第2話 トリカブト


ーーピー…ピー


「んん…ここは…いたた!!」


 男は目を覚ますと四方は白い壁と小さな四角の窓が一つの空間が広がり、遠くで気づいた看護師が慌てて誰かを呼ぶ様子が見受けられる。その後、少しずつ上体を起こすと同時にズキズキと頭に痛みが走る。


「目が覚めたようだな、龍河焔」


先程の看護師に連れられて、軍服に模した服をを着こなし、長い髪を束ねた女性が中へと入って来た。


「あの…どちら様ですか?」


 彼の問いかけに女性は胸ポケットから名刺を取り出すと彼に渡した。

 

「株式会社トリカブト、代表取締役社長│三頭 みとう あかね


「単刀直入に言わせてもらう、お前は今後トリカブトの管理下で働いてもらう」


「管理下?…働く?、どういうことですか?」


「済まないが時間がなくてな、それについてはここでは話せない、退院後そこへ向かってくれ、私は失礼する」


「えっ!…ちょっと」


 三頭は去り際に加えて龍河に折りたたまれたメモを渡すと部屋を後にする。あっという間の出来事にまだ彼の理解は追いつかず。


―2週間後ー


(結局、親も病院に見舞いに来ることなかったなぁ…)


「ここで合っているのか?」


 龍河は家族の心配をしつつも言われた通りの場所に辿りついた。そこはすすきのの大規模な商業ビルの裏に建てられた3〜4階建ての小さな古びた建物でテナントの看板にはスナックなど微かに夜の街を彷彿させていた。


「失礼…します」


!!


彼は書かれていたメモの通りの場所の扉を開けるとガラガラと慌てて中に隠れるような音が鳴り響いた。そんな中、煙草を咥えた男が口角を上げて彼の元に近づいて来ては馴れ馴れしく肩に腕を回しながら。


「君、名前は?」


「…龍河焔です」


「煙草吸う?」


「吸わないです、まだ17なので…」


「はぁ〜未成年かよ…おーい一人目の新入りがやってきたぞ〜」


男は大きなため息を吐くと、隠れていた者たちに出て来るように促した。


「一人目ってことは、あと何人ここに来るんで…」


「そこ、どいてくれる?」


背後から冷たく刺さるような口調で白髪で青い瞳をした女性が堂々と中へへと入って来た。


「あ!あのときの!」


「お!面識あるのか!だが、その前に2人は三頭さんから話があるらしいからそのまま奥に向かってくれ!」


「は、はい!」


男は机に置いてあった灰皿に燃えカスを払い、再び咥えながら2人を社長室へと促した。


「…失礼します」


 重厚な扉を開けると電気はつけられておらず窓から差し込んでくる陽の光が部屋を照らしていた。中には三頭が机に載っていた書類に目を通しながら。


「龍河、退院おめでとう、聞きたいことがあったな」


「そ、そうだ!…働くって、何をするんですか?」


前回は質問をするも逃げられたため龍河の問いかけに対し、三頭は作業していた手を止めて視線を彼に向けた。


「やることは主に2つ、1つは企業から依頼してきた仕事を引き受けること、要するに"お金稼ぎ"さ


 トリカブトは、政府の指示で設立した国防省傘下の秘密組織、立場上公務員だが特別に報酬を得ることが許されている、


 近年国会で防衛費が削減されていることはニュースでも聞いたことがあるだろう?」


「はい、聞いたことあります…つまり削減した分をトリカブトが稼いで賄っているってことですか?」


「そうすれば、選挙のときに一部の左翼からの票を吸い取れる、皮肉だがな」


三頭は書類をまとめ、中にしまうと一度深呼吸をしたあと話を続ける。


「2つ目が重要で、"テイブ"から治安を守ること、市民やマスコミの目から集めないようにね」


「その…テイブってなんですか?」


「テイブは、政府が表沙汰では容認していない国内のみに確認しているウイルスがあってだな、そのウイルスに感染した奴らのことを言うのさ


 感染すると理性を失ったかのように人に襲いかかる、ゾンビのようにな


 だが、極めて稀に感染すると超能力?と言ったら良いか、人知を超えた能力を得るケースがある、能力保持者を我々は「ホルダー」と呼んでいる。


 そんなホルダーを我々はリクルート・管理し、市民からテイブに襲撃されるのを防ぐことが我々のメインの仕事さ」


「管理っていうのは?」


「"好き勝手に能力を使うな"ってことだよ」


「自分は何の能力を持っているか知らないです…」


三頭は胸ポケットから棒付きの飴を取り出せば、飴玉を咥えながら


「あとで、隊員から聞いてくれ、それと今日からは隣にいる│島江奈々(しまえ なな)とバディを組んでもらう」


「え?」


「…なに?」


龍河は後ろを振り向くと、島江は視線を向けては感情の籠もっていない表情で首を傾けながら見つめ返した。


「話は以上だ」


2人は部屋を出ると、先ほど絡んできた男が詰め寄って来てた。


「よ〜し、自己紹介していこうか!ほら、みんな集まれ」


男の言葉に続々と男女3人が駆け寄ってきては、横一列に寸分の狂いなく集まって来た。


「まずは右から、│是枝 翔(これえだ しょう)、この中で最年長の30歳だから困ったときは俺か枝ちゃんに聞いてくれ!

 次に、お前らと同い年の│山田 千幸(やまだ ちゆき)、│三島 鋼太郎(みしま こうたろう)」


 男が名前を呼んでいくと、一人づつ二人の前に手をまっすぐに上げて、指先をおでこの前に軽く触れる態勢で敬礼を行い。


「そして最後に、俺が班長の│練馬 壮二郎(ねりま そうじろう)!


 ようこそトリカブトへ」

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