新11話 騙された

 あれは今から三年前。


 花がまだ中学生の頃の話である。


 子供の頃から怖そうな見た目のせいで孤立していた花は、ネトゲの世界なら容姿を気にせず友達を作れるかもしれないとUOに手を出した。


 しかし、引っ込み思案な性格が災いし、ネトゲの世界でも中々友達を作る事は出来なかった。


 それはそれとして、花はUOにドハマりし、家に帰るとすぐにパソコンを起動して孤独な時間を紛らわせていた。


 見た目に反して温厚な性格の花である。


 モンスターを狩るよりも、鍛冶や裁縫、大工等の生産スキルに楽しみを見出した。


 羊の毛や動物の皮で衣類や皮鎧を作る。


 鉱山地帯や低難度ダンジョンの入口で鉱石を掘って武具や装飾品を作る。


 森に行って木を伐採し、家具を作る。


 それらをNPCの生産系ギルドに納品して報酬を貰ったり、街で行商したりしてお金に変える。


 そうやってお金を貯めて、花は小さくてもいいから家が欲しかった。


 UOにはガーデニングというシステムが存在する。


 小さい頃からお花屋さんになるのが花の夢だった。


 現実では難しそうだが、UOの世界でなら叶えられる。


 ある程度お金が貯まった頃、プレイヤーの経営する不動産屋を訪ねて花は驚いた。


 家、めっちゃ高いじゃん!


 UOはゲーム内の土地に家を建てる。


 大人気ゲームなので、空いてる土地なんか全然ない。


 だから、最小サイズの一軒家だって一千万以上する。


 花の予算の十倍だ。


 それでも花は諦めきれず、何か月も金策を続け、不動産屋を渡り歩き、勇気を出して街中でも家を売ってくれる人を探した。


 そんな時、一人の男に出会った。


『君の熱意に免じて、格安で家を売ってあげよう』


 値段は相場の半分以下。


 それでも花にとっては全財産に等しい額だった。


 立地だって良いとは言えない。


 PK《プレイヤーキル》の許された混沌世界で、モンスターの湧く沼地の中だ。


 それでも花はその家を購入した。


 この機会を逃したら、家を手に入れられるのはいつになるか分からない。


 迷う気持ちもあったのだが、ここで躊躇したら折角の機会を失うかもしれないという焦りの方が大きかった。


 沼地だっていいじゃない。


 自分の花屋でこの沼地を綺麗に彩ってやる!


 PKは怖いけど、こんな辺鄙な場所なら出会う事も少ないだろうし、家の中なら大丈夫なはずだ。


 そう思って決断した。


 すぐに花は自分が騙された事に気づいた。


 取引が終わった直後、隣の家から赤ネームのPKが出てきて花を殺したのだ。


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