結婚願望はないし、モテ期も来ない
「実家の居心地が良いから嫁に行かないんだろ」
父の知人が私にかけた言葉である。そう、私は嫁に行きたくないのだ。実家の居心地が良いからではない。ただでさえ精神が弱いのに、どうしてわざわざ苦難の道を選ぶ必要があるのか。それが理由だ。
うつ病になってから結婚願望というものがない。自分自身のことで精一杯だったからだ。
精神状態が良くなっても結婚したいと思えないのは、周囲のネガティブな話によるものだろう。
田舎の狭い社会の中で、浮気や離婚の噂はすぐに広がる。さらに、家族への不満、子育ての苦労などを聞かされることも多い。
それぞれに幸せな瞬間もあるのだろうし、愚痴をこぼすことでストレス解消になっているのだろうと思う。しかし、そんな話ばかり聞かされている私は結婚に対して後ろ向きな印象しか持てない。
私の家族を見ていても、家庭を築こうとは思えない。祖父も父も家事は一切やらない。
「おい! 俺の服はどこだ! 早く持ってこい!」と服すら自分で管理できない。
食事についても文句ばかりだ。祖母も母も受け流すのだが、それを聞いている私は不愉快な思いになる。
そんな祖父と父は
恋愛感情くらいなら湧くかといえば、これもない。恋愛を描いた映像作品や小説を読んで面白いと思うし、私自身も恋愛作品を書く。だからといって現実の世界で恋をしたいと思うかといえば、そうではない。
最後に恋愛感情を抱いたのは大学生の時だったはずだ。その後は、就職して仕事に追われて、うつ病になって・・・・・・。恋をする余裕など持てなかった。
そう、私はモテないのだ。見た目も性格も悪い。交際経験がないし、キスをしたこともない。
「あんたみたいなのは物好きしかもらってくれないよ」と、幼い頃から言われて育ってきた。告白しても振られてばかりで、その言葉は真実なのだと思い知らされた。
雑誌のモテるテクニックなんかを読んで実行したこともある。あれは美人がやるから効果があるのであって、私がやっても意味はなかった。
30歳になる前に男性を紹介されたことがある。精神状態が回復していたし、婚活みたいなことを一度くらいは経験してみようという気になった。
紹介してくれた人も交えて食事をした。漂うタバコの煙と、料理がおいしく思えなかった記憶しかない。何を話したか覚えていないが、楽しくなかったのは確かだ。
私はタバコが大嫌いだ。ヘビースモーカーの父が原因だろう。むせるほどの煙、臭い、ヤニによる汚れ。目の前で吸われたら嫌な気持ちにしかならない。
料理だって本当はおいしかっただろうに。行ったことを後悔しているが、私はこういう誘いを受けてはいけないのだと学んだ。経験したこと自体は無駄ではなかったと思っている。
30歳を過ぎれば、ちょっと素敵だなと思った男性の薬指には指輪が輝いている。
「もういいや」と私は結婚という未来を諦めた。独身のままで生きていこうと決め、30代はいろいろなことに挑戦してきた。目標を持って前向きに歩みを進めてきた。
なのに、今年になってマッチングアプリに手を出した。精神状態を悪くする一歩になるとも知らずに。
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