第42話 追跡劇
「はい。軽い捻挫ですねー、じゃあこれ、アイスパックとテーピング。あとは適当にやっておいてね」
「なんか雑じゃないですか?」
「しょうがないでしょ。カオスタイムだかなんだか知らないけど、次から次へと怪我人が運ばれてくるんだもの。君のそれは怪我のうちに入りません。自分でなんとかしてちょうだい」
「ひどい……」
俺は早々に保健室を追い出された。外には負傷したらしい運動部たちが大挙している。これ全部の相手をしなくてはならない養護教諭にちょっとだけ同情する。
右足を引きずって、人通りの少ない階段に腰かける。
最後の最後で無茶をしなけりゃよかった。今では後悔している。ガンテツとゴール前で競り合ったときの着地に違和感があった。痛みは感じてなかったが、試合終了と同時にアドレナリンが切れたのだろう。ちょっと辛くなってきた。
「テーピングってどうやるんだ」
患部を冷やしながら頭を抱えた。
簡単な手当てくらいなら慣れているが、こういうのは全然わからない。思えば、ムラサキは擦り傷や切り傷は作ってきても捻挫とか骨折とかはしたことがなかったな。
スマホがありゃ即ググるのになあ、と独り言ちていると誰かの気配が近づいてきた。
「あ、いた。やっと見つけた」
「下野?」
ずっと俺を探していたみたいな素振りだった。実際そうなのだろう。
「捻挫してたでしょ」
「おお。戦士の勲章ってやつだな。名誉の負傷ともいう」
「またバカなことを言って……」
下野は、俺の手元を見て呟いた。
「テーピング、やってあげようか?」
「え、マジ? 助かるわ」
おとなしく右足首を差し出す。
下野は軽く触れただけで俺の状態を把握したらしい。慣れた手つきでテーピングを進めていく。
「上手いな」
「よく自分でも巻いてたから」
「バドミントンだっけ」
「そうよ。覚えてたのね?」
なんて話してるうちに処置が完了した。
おお。ガッチリと固定されている。しかも全然痛くなかった。
その手際に感嘆していると、下野は照れくさそうに早口で言った。
「不用意に動かしちゃダメよ。治りが悪くなるから。何日かはおとなしくしていなさい」
「はーい」
「………」
「ん?」
「な、なによ」
「なにっていうか」
下野の様子が変だ。そわそわして落ち着きがない。
俺の目の前でうろうろしていたか思いきや、突然立ち止まる。意を決したような顔でなにをするのかと身構えていたら、ただ俺の隣に腰かけただけだった。
「えっと」
「おう」
「惜しかったんじゃないかしら」
まさかそれが本題じゃないだろう。
別の話で助走をつけようとしているみたいだった。
付き合ってあげるけど。
「ボコボコだったけどな」
ムラサキがいなくなって、それから廃部が撤回されたのも理由として大きい。
俺たち廃部連合はサッカー部に手も足も出なくなった。
まあ、モチベがなくなったからしょうがない。逆転の兆しは一切なかった。最後の数分間はずっと攻められっぱなしで、なんなら守備のガンテツまで攻撃参加してきやがった。俺が怪我をしたのはそのタイミングでのことだ。
「あっけない終わり方だった」
「でも最後まで必死な顔してたよ」
「………。そうか」
否定の言葉が出かかったが、すんでのところで飲み込んだ。
俺の中ではそこまで必死だった感覚はなかった。でも、下野にそう見えたならそういうことにしておけばいいんだ。
「正直言うとね、透真くんがあんなに頑張ってサッカーしてるの、びっくりした。適当に手を抜いて流すか、そもそも試合に出ないかと」
「ひどい言い草だな」
「だって。廃部になろうがどうでもいいって」
そりゃあ、そうでしょ。だって本当に関係ないから。
もし親友の誰かがどこかの部活に入ってて、それが廃部の危機だったならまだしも。実際はそうじゃないわけで。
「そもそも、元々は下野のためにセッティングしたんだぞ。クズに一泡吹かせるってやる気満々だったから」
「じゃあ、私が出場しないってわかった時点でキミも降りてよかったんじゃない?」
「それは———————あ」
「うん?」
俺のセリフが不自然に途切れたのは言葉に詰まったからじゃない。
今、口をついて出そうになった想いがなによりの本心だと自覚したからだ。
そのまま伝え聞かせるには気恥ずかしい。でもこの奇妙な沈黙を埋める方法は他になく、結局俺は心が従う方向に進むことにした。
「もし、これが下野にとって最後の時間だとしたら」
「えっ」
「後味が悪すぎる。サッカー部との対決にはあっさり負けて、たくさんの部活が潰されて、クズは我が物顔でこの学校に君臨し続けて、これからも色々な生徒が苦しめられて辛い目に遭いました、なんて。事後報告で聞かされたらイヤだろ」
「………」
「そんなことになったら、下野は安心できないじゃん。自分が出ていたら、なんて思わせることになる。だから、ちゃんと『勝ったぞ』って言うために投げ出すわけにはいかなかったんだよ。お前がいなくたって余裕だって、そう伝えたかった」
サッカー部に勝ったら、どうやってクズを追い詰めようかずっと想像してた。
きっとクズは俺との賭けは無効だとか言って、意地でも謝るなんてしなかっただろう。でも興奮したクズはすぐに手を出す。怪我をするのは俺の役目だ。大袈裟に痛がってみせればいい。そこをヨウキャに動画で収めてもらって……なんて、今となっては本当に無意味な妄想だな。
実際はキズナ先生をはじめとした大人たちが裏で動いてくれていた。俺の出る幕は最初からなかったってことだ。
「踏みとどまった理由としては真っ当でしょ」
「……そ、そっか。うん、そう。カッコいいんじゃないかしら」
「えっ、俺ってばカッコいい?」
「今そうじゃなくなった。どうしてそこで前のめりになるのかしら」
まったくもう……と下野は呆れた様子だった。
しょうがないだろ。なんか妙な雰囲気を感じたんだから。
今はそういう、くすっぐたさはいらない。こっちが恥ずかしくなる。
それよりも確認しておきたいこともあるし。
「下野。俺になにか言うことあるんじゃないの」
「あ、うん。そうだった」
そこがメインだろ。
求めてもないのに下野が居住まいを正した。
なんとなく俺も合わせておく。
面と向かって話すのが難しいのか、下野は自分の爪先をじっと見つめていた。
「もしかしたら、というか多分気付いていると思うんだけど」
「うん」
「でも、私からは言い出しづらくて。『だから?』みたいな反応されたらちょっと……ううん。かなり傷つくし」
「前置き長くない?」
さらっと言ってほしい。
遠回りなんてしていたら踏ん切りがつかなくなる。
下野にだってわかっているだろう。
やがて、観念したような呟きが漏れた。
「実は私……」
「下野さーん!!」
これからだっていうときに誰だよ。
声の主は遠いところにいた。キズナ先生だった。邪魔するなって文句をつけたいところだけど、今日の先生には世話になった。横槍を許してやろう。
「親御さんが迎えにきてる。早く行きなさい」
このとき感じた寒気は一生忘れない。
頭が真っ白になったし、不意打ちの衝撃がいつまでも引いていかない。
思考はいつまでもぐるぐるとしている。
迎えってなに。なんでこのタイミングで。急すぎる。いきなり言うなよ。早く行けって? キズナ先生は全部知ってるのか。担任だから。でも何も言ってなかったじゃん。嫌だよ、こんなの。もっと告知しろって。クズじゃあるまいし。ホウレンソウは大事。下野もなに黙ってんだ。待って、なんで立ち上がってるの。
固まっている間にも時間は流れている。
下野は困ったような笑みを浮かべていた。
「いかなきゃ」
ぎこちない手の振り方だった。
「またね」
反射的に足に力がこもった。
だが直後、激痛が右足首を襲う。そうだ、捻挫していたんだった。
俺がうずくまっている間に、下野はとっくに行ってしまった。もう昇降口から出ようとしている。まて、こんな終わり方アリかよ。
いつも何気なく使う廊下が、すごく長い。
まともに歩くこともままならず、何度も立ち止まりかける。ふらふらとした不審な動きは見る人が見ればゾンビみたいって言うかもしれない。
ほとんど這うように昇降口に着いた。
「下野!」
学校の正門前にタクシーが停まっていた。結衣山では珍しい。住人なら車を自分で所有するものだから。タクシーを利用するのは市外から来た人間か————反対に結衣山から出ていく人間だけだ。
「まってくれ、下野!」
「清浦、落ち着け! 足首をひねっているんだろう!? 走ろうとするな!」
俺を押し留めようとしたキズナ先生が掴んできた。
逆に俺は先生の胸ぐらを掴み返した。
「なんで言ってくれなかったんですか!」
「………」
「下野の転校のこと!」
「今更言ったって、何も変わらないじゃないか」
そんなことないだろ。勝手に決めんなよ。
いや、違う。今は先生の相手をしている場合じゃない。
正門前、タクシーはもう停まっていなかった。当然ながら下野の姿もない。
「くそっ……!」
「よせ! 止まるんだ、清浦!」
目に留まったのは自転車だった。
走る車に自転車で追いつくわけがないとか、そういう理性的な考えは一切はたらかなかった。持ち主らしき後輩女子に一言かけておく。
「お嬢さん! 自転車借りパクするぞ!」
「ええっ!? なんすか、その堂々とした泥棒宣言!? ちょっと待ってほしいっす、ウチこのあとバイトなんすけど!?」
何か言っているが、飛び乗ってそのまま発進させる。
キズナ先生と後輩の静止を無視して俺は正門を飛び出した。
右見て左見て、すぐにタクシーは見つかった。
立ち漕ぎになりながら全速力で追いかける。身体に吹き付ける風は妙に生温かい。湿っぽいにおいがしている。嫌な予感がしてきた。
「うそだよな」
直後、鼻先に水滴が当たった。
続けて2摘、3摘と落ちてきたかと思えば、ものの数秒で突風と大雨が襲い掛かってきた。夕方にかけて雨の予報なのは知っていた。でもここまで激しいとは聞いてない。ゲリラかよ。なんでこのタイミングで降ってくんだよ!
視界が急激に悪くなった。
タクシーがちゃんと俺の前を走っているのかすら判然としない。
「あーっ、くそが!」
こんなときなのに、いや、こんなときだからか。俺はGWを思い出していた。
あの日、下野とサイクリングしたときはあんなにも穏やかで優しい風が吹いていた。そんな結衣山がまったく別の顔をしている。この町の全部が俺と下野を阻む障害に感じる。
「最悪だなあっ!!」
右足首はずっと悲鳴を上げ続けている。
何が戦士の勲章だ。名誉の負傷だ。
あいつを追いかけられないこの足に、何の意味があるっていうんだ。
休みなしにペダルを漕ぎ続けても、車はどんどん遠ざかっていく。
「はあ、はあ、はあっ……!!」
心が折れそうになる。
追いつけない。
どうすれば……。
「よっ」
「うおっ!?」
突然、後輪に負荷がかかり危うく転倒しかけた。
誰かが飛び乗ってきたんだ。いや、誰かじゃない。こんなふざけた芸当ができるやつを下野以外に一人しか知らない。
作り物みたいに端正な顔が近くにあった。
「ムラサキ……っ!?」
「そんなに嬉しいか。あたしが来てくれて」
「お前、どうして……」
「代わりなよ」
一度停止しようとしたが、それより早くムラサキの手が伸びてきてハンドルを奪われた。身体をねじ込まれる。俺たちは走行中の自転車で器用にスイッチした。
「アレ追いかければいいわけ?」
「そうだ! いけるか!?」
「頭伏せてろ! 風の抵抗がうっとうしい!」
その指示に従うよりも先に、自転車が速度を上げた。俺が漕いでいたときとは比べ物にならないくらいに爆速。しっかり掴まってないと……というか俺はほとんどムラサキにしがみつく恰好になった。
「すぐカーブくるぞ! 左だ!」
「ちょ、まっ……」
ムラサキはノーブレーキで車体を傾けた。
体幹を駆使してバランスを取る。地面が顔のすぐそばまで迫っていた。ふとしたはずみで接触するだろう。そうなれば大火傷確実だ。
「ふっ………くうっ!?」
腹がつりそうだ。
ようやくカーブを曲がり終えたとき、親友2号の高笑いがきこえた。
「あはははっ!!」
「なに笑ってんだ!?」
「楽しい!!」
「俺は楽しくねえよ!?」
景色の変化が凄まじい。ムラサキは今、全身の力を脚に集約しているらしかった。助けに来てもらっておいてなんだが、頼もしいというより恐い。こいつの底力には限界がないのか。あと、ペダルから鳴っちゃいけない音がなっている。タイヤからも火花が。ちゃんと返せるか心配になってきた。
「なあっ」
「なんだよ!」
「タクシーは駅に向かってんだよな」
「じゃねーの!?」
「だったら馬鹿正直に車を追う必要ねえじゃん。先回りした方が早いだろ」
「先回りったって、どうすりゃ……」
ムラサキが真横に視線を走らせた。俺もそれに倣う。
道なき道。木々が生い茂り少し先を見通すことさえできない。
まさかと思う。こんな急斜面を、雨ざらしで突っ込むはずが……。
「いくぞ」
「考え直さない!?」
「あたしがついてる」
俺が女でこいつが男だったら惚れるようなセリフ。
俺が何を言ったって、ムラサキは信念を曲げたりしない。自分の信じる方に突き進んでいくだろう。
速度を上げた自転車は進入禁止の柵の隙間をくぐり抜けていった。
頭上から叩きつける雨粒が弱まったと感じるや否や、無数の枝葉が視界を覆った。身体中に擦り傷が出来上がっていく。視界ゼロのなか、生物として本能的な恐怖がわきあがった。怖すぎる。濡れた斜面のせいで容赦ないスピードが出ているし。
「あっ……」
永遠みたいな時間ののち視界が一気に明るくなった。そして訪れる浮遊感。
俺たちはいつの間にか、空中に放り出されていた。
「ええええええっ!?」
地面が、遠い。いや、でもすぐ近くなってきた。
死ぬ。そういえば小学生のとき、登り棒から落ちて顎下を擦ったことがあったか。痛くて泣いて……でも、あのときよりずっと怖い。宙にはどこにも掴むところがない。
目を瞑って、ムラサキを強く抱きとめた。
「邪魔。動けない」
「ぐべっ」
器用で巧みなひじ打ちが炸裂。
一時的に互いの身体が離れる。だがすぐにムラサキが俺の襟首をつかむ。地面に激突する寸前、ぐるんと体がひねられる感覚があった。
背中、それから腕に強烈な衝撃と痛み。
回転の勢いを殺しきれず、何回も地面を転がった。
痛い。でも痛いってことは生きているのか……?
「トウマ、上!」
「へっ」
自転車が頭上に落ちてくる。痛がって悶えるヒマすらない。慌ててその場を飛び退いた。
甲高い衝撃音。地面に打ちつけられた自転車は再び高く舞い上がった。道脇の柵の高さを越え、暗い崖下に落ちていく。
返却は絶望的だと思っていたが、今その可能性が潰えた。弁償確定だ。
「ったく。不安だからって抱き着いてくるな。驚くだろうが」
「一応守ろうとしたんだけど」
「いい。別のときで守ってもらうから」
「おう、まかせろ」
クラクションが鳴った。それも連続で。
ハチャメチャな追跡劇はいつの間にか終わっていた。俺たちは目的のタクシーの目の前に躍り出る形になったようだ。運転手が慌てて飛び出してくる。
「君たち大丈夫か!?」
かなり動揺しているみたいだ。無理もない。走らせている車の前にいきなり人が降ってきたのだから。人生で一回あるかないかの出来事だろう。
「いけよ」
ムラサキの言葉で我に返る。
そうだ。俺にはやるべきことがある。
「ありがとう。ムラサキ」
「トウマが何をしたいのか、あたしにはわからない。でも気が済んだなら、ちゃんとあたしのところに帰ってこいよ」
「………」
本当に。背中を押されてばかりいるな、俺。
ムラサキがいてくれてよかった。
狼狽する運転手を無視して俺は後部座席に近づいていった。
雨粒のせいで靄がかかって中が見通せない。でも人影がうごめいている。
「俺はお前に言いたいことがある」
下野は出てきてくれない。でもそのまま続けた。
「お前の気持ちが東京にあるのは知ってる。お前の人生だ。お前のやりたいように好きに生きたらいいし、そうじゃなきゃ駄目だ。だから、今から言うことは俺の都合でしかない」
俺は思いきり息を吸い込んだ。
「ふっざ、けんなあああああああああああああ!!!!!」
力の限り叫ぶ。
この喉が潰れたっていい。
言いたいことは止めどなく溢れてくる。
「勝手にいなくなろうとするなよ! びっくりするだろ! こんな足で走らせやがって。治りが遅くなったらどうしてくれんだ!?」
勝手に無茶したんだろ、とかいう正論は受け付けていない。
追いかけてこないと思い込んでいたならそっちが悪い。
「だいたい、なんで転校のこと何も言わねえんだよ!? タイミングいくらでもあっただろ! それともあれか。言うほどの仲でもないってか。ふざけんなよ、俺たちはそんな上っ面の浅い関係じゃないだろ!」
そうだ。俺たちはもう薄っぺらい関係性じゃない。
出会って3か月しか経ってないとか、そんなのどうでもいい。
「お前はとっくに俺の特別なんだよ!」
確かに最初はいけ好かない東京人が来たと思ったよ。
でもすぐにお前がイヤな奴じゃないってわかった。
オヤカタの作った飯を美味そうに食べてた。
ヨウキャの口下手を笑わずに普通に接して。
ムラサキにも寄り添ってくれた。
そういうところが全部好きだ。
そんなの当たり前だって、お前は言うかもしれない。でも全然普通じゃないんだ。
俺たちの輪に入って普通に馴染んでいくやつなんて1人もいなかった。
俺がここまで、すんなりと気を許すなんて久しくなくて————
「これっきりでお前はいいのかよ。たった3ヶ月ぽっちで別れることになって。俺は全然よくないぞ。全然良くない!」
昨日、約束したばかりじゃないか。
夏も秋も、それから冬だって。
まだ見せてない結衣山のことをもっと知ってほしい。
「3年生になったらさ、きっと受験とか就職とかで忙しくなるだろうけど、車で遠出しよう。俺は4月生まれなんだ。速攻で免許取るから。どこ行きたい? 下野は東京育ちだから、関西とか九州にしてみるか。きっと楽しい————ううん、楽しくする」
先のことを想像してたら本当に楽しい気分になってきた。
それだけに、ずっと下野が何も言ってくれないのがつらい。心細くなる。
だからつい情けない言葉が口をついて出た。
「いかないでほしい」
どうにもならないって分かってるのに。
どうしても、下野がいる想像が離れてくれない。
「な、なあ、いいかげん顔を見せてくれないか。俺だけ一方的に話してるの恥ずかしいから。次は下野のターンです。はい、どうぞ!」
後部座席のドアが開いた。
もうちょっと時間おけよ。ためらいゼロかよ。
「ん?」
降りてきたのは下野ではなかった。
なんか知らないおっさんだった。
「んん?」
車内を覗き込む。
他には誰も乗っていなかった。
「( ,,`・ω・´)ンンン?」
あれっ。あれあれ、あっれれ~?
「す、すみません。どちら様でしょうか……?」
「こちらのセリフだがね!?」
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