリスと俺は全力で飛び出して、剣を振るう。

 ギギギ、大量のキラービーが飛び立った。羽音がうるさい。刺されると痛いので全て切り捨てる必要があるな。俺は絶剣の魔法で剣を2本生み出した。二刀流だ。

 エリスはまるで舞っているかのように剣を振い続けている。半径2m以内に侵入したキラービーは全て即死だ。


 俺も負けていられない。両手に剣を持ち、切り裂きながら巣を破壊するために前進していった。


「ふう、巣も破壊できたし、これでクエストは達成だな」

「そうだね…… カミトの二刀流久しぶりに見たかも」

「俺、蜂は嫌いなんだよ。全て抹殺したかったから久しぶりに2本で攻めてみたんだが」

「蜂は私も苦手……」

 討伐証明として巣のかけらを持ち帰る。これでキラービーのクエストは達成だ。


 次は、ギガントゴーレムである。目撃地の周辺に向かう。ギガントゴーレムは足が遅いのでそれほど遠い場所にはいないだろう。

「すぐ見つかるといいな」

「探し回るのは面倒……」

 エリスと話していると、すぐに見つけることができた。体調4mほどの大きなゴーレムである。やはり巨体の魔物は見つけやすいから楽だ。


「とりあえず二人で切りまくるということで……」

「了解。絶剣は封印しておくよ」

 俺とエリスは全速力でギガントゴーレムに接近し、切り続ける。相手の攻撃は基本的にパンチだけなのでその瞬間だけ後ろに下がって回避する。


「こいつも硬いなあ」

「まあストレス発散にはちょうどいい……」

 ボコボコにしているエリス。あまりにも剣の速度が速すぎるので目で追いかけるのが困難な速度だ。一方の俺は思いっきり振りかぶって全力で叩きつけるように攻撃する。


 そうして攻撃し続けること15分。ギガントゴーレムは倒れた。俺たちは素早く距離を取る。爆発に巻き込まれないためである。


 ボカーン。ギガントゴーレムは吹き飛んだ。爆発範囲は小さいが凄まじい音だ。俺は飛んできた破片を討伐証明部位として回収する。


「よし、後はマンドラゴラだな」

「生えている場所を知ってるから案内するね……」

 エリスの案内の元、森の中を歩く。

「そういえば領主が話してたんだけどね。今度お姫様がサクラを訪問するんだって。ヘッズオブドラゴンに護衛を依頼するかもって言ってた」

「俺らが護衛する姫様ということは…… 第1王妃か?」

「そうみたい」

 第1王妃はこの国においても最も有名な王族の一人である。特筆すべきはその頭脳。まだ20歳に満たないにも関わらず、彼女が提案した政策は必ず成功するという噂がある。現在の王政を成立させる上で最も重要な存在と噂されるほどの人物だ。それほどの大物が来るのであれば最高の警備を提供する必要があるのは理解できる。


「どれくらい頭がいいんだろうな? 一度話してみたいとは思っていたからいい機会かもな。面倒な性格でないといいが」

「変な噂は聞いたことないけど…… そうだね」

 エリスは特に他の者とあまり会話をしないので問題ないが、心配なのはアリエッサである。アリエッサと仲良くできるタイプだといいなあ…… 俺はあまり期待できないことを願うことにした。


 さて、マンドラゴラであるが、特に話すこともなくクエストは完了した。まあ強い魔物が周辺を彷徨いていると言ってもLV6や7程度である。

「余裕すぎるな。暇つぶしにバーサーカーでも使ってみるか?」

「あれは…… 使った後すごい疲れるからいい。それよりカミトの剣ぶん回して欲しいな」

 そんな軽口を叩きながら魔物を片付け、マンドラゴラを回収する。

 よし、クエストは全て完了した。戻るか。


「たまには2人での活動も悪くないね……」

「ああ、そうだな。楽しかったよ」


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