第4話 お買い物に出かける準備

8畳の生活スペース、6畳のキッチン、風呂トイレ別の築年数が経ったアパート。ここに、ジェット団から解雇されたザリガニ怪人のザリ子は戦闘員一人と共同生活をしている。


夏の暑さが収まる気配はまだない。


「イー(↑)」

「帰ってきて、何でそんなテンション高いの?・・・あー、ごめん。他の怪人と一緒で楽しかったのね。私と居たら、ダラダラしてるだけだし、つまんないねー。ごめんなさいねー。・・・まぁ、どうでもいいけど・・・ね!」

「イー」

「何、その箱?ジェット団って書いてあるけど。私宛なの?そう・・・関係ないけど、ジェット団株式会社って変じゃない。どっちかというと、前株で株式会社ジェット団の方が良いと思わない?」

「イー」

「はいはい、開ける開ける。イーイー、うるさいわね。」

「・・・」

「中身は、何かな?・・手袋?んっ、メモ、渡されたの?この高貴なワタクシに、お渡しなさい。」

「・・・イー」

「イーが遅い!その間、やめてよ。含みをもたせないで!」

「イー」

「で、なんだろう。ほうほう、な!・・・早く、その手袋を私にはめて。急いで!」

「イ、イー」


ザリ子の爪に手袋をかぶせると、なんと、人間の手の形に変化する、変身手袋だったのだ。


「わーナニコレ!最高じゃん!しかも、手袋の上部分がレースでなんか、エロいいわ。貴婦人みたい。」

「イー(↑)」

「高貴なワタクシに、あなたのスマホを渡しなさい。」

「・・・イー」

「だから、間!やめて!」

「イー」

「これで、スマホを操作できる・・・反応しないじゃない。あっこれ、欠陥品ね。誰にクレーム入れればいいの?あー、あの変態科学者?じゃ、言っておいて。」

「イー(↓)」

「それはそうと、これなら、やっと外に行ける。戦闘員、準備して!買い物に行くよ!」

「イー(↓)」

「財布の中を広げても、見ないよ。それに、あなたの財布もあるしね。」

「イ・・・イー?」

「それより、普段、外に出る時はマスクしないでしょ。どうしてるの?」

「イー」

「サングラスなのね、ちょっとかけて見て。それと、かける時は、後ろを向いてかけるの。これは基本だから。」


あまりに暇が続き、お笑い番組を見過ぎて、ちょっと痛い感じになっているザリ子だった。


「イー」

「後ろを向いて、かけて、よし、前を向いて。」

「イー」

「・・・えっ何、ソレ?なんか予想外なんですけど。近未来的っていうか、レンズが左右に分かれてなくて、まっすぐで・・・なんかロボットみたい・・・マスク取って、それで行くの?」

「イー?(何か?)」

「それ、マスクで街中歩くぐらい目立ってるよ。・・・絶対!一緒に行きたくないんだけど・・・それはダメ、違うのにして。」

「イー(慌てる)」

「違う!かける時は後ろ向いてから。」

「イー(慌てる)」

「・・・よし、前を向いて。」

「イー」

「色変わっただけ!だから嫌だって。なんで分かんないの。それに、何で黄色のフチで個性足してんのよ!もう、前のから個性渋滞してんの、分かるでしょ、バカ!普通のでいいの。」

「イー(慌てる)」

「・・・そう、後ろ向いて、OK!じゃ、前を向いて!」

「イー」

「うん、普通のサングラス、全然いい。・・・それに、ちょっとかっこいいじゃない。」


ザリ子は気づいた。戦闘員は、まともな恰好をしたら、イケてる事を。


「OK、合格ね。さぁ、しもべよ。高貴なワタクシをエスコートしなさい。」

「・・・イ」

「間!」


これから、二人は買物に出かけるのであった。次回に続く。

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