悪魔との会話

俺はバイク(二台目)で高速に乗り北へ向かう。

流れる景色に、悪魔との会話を反芻する。


悪魔はゆっくりと、子供に言い聞かせるように語りかける。

「死人を生き返らすことは可能だ。」

「何が言いたい」

「一つの命を生き返らすなら、一つの命を代償とする。」

「生贄なのか」

「そうだ」

「・・・・・・わかった。」

本気でそう思ったわけじゃない、やりたくないに決まってる。

それでも、たとえ、あらゆる倫理的な禁忌を破ろうとも、俺にとってそれは・・・


「あははははははははははは」

悪魔は突然笑い出す。

「だから人間は好きだぞ。」

悪魔が手を振ると、雲が生まれた。雲は空で見るものがそのまま縮小されたような、現実ではあり得ない輪郭を作って、境目がないまま雲は本に変わった。

図書館に置いてある一番デカい本より大きく、一番分厚い本より分厚い本。

それは空に浮いており、独りでに捲れていく。

「ふーん・・・」

止まったページを楽しそうに読む悪魔。

「この女の星なら・・・」

またページが捲れていく。

「こいつだな。この女だ。」

悪魔が本を見せる。

俺は罪悪感で、身体中の血の気が引いた。

今からなんの関係もない女を殺す。その実感が涌き出た事、そして、それがこの国の姫の一人であることに。

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未完成悪魔機械化事典 マスターメビウスと光と紫 蔦葛 @tutakazura000

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