回帰的な虎   2

『今日は〇〇動物園にて公開されました、ベルガルトラの赤ちゃんを見に来ました〜』

「…は?」

 動物園から帰宅し、シャワーを浴びてからテレビをつけると、女子アナが聞き捨てならない言葉を吐いていた。

 液晶の向こうでは、母親の虎のすぐそばで2匹の虎の赤ちゃんが腕白に動いていて、中継先スタジオのコメンテーターが目元を緩ませている。

「あの後公開になったのか?」

 テーブルのスマホを手に取り、時間を確認する。3時半を少し回っていた。

 動物園を出たのが確か2時手前くらい、出る寸前にも檻の前を確認したが、様子は変わっていなかったはずである。となると、それ以降に公開が再開したということか。

「・・・まじかあ、運ねえなあ」

 もう単位も取り終わり、内定も出て、直近でやらなくてはいけないことも無い。そんな日であっても、一度決めた目的が時間の兼ね合いで果たせないというのはつらいものである。

 しかし、1時間ちょっとで公開を再開するというのなら、動物園側も連絡なりしてくれればよいものを、と思わないでもない。

 俺はソファに座り、SNSを立ち上げる。そして、ネットの海に愚痴を呟く。

『久しぶりに動物園行ったけど思ったより楽しかった。でも俺らが帰ってから一時間後に中止してた赤ちゃんトラの展示再開してて鬱だわ』

 あの後撮影したキリンの画像を添付して投稿する。小気味いい音と共に、呟いた愚痴は放流されていった。

 そのまま、動物園の名前と虎で検索をする。案の定、虎の赤ちゃんの画像と共に、「かわいい」の文字が並んでいた。

 実際のところ、可愛い。やはり生で見ることが出来なかったのは惜しい。俺は口を曲げながら画面をスクロールした。





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