最強チームのクエスト対応
改めて俺は今回の件を考え直す。「ミオ」と思った人は本当にミオだったのだろうか?確かに見た目はミオだったがほとんど話してくれなかった。普段のミオならよく話してくれただろうに、無口なのは違和感だな。
見た目がそっくりであるレナやヤヨイの可能性もある。が、いくら会ったのが夕方や夜で少し見ずらいとはいえ、ミオと見間違えることはあるだろうか?
ここで一つの推理が思いつく。確かにその可能性はあるな…… ここまで手に入れた情報を元にすると候補者は2名だ。確認するべく、カミトはヘッズオブドラゴンの拠点に戻った。
ラウンジでくつろぐアリエッサに確認する。
「なあ、アリエッサ。ちょっと聞きたいことがあるんだが。」
俺は確認したいことを耳打ちする。
「…… ああ、なるほど。それは否定はできないですね」
「やっぱりか。まあ俺も聞かなかったのが悪い。気にするな」
となると、手紙で指定された場所は明白だな。あそこに行けばいいはずだ。
次の日は久しぶりにヘッズオブドラゴンでのクエストだ。アリエッサが言っていたが、俺のクエスト実績が最近ないためギルド長が不安に思っているらしい。確かに逆の立場ならそうだろうな。病気になったとでも思われないように何か依頼をこなしておこう。
久しぶりの俺、アリエッサ、エリス、アン、エッジのフルメンバーである。基本的にどんな依頼でもオーバースペック気味ではあるが、変に人数を絞って不仲説でも出ると面倒だ。アンは日中はだるそうにしているが、エッジに引っ張って連れてきてもらう。吸血鬼なので日中は多少出力は落ちるが、動けないわけではないからな。
冒険者ギルドに到着したので、窓口に向かう。
「お久しぶりです。色々あって依頼対応ができていませんでした。久しぶりに依頼を受けたいのですが、何かおすすめの依頼はありますか?」
「あ、はい、畏まりました。少々お待ちください」
周りからの視線を感じる。アリエッサとエリスが有名で目立つのが理由だろう。とにかく二人は目立つ。黒一色のドレスを着たアリエッサと白の鎧を着たエリス。よく似合ってはいるんだが、もう少しオーラを少なくして目立たなくしてほしい。
「お待たせしました。ギルド長とも少し相談したのですが、一つお願いしたい依頼がございます。「サイクロプス一体の討伐」です」
受付嬢が戻ってきた。
「最近サクラ周辺で目撃されるようになっていまして。低レベル冒険者が被害に遭う可能性があるので事前に芽を積んでおきたいと考えています。皆様には少し簡単な依頼だと思いますが…… 問題ないでしょうか?」
サイクロプスはLV8相当の魔物だが、動きが遅いためLV3や4程度の冒険者でも逃げることが出来る。ただ戦うとなると話は別で、LV7や8程度の冒険者が何人か集中攻撃をしてやっと倒せる防御力と、一撃でも攻撃を喰らうと大ダメージを受ける点が難しい魔物だ。
「マスターの魔法なら一撃での撃破も可能だとは思いますが、敢えてマスターには控えてもらって、チームでのウォーミングアップとしては良いのではないでしょうか」
アリエッサの言である。まあ俺はのんびり見物と行くか。
「そうだな。まあ、見つけることができるかだな。とりあえず了解したよ」
「ありがとうございます! お手数ですがよろしくお願いします」
俺達は街を出て森の中を歩く。
「さて、面倒なのでそろそろ調査を始めるか。アリエッサ、空を飛んで調査を行ってくれ」
「はい、わかりました」
アリエッサはそういうと、飛行魔法を唱え空に飛んでいった。アリエッサの保有魔法の一つ、空を飛ぶ魔法であるフライである。空高く舞い上がることが出来、機動力が段違いなので大きな魔物の索敵に非常に便利である。また、ダークやフレイムといった攻撃魔法と組みわせることで、敵が届かない位置から空襲を仕掛けることも可能である。
「よし、アンは周りの雑魚敵を排除してくれ」
「了解です」
そういうと、アンの周囲からゴーレムが続々と生まれていく。吸血鬼であるアンが保有する唯一の魔法であるネクロマンサーだ。周囲の死者の魂を呼び出し、一時的に復活させて使役させる魔法である。森の中のように冒険者で亡くなった者が彷徨う場所では効果的な魔法だ。日中は最大で20体まで召喚できるらしい。アンの指示でゴーレム達は周囲に散らばっていく。一体はLV3相当の力を保有しているのでゴブリンやコボルトなどの面倒な敵は簡単に排除してくれる。
しばらくするとアリエッサが降りてきた。
「前方、ここから30分ほどの場所でサイクロプスを発見しました。ついてきてください」
「ありがとう。わかった」
俺達はアリエッサを先頭に移動を開始する。全速力で走ること30分、サイクロプスを発見した。
「よし、敵を発見。アンは周辺の雑魚敵の排除を頼む。エッジはいつも通りアンの防御だ。
エリスとアリエッサは連携してサイクロプスの撃破を頼む」
「「「「了解です」」」」
アンは極めて有能な魔法使いだが、本人の防御力や体力が極めて低いという問題点がある。それをカバーするために盾使いのエッジを防御役で配置しているわけだ。基本この二人は1セットで後方支援をしている。
切込隊長はいつも通りエリスだ。弾丸の如くサイクロプスに突撃する。足が極めて早い上に、自己加速魔法を発動しているため最速時は目で追うのが困難なレベルの速度になる。
エリスが凄まじい速度でサイクロプスを切り付ける。左、右、上、下。
サイクロプスはなんとか対応しようとするがエリスの速度に追いつけず、攻撃は空を切る。
サクラ最強の剣士の剣筋をLV8如きの魔物が捉えられるはずがない。
しばらく剣を振い続けたエリスはすっと、サイクロプスから距離をとった。
その瞬間、サイクロプスを中心に大爆発が発生する。
サクラ最強の魔法使い、アリエッサが放つフレイムだ。炎の渦を生み出すこの魔法は、極めて強力なため使用できるシーンが限られている。破壊的すぎるため味方を巻き込まずに攻撃するのが至難の技という欠点を持つ魔法だが、このチームにおいてはタイミングを見計らって前衛は戦闘から離脱するだけだ。
煙が消えると、傷だらけのサイクロプスがそこには存在した。
「マスター、最後はお願いします」
「わかった」
俺は魔法の力で剣を生み出し、全力でサイクロプスに向かっていた。
「じゃあな」
俺は全速力でサイクロプスに向かう。気づいたサイクロプスのパンチを交わし、飛び上がりながら一閃。
サイクロプスの首がゆっくりと落ち、巨体は地に倒れた。
俺の保有する魔法の一つ、「絶剣」は、あらゆる存在を切り裂くことが出来る剣を生み出す能力である。なんでも切り裂けるその能力のせいで、普段鞘に入れることもできない。鞘が壊れてしまうからだ。とはいえ、唯一龍だけは切り裂くことができなかった。もっとレベルが上がれば能力は上がっていき龍も切り裂けるようになるのかもしれないが…… 現時点の能力で十分である。
「よし、終わりだな。アン、エッジは討伐証明部位の回収を頼む」
クエストを無事終了し、俺達は冒険者ギルドに戻り討伐証明部位を提出した。
「ありがとうございます! すぐに対応していただき大変助かりました。ギルド長の指示で報酬は少し多めにしています」
「ああ、ありがとう。また何か必要な時があったら遠慮せず俺達を使ってくれ」
「はい、よろしくお願いします」
これで今日のクエストは完了だ。後は、21時に例の場所に向かうだけだな。
----------------------------------------------------------
もし良かったら評価やフォローよろしくお願いします。
筆者の励みになります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます