第28話 『悪魔降し』
・・・
リュウトと別れたグー爺は、ヒューリッテ王国王都が一望できる建物の上に立っていた。
日が高く上り、少し汗ばむような気候だが、涼しげな顔をしている。
「・・・来たか、オーティス」
音などの前触れなく、グー爺の横には若い長身の男性が立っていた。
肌は青白いが不健康というわけではない。
ほどよく筋肉があり、むしろ健康的に見える。
「グシオン!俺の準備は整ったぜ!」
グー爺ことグシオンは、オーティスの報告を聞き不気味な笑みを浮かべた。
「よし・・・やっとじゃ・・・」
「今回は入念に準備したからな!10年前のような失敗はしねぇ。次こそクソ共を絶望させてやるぜ!」
「オースティン、目的を間違えてはならん。全てはあの方のためじゃ」
「もちろん分かってるって」
「ならよい」
そしてグシオンとオースティンは、何年にもわたって準備が進められてきた計画を遂行する。
「はじめるぞ、オースティン」
「ああ!邪魔法・第四階位『悪魔降し』!」
魔法を発動したが、オースティンの周りでは何も変化がない。
変化が起きているのはもっと離れた場所だった。
オースティンの魔法によって、今まで意識を失っていた人々がいきなり苦しみだしたのだ。
徐々に肌は黒くなっていき、爪は鋭くなっていく。
耳は尖り瞳が赤くなっていた。
意識を失っていた人全員が悪魔に変わったのだ。
「さあ、いよいよ仕上げじゃ。この世界をあの方のものに・・・」
・・・
時を少し戻す。
意識を失った冒険者二人を抱えたリュウトは、約1か月をかけて王都に到着していた。
抱えたと言っても、二人は荷台に乗せている。
王都であれば意識を取り戻すことが出来るという情報をキャッチしたため、『分裂』したラピウスと共に移動したのだ。
ただ魔物が街中にいると騒ぎになるため、服の下に隠れている。
他の仲間達は森で修行をしたり、街中に潜んでいたりしていた。
それぞれにラピウスが付いており、いつでも意思疎通が出来る状態になっている。
「ここまで長かったな。・・・その間にみんなが強くなっているのは嬉しいことだ」
仲間の力がリュウトのステータスに反映されるため、何となく分かるのだ。
特にゴブリンジェネラルの魔石を食べたアレスと、ゴブリンメイジの魔石を食べたタナの成長は著しい。
誰が食べるのかというのは、話し合いの結果だ。
話し合いとはいっても、アレスは強引に主張し、タナはアクモとウラノに押し付けられていた。
「道中で人に聞いた感じだと、聖アンゲロス教の病院に行くのが一番良さそうだな」
そういって病院に向かおうとしたリュウトだったが、荷台に乗せた二人に違和感があった。
不思議に思い様子を覗くと肌が黒くなっていたのだ。
「こ、これは・・・!」
すると王都のいたるところで悲鳴があがってきた。
「悪魔だ!!」
「そんな!あなた!!」
「逃げろ!10年前の悲劇が起きるぞ!!」
リュウトは肌が黒く特徴的な見た目となった人が悪魔だと理解した。
するとリュウトの目が赤くなる。
そしてグー爺から頼まれたお願いを遂行するべく動き出した。
「・・・聖母と聖女を探さないと。・・・とりあえず聖堂に行くか」
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