第31話 教会到着

・・・


 メティとオルロスが王城へと突入したころ、リュウトは教会へと到着していた。

 リュウトはそこで溢れかえっている人の多さに驚く。


「多すぎるな・・・。これじゃあ簡単に中に入るのは難しそうだ」


 教会には教皇をはじめ、枢機卿や司教などが常駐している。

 彼らは頭の良さだけではなくそれなりの力も持っているため、悪魔が溢れかえった街中よりも教会内の方が安全なのだ。

 そのため多くの人が集まってきていた。


「キャーー!」

「おい! 悪魔が来たぞ!!」


 人が集まっているところに悪魔が来ないわけがなかった。

 大体は下位悪魔だが、何体か中位悪魔もいる。


 すると教会の中から魔法に使う杖を持った人たちが出てきた。

 彼らは白を基調とした衣服を身にまとい、表情からも高潔さが伺える。


 ただ、その中心にいる人を除いて。


「あの真ん中の人は何だ? 酔っぱらっているのか?」


 リュウトも中心にいる人物を見て怪訝な顔をしている。

 その人は他の人よりも小柄な老人で、力があるようには見えない。

 ただかなり豪華な衣服であるため、位が高いことは分かった。

 しかし手には酒瓶を持ち、顔は赤い。

 足もふらついていることから、かなり酔っていることが見て取れた。


 その酔っ払いを知っている国民が声をあげる。


「ザレロア大司教様! 我らをお救いください!」

「大司教様!!」


「・・・あの様子なのに頼りにされているのか?」


 リュウトは驚きを隠せなかった。

 酔っぱらいだというのに、教会近くに集まっている全員から支持されていたのだ。


 時間が経つごとにザレロアに期待する声が大きくなっていった。

 それらの声が耳に届いたザレロアが動き出す。


「・・・。また悪魔が出たのか・・・ヒック。・・・とりあえず順番に、ヒック。・・・教会の中へ」


 しゃっくりをしながらも、教会への避難指示を出す。

 ザレロアと共に中から出てきた者たちも誘導を行い、迅速に避難できるように動いていた。


 聖母と聖女を探しているリュウトも誘導に従って中へと向かう。

 その移動をしながらザレロアの魔法を見た。


「土魔法・第二階位・・・ヒック。『アースバレット』」


 ザレロアの持つ杖に土の塊が作られ、悪魔に向かって放たれた。

 それは一度で終わらず、何度も繰り返される。


 リュウトはその技量の高さに驚愕し、足を止めていた。


「あのレベルの魔法を1秒にも満たない時間で何発も撃つなんて・・・。それに一度も外していない・・・」


 放たれた土の塊は全て悪魔に命中。

 もちろん国民にあたることも無い。

 それを酔っぱらいがやっているというのだから、リュウトが驚くのも無理はない。


 そしてものの数秒で近くに集まっていた悪魔は全滅した。


「・・・ヒック。・・・ヒック。・・・ん?」

「!?」


 ザレロアとリュウトの目が一瞬だけあった。

 その瞬間、一直線に近付いてきたのだ。


 気づけばリュウト以外の人は教会の中に避難しており、その場にいるのはリュウトとザレロアだけだった。

 ザレロアはリュウトの顔を覗き込むと同時に、杖をリュウトのお腹に当てる。


「な、何でしょうか・・・」

「お主、ここへ何をしに来た。・・・回答によってはただでは済まさん」


 それを尋ねたザレロアの表情は真剣なものとなっており、酔っぱらっているようには見えなかった。

 リュウトの額からは汗がたれ、つばを飲み込んだ。

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