第30話 中位悪魔

・・・


 メティとオルロスはやっとの思いで王城へと到達した。

 城のいたるところから煙が出ており、庭には血を流して倒れている人もいる。

 かなり状況が悪いことは、すぐに見て取れた。


「事態は一刻を争います。ヒューリッテ王のもとに急ぎましょう」

「そうだな。これ以上犠牲者を増やすわけにはいかない」


 そうして二人が王城の中に入ろうとしたとき、門の上から声が聞こえた。

 それに気づいた二人が上を見ると、そこには3体の中位悪魔がよだれを垂らして見下ろしていたのだ。


「オイシソウ・・・」

「タベタイ!!」

「コロソウ」


 彼らは『悪魔降し』によって生まれた悪魔。

 中位悪魔はB級C級冒険者と同じくらいの力を持っている。

 ここで言う力とは、肉体的な力だ。

 生まれたばかりの中位悪魔が魔法を使いこなせるわけもない。

 それでも一人前の冒険者と同じくらいの力を持っているのだから、相当丈夫な身体を持っていることが分かるだろう。


「オルロス!」

「分かっている。流石にこいつらは無視できないからな」


 オルロスは大剣を構え、戦いに備える。

 身体からはオーラが出始めた。


「すぐに終わらせてやろう」


「オレガタベル!!」

「オレダ・・・!」

「チガウ、オレ」


 3体の中位悪魔がオルロスに向けて一斉に飛び掛かった。

 そこらの冒険者では成すすべなく殺されるだろう。

 しかしオルロスは全く慌てることなく対処する。


「光魔法・第一階位『発光』」


 オルロスの身体から出た眩い光が辺り一面を覆った。

 それによって中位悪魔たちは、一瞬視覚を奪われる。


「ナンダ!?」


 その隙にオルロスは大剣を振り回し、中位悪魔たちの頭を飛ばしていった。

 3つの頭が転がるまでにかかった時間は1秒未満。

 大剣を使ってこれが出来ているのは、オルロスの技量の高さを表していると言える。


 オルロスに疲れた様子は全くない。


「オルロス、流石です」

「これくらいで苦戦するわけにはいかない」

「そうでしたね」

「・・・それにきっと、この騒動にはあいつが関わっているはずだ。・・・何としても倒さないといけない」

「それは・・・父の・・・」

「ああ。そいつが城内にいることを考えて行動するぞ」

「わかりました」


 二人が城内に入ろうと一歩を踏み出したとき、ガラスの割れる音がした。

 そのガラスは、いつもヒューリッテ王が眠っている部屋の窓のものだ。


「なんだ?」


 オルロスが目を向けると、その窓から次々と悪魔が飛び出していた。

 すでにその数は20超。

 それで終わりではなく、まだ溢れてきていた。


「きっとあそこにヒューリッテ王がいるはずです。早くあれを収めないと・・・!」

「10年前以上に酷いことになる・・・。急ぐぞ!」


 二人はヒューリッテ王の寝室に向けて、城内に突入した。

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