第27話 事件

 聖堂の中へは聖女護衛のオルロスでさえ入ることは許されない。

 そのためメティは一人で聖堂の中に入っていった。


 そこには毎日のように祈りをささげる聖母メリアがいる。

 ちなみに、前回天啓を受けてから何のお告げもない。


 メリアはメティが入ってきたことに気がつき、祈りを中断した。


「メティか・・・。街の様子はどうだ・・・?」

「呪いの被害者が多くなっています。悪魔の動きが活発になっているということでしょうか?」

「おそらくな・・・。『英雄』について何かわかったことは無いか・・・?」

「まだ何も。教会の者総出で情報を集めていますが、目ぼしいものはありませんでした」

「そうか・・・」


 現在、悪魔の呪いを受けた患者を治すことが出来るのは聖魔法のみ。

 ただ聖魔法を使うことが出来る人は限られているため、簡単に治せるものではないのだ。


 聖アンゲロス教の病院に運ばれる者の解呪はメティが積極的に行っている。

 しかし呪いを受けた人全てが病院を訪れるわけではない。

 金銭的余裕がなかったり、王都まで行くことが出来なかったりする者は解呪を受けられないのだ。

 人口は王都の方が多いが、呪いを受けたまま解呪されていない患者は王都周辺の地域の方が多い。


 そのことをメリアもメティも気がついているからこそ焦っているのだ。


「私が解呪できる人の数には上限があります」

「それは分かっている・・・。だから『英雄』の情報を集めることはもちろん、呪いの原因となっている悪魔についても早く情報を集めなさい」

「分かりました」


 メティはメリアに別れの挨拶をした後、聖堂をあとにした。



 外には護衛であるオルロスと、見知らぬ騎士の一人が待っていた。

 騎士は国王のもとにつき、事故・事件の調査や治安維持などを行う。

 騎士団のトップである騎士団長は、王国宰相と同じ位になる。


「オルロス、その騎士はどなたですか?」

「こちらは・・・」


 その騎士はオルロスの言葉をさえぎってメティに話始めた。


「メティ様!大変です!」

「おい貴様!」


 聖女と騎士では、はるかに聖女の方が立場は上だ。

 そのため、オルロスは騎士の無礼を正そうとした。

 しかし騎士の鬼気迫る表情を見たメティは、逆にオルロスを制止させる。


「構いません。話を続けてください」


「ヒューリッテ国王が、意識を失いました!」

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