第8話 Villain

「味噌チャーシューと半チャーハンです、ごゆっくりどうぞー」


「あの、三頭さん…二軒目はラーメン屋ですか?」


「酒よりもラーメンが食べたくなっちゃってね。そう言う練馬くんこそ"奢り"と聞いてガッツリとしたもの頼んでいるじゃない」


図星に思った練馬はこれ以上は反抗することなく目の前に出されたラーメンを口に運ぶ。


「それで、今日は何処に行ってきたんですか?」


「松羽組の本部だよ、色々裏の世界の事情を聞かせてもらったよ」


三頭は練馬の食べる様子を眺めては、くすりと微笑んだ。



_松羽組本部_


「ねぇーお兄ちゃん!なんで皿が飾られてるの?」


「お嬢ちゃん触るなよ、それは君たちのような"安っちい給料で働く犬"には到底買えない代物だぞ」


 部屋の扉は開かれたまま辺りには、その場で倒れ込む構成員の姿が広がっていた。

そんな中でもスーツを着た兄妹が棚に飾られていた皿に目がいっているところに組長の男は釘を刺した。


「彼と出会ったのは、数ヶ月も前のことだ。ある日、酔っ払っていた彼らが俺の手下に喧嘩を振っかけて来たのが始まりだった。その時にな、狭い路地から"ゾンビまがい"のやつ…お前らが言う_なんだ?テイブってやつか?」


「_えぇ」


「突然の出来事だからよ、その時は他人事じゃ無かったらしいが彼に応急処置を施そうとしたらな、おかしなことに襲われた彼の手から小さな金の塊が出てきたんだよ。それからはお前の見せた写真の通りさ」


 組長の男は意気揚々と語ると、再び葉巻きを咥え運び込まれる構成員のことはそっちのけで三頭のことを見つめていた。


「まぁお互い国を守っている立場じゃねぇか、最近じゃあ外国の馬鹿どもが己の数目当てにやってきてはろくでもないことをネットに晒す始末_そこにテイブまで現れたら日本は無法地帯まっしぐらだ。

 今回のことはそんな馬鹿どもを懲らしめつつ日本人の優しさを見せつけたていで多めに見てはくれないかね?」


 男はぐったりとソファに座り込めば、顔を天井に仰ぎながら煙を吐き出す。


「それはできません、仕事ですので」


「あぁ?」


 三頭のキッパリとした返事に男は怒りを滲ませた声で、視線だけを三頭に向けた。


「彼のことを私たちにいち早く伝えていれば、助けてあげてたかもしれないですが…残念です」


「なんだと!このやろう!!そう言い回しじゃあ_お前らも彼のことを利用しようとしているんだろ、なぁ?…」


バンッ_


「うるせぇ…お前は黙って三頭さんの言うこときちんと聞け」


 怒り狂う組長の足元目掛けて、痺れを切らした兄と呼ばれている男は弾を打ち込んだ。幸い足には当たらず、その後もみあげに銃口を押し付け強制的に座らせる。


「松羽さんもわかることでしょうが、私たちはテイブ、能力者のホルダーを駆除・管理するの目的の仕事です。あなたたちのように彼らを私利私欲に扱って欲しくはないのです」


 銃口を向けられ冷や汗を流す組長の男に対して、その様子を嘲笑うかのように両手を組んでさらに三頭は語り続けた。


「私たちの背後には"国"という神の存在がいて、あなた達のようなその存在を脅かすものならば、"取り込む"か"排除"するかの選択を強いられる。今回はあなた達は"後者"になったわけですがね…」


 三頭は提供されたお茶に手を伸ばした。すると、組長の男はゲラゲラと腹を抱えて笑った。


「やっぱり!お前らは国とやらの首輪をつけた情けぇねぇ犬そのもの_そんなお前らに忠告しておくぜ。テイブはお前らのちっぽけな脳みそで考えている以上に感染が広がってる。

 またそれに伴ってホルダーも増えるよなぁ。すなわち、その能力を悪用する輩にどう対するか、俺は静かに見守ってやるよ」


銃口を強く押さえつけられても腹を抱えて笑う男に、埒が開かないと悟った三頭は離すように合図を出しては立ち上がる。




「そんなことがあったんすね、すいません!生おかわり〜」


 練馬は三頭の会話を酒を流し込みながら、答えると、飲み干したジョッキを掲げては店員に新たに注文をかける。


「練馬くんだったら、もし悪事を企むホルダーがいたらどうする?」


「うちっすか?、うーん…」


「仮に島江ちゃんみたいな群を抜いた子だったら?」


「あんな"殺戮マシン"を相手にするなら、仲間にしたほうがマシですよ」


「でも人間はわからないからね〜、特に"欲望に従順"の子は…」


三頭はそういうとラーメンを食べ終え、「先に会計済ませておくから」と練馬に告げると立ち上がりレジへ向かった。

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No.0 水野・J・タロー @mizunoj230405

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