紗久間のアタマンナカ

良い親とは？

　マッチングアプリでシングルファザーの人も見かけた。私自身が出産できなくても、相手に子どもがいるならいいのではないかというと、そうでもない。きっと私は良い親になれない。

　精神的に弱くて不安を感じやすく、頼りない。事故や事件に巻き込まれるのではないかと過保護になれば、ウザいと思われるだろう。

　親になれば子どものために付き合いたくない人とも付き合わなければならない。私が他の親と上手く付き合えないせいでいじめられてしまったら、何をしたって償いきれない。

　どんなに愛情を注いでも「血が繋がってないから」なんて言われたら、悲しくて立ち直れないかもしれない。

　もしかすると、虐待をしてしまうかもしれない。

　10歳になる前のことだったと思う。母にかまってほしくて「遊んでほしい」と駄々をこねた。すると、母は「これでいい？」と私をひどく叩き、泣いている私を置いて部屋を出た。

　仕事、子育て、家のこと。今なら母はストレスを抱えていたのだと理解できるが、子どもだった私にはそんなことは分からなかった。

　私が同じような状況になったとしたら、母のように手を上げてしまうかもしれない。絶対にしないという自信はない。

　嫌な思い出が消えにくいということは、私自身がよく知っている。

「私、3回くらい不倫したことあるの」

　量販店で働いていた時、一緒に働いていた派遣の人が言い出した。もちろん退勤してからの会話である。

　急にされた話に驚きながらも「そうなんですかー」と相槌を打った記憶がある。

「なんかね、話を聞いてたら可哀想になっちゃって」

　そして肉体関係に発展するのだそうだ。男性側もそういう展開を期待して家庭の話をしていたのかもしれない。

　良い妻に、良い母親に、私がなれなければ、夫は可哀想な人になって不倫をするのだろうか。

「お前なんかと一緒になるんじゃなかった」

　そうやって終わっていくと想像してしまう。

　やはり、独りになるという不安は消えない。

　私自身に家族との楽しい思い出が少なくても、恵まれた家で育ったと思う。裕福ではないが衣食住に困ったことがない。

　良い親とはどういうことなのだろう。もし答えがあるとしても、やはり私は誰かの人生に責任を持てないと臆病になるのだ。