冒険者のチュートリアル(人生2回目)

 散策をして昼ご飯を終えると、もう登録手続きの2時間が経過していた。よし、冒険者ギルドに戻ろう。


 冒険者ギルドに戻り、受付に行く。

「受付番号91番ですが、もう手続きは終わっていますか?」

「少々お待ちください……カミト様ですね、はい冒険者登録の手続きは完了しています。特に問題なく手続きは終了いたしました」

「良かったです。ありがとうございます」

「この街にいる世界最強の冒険者もカミトというんですよ。是非これから頑張ってくださいね」

「はい!」受付嬢の笑顔が眩しい。勢いよく返事をしたが、俺は良心が痛み目を逸らした。

「さて、それでは冒険者について簡単な説明を行います。あちらの席に座っていただけますか?」

「わかりました」受付嬢がそのまま説明をしてくれるらしい。俺は席に腰掛けた。


 ざーっと説明を受けたが、基本的なルールなのでさすがに知っている。例えばこういう内容だ。


 ・冒険者は、冒険者ギルドが提示する「依頼」を受ける仕事である。依頼を受けると「クエスト」と呼ばれる。依頼には完了期限と完了条件が存在する。期限内にそのクエストを完了させることで報酬を受け取ることができる。


 ・依頼には、個人・チームの推奨レベルが存在する。個人のレベルは魔道具によって測定される。チームとは複数の冒険者が結成する組織のことであり、冒険者ギルドがレベルを評価し、設定する。個人で受けることができる依頼も多数あるが、チームの方が依頼が多い。


 ・冒険者ギルド以外からの依頼を受けることは基本的には禁止されている。冒険者ギルドを通さずに依頼を受けたことが判明した場合、最悪の場合追放されることもあるとのことだ。


 ・チームは組むことが推奨される。なぜならクエストごとに即席のチームを組むスタイルだと連携面で課題が出てくるからである。またソロの冒険者は後ろ盾がいないことからトラブルに巻き込まれることも多いため、ほとんどの冒険者がチームに所属している。


 ・個人のレベルは戦闘経験を多く積むことで上がっていく。具体的な必要経験値は個々によって異なるため不明だが、強力な敵を倒すほど経験値は増加する。また複数人で魔物を倒すと経験値は分配されるらしい。ただ、詳細はよく分かっていないようだ。


「チームは既に決まっていますか?」

「いえ、まだです。まだサクラに来たばかりなので……」

「なるほど、であればチームについては色々な人と話をしてから決めることをお勧めします。冒険者は命をかけて魔物を倒す職業なので、命を預けられる者である、と感じることができる者と組むのが良いです。中途半端に妥協すると後で後悔しますよ」

 確かにチームは大事だ。仲が良くないチームはどこかでクエストに失敗し、負傷したり死亡する者が出ることが多い。

「また、チームのバランスも重要です。そのチームで自分はどんな貢献ができるのかということも意識してください。レベルの高いチームに入ると雑用以外で貢献できず、全く成長できないという可能性もありますからね。もちろんレベルの高いチームでも魔法で貢献できるなどであれば全く問題ないと思います」

 ヘッズオブドラゴンにはLV6が二人いるが、二人とも特別な魔法を保有しているので共に戦うことに問題はない。いずれはLV7、8、9と成長していって欲しいがそれほど時間はあかからないだろう。


「はい、チームについてはよく考えてみます」

「よろしくお願いします。さて説明も一通り終わったのでレベル測定に向かいましょうか」

 俺は受付嬢に案内され、レベル測定の魔道具の前に座る。

「手をかざしてください」

 魔道具の前に手をかざすと、魔道具がピカピカ点滅した。

 ウィーン。魔道具がレベルを表示する。

「おお、レベル3です。最初から3は珍しいですね。戦闘経験がお有りですか?」

「はい、農家の次男なので戦闘経験はあります。経験値が溜まっていたんですね!」

 受付嬢の目が輝く。期待のルーキーとして認識されたようだ。


「それではレベルと名前を記載したギルドカードをお渡しします。特殊な魔道具なので無くさないようにしてくださいね。なくすと再発行に料金をいただきます」

 俺は受付嬢からギルドカードを受け取った。ギルドカードは依頼の受領時と、お金を預ける・受け取る際に必要となる。個人情報が保存されている優れたカードである。このカードを見せるだけでどの地域に行った時も身分証となるのでありがたい。そして変身の効果は問題なく発動しており、「カミト、レベル3」と表示されていた。

 ギルドカードは二枚目なので間違えないようにしないと。

「これで手続きは終わりです。ありがとうございました。不明点があればいつでも聞いてくださいね」

「はい、ありがとうございました」


 ようやく冒険者登録が終わった。今日はこれくらいで帰宅しよう。疲れたなあ。

 あ、そうだ家の床に穴も掘らないといけない。俺は憂鬱な気分で帰宅した。

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