第21話 ゴブリンジェネラル

 リュウト達はグー爺のお陰で、難なくゴブリンジェネラルとゴブリンメイジのいる所に到達した。

 今まで見てきたゴブリン達とは格が違う。


「オレノナカマヲ、タクサンコロシタ。コンカイハ、ユルサナイ」

「ワレラノ、チカラノ、カテトナルガイイ」


 圧倒的強者のオーラに、アクモは少しだけ恐怖を抱いていた。


「また自信がなくなってきた・・・」

「大丈夫さ。一緒に頑張ろうな、アクモ!」

「リュウト・・・」

「いざとなれば私の『竜息』で助けるよ!」

「きっと何とかなるってー」


 リュウト、ウラノ、ラピウスはそれぞれの言葉でアクモを励ました。

 不安そうなアクモと対照的に、アレスは格上の相手を目の前にして興奮している。


「前回の借りを返す時が来たぜ!パワーアップした俺の力で、ぶっ飛ばしてやる!」


 そんなアレスを、タナが冷静に声をかけた。


「きっとアレスだけの力では、2体同時に相手にすることなんか出来ませんよ」

「なんだとぉ?」

「だから私たちで力を合わせて戦っていきましょう。同時に相手にするよりも、2つに分断して戦った方が良さそうです」


 タナの提案もあり、リュウトを合わせた6人は2つに分かれて戦うことにした。


 ゴブリンメイジの相手をするのは、アクモ・ウラノ・タナ。

 そしてゴブリンジェネラルの相手をするのは、リュウト・アレス・ラピウスだ。


 まずは敵を分断するために、リュウトが魔法を使う。


「土魔法・第一階位『サンドウォール』!」


 リュウトの魔法によって、ゴブリンジェネラルとゴブリンメイジの間には、2メートルほどの高さがある砂の壁が出来上がった。

 壊そうと思えばすぐに壊れるが、リュウトに出来る精いっぱいの魔法だ。

 ただこれでも、視線を交わすことが出来ないため、ゴブリンジェネラルとゴブリンメイジが連携することはできない。


 『サンドウォール』によって左右に分断されたゴブリンジェネラルとゴブリンメイジ。

 それぞれに対応するために、2つに分かれて行動を開始した。



~ゴブリンジェネラルサイド~


 リュウト・アレス・ラピウスは、ゴブリンジェネラルと対峙する。


「フタツニ、ワケタトコロデ、カンケイナイ」


「相手は圧倒的に格上だ。けれど強くなるために修行した。必ず勝とう!」

「とにかく戦って勝てばいいんだろ?問題ない」

「あんまり考えすぎず、相手をぶっ飛ばそうー!」


 ゴブリンジェネラルからすると、リュウト達は雑魚の集まりだ。

 だから自分に勝とうとしていることに、少しの苛立ちを覚えている。


「オマエタチモ、アソコノボウケンシャタチト、オナジヨウニ、タオス」


 ゴブリンジェネラルはそういいながら、自分の後ろを指さした。

 そこにいたのは大槌を持った大男と、ナイフを持った小柄な男。

 かなり重症だが、息はしていた。


 リュウト達が知る由は無いが、ヒューリッテ王国で死亡認定されたB級冒険者のバートンとスロアだった。

 ヒューリッテ王国では、一定期間消息が分からなくなると死亡と判断される場合がある。

 これは王国の国民に、生存の期待をさせないための策の一つだった。


「人だ!まだ生きてはいるみたいだな。早くゴブリンジェネラルを倒して、助けるぞ!」

「俺は戦えればいいんだぁ!いくぜ!」


 アレスは棍棒を両手に持ち、ゴブリンジェネラルへと向かっていった。


「一人で突っ込むな!」

「サポートに入るよー。『分裂』!」


 『分裂』はラピウスが進化した際に手に入れたスキルだ。

 その名の通り、身体を分裂させることが出来る。


「リュウトー。僕の身体の一つをアレスに向かって投げてー」

「分かった!」


 リュウトはアレスと同じくらいの力を持っている。

 だからそれなりの球速でラピウスを投げることが出来た。


 飛ばされたラピウスはアレスにくっつく。


「傷を負ってもすぐに僕が回復させるよー」

「頼んだぜ!」


 そしてゴブリンジェネラルの錆びた大剣と、アレスが持つ二つの棍棒がぶつかった。

 だがやはりゴブリンジェネラルの方が力が強い。

 すぐに吹っ飛ばされてしまう。


「ミタメドオリ、ヨワイ」


 アレスもすぐに立ち上がり、再びゴブリンジェネラルに向かう。


「そんな簡単にくたばるかよ!」


 リュウトも魔法でアレスをサポートする。


「俺も援護する!土魔法・第一階位『サンドバレット』!」


 『サンドバレット』は砂で出来た弾を飛ばす魔法だ。

 一つ一つの威力はそこまで無いが、素早く発射することが出来る。

 リュウトはアレスに当てないために、威力よりも速度を優先した。


 ゴブリンジェネラルは顔に砂がかかることで、視界が悪くなっている。

 そのためアレスとの戦いに集中できなくなっていた。


「オラオラぁ!動きが鈍ってるぜ!」

「コザカシイ・・・」


 ゴブリンジェネラルは距離を取り、力を高め始める。


「コンナタタカイ、スグニ、オワラセヨウ」

「何をしてくるつもりだ」


 ゴブリンジェネラルの体温が徐々に上がり、蒸気が出てきた。

 身体には血管が浮かび上がり、目が血走りだす。


「『狂気化』・・・」


 今までとは明らかに違う様子に、リュウト達は気を引き締め直す。


「アレス、ラピウス!油断するなよ!」

「油断なんかしたことねぇ」

「もちろんだよー」


「グギャ・・・」


 ゴブリンジェネラルは錆びた大剣を大きく振りかぶって、地面に叩きつける。

 するとゴブリンジェネラルを中心にクレーターが出来た。


「何て力だ・・・」


 ゴブリンジェネラルはアレスに狙いを定め、走り出した。


「グギャアァ!!!」


 アレスは向かってくるゴブリンジェネラルに耐えるべく、棍棒を正面に構えて全身に力を入れる。


「来いや!」

「ギャアァ!!」


 しかし力で劣っているアレスに耐えられるはずもない。

 ゴブリンジェネラルに吹っ飛ばされたアレスは、後方にあった岩に身体を叩きつけられた。

 そしてその岩は砕け散る。


「アレス!」


 アレスを吹っ飛ばしたゴブリンジェネラルは、リュウトとラピウスに目を向けた。

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