第19話 天啓

 成形するにはまず、身体の中にある魔力を感じ取る必要がある。

 これが出来るようになったら魔力を操作し、身体の外に出す。

 そして使う魔法に合う形に整えるのだ。


「どうしたら感じ取れるようになるんですか?」

「ワシがそのきっかけをやろう。その後はそれぞれで頑張るしかない」

「きっかけ?」

「ワシが魔力を君たちに流す。それで魔力がどんなものが分かれば、自分の中にある魔力を感じやすくなるじゃろ」


 そう言うとグー爺はリュウトの手を握り、魔力を流し始めた。


「ん・・・?」


 初めは何も感じ取ることが出来なかった。

 ただ握られている感覚しかない。

 しかし時間が経つと、グー爺から流れてくる温かいものを感じ取れるようになってきた。


「これが魔力か」

「分かってきたみたいじゃな」

「はい・・・」


 リュウトと同じようにアクモとウラノの魔力を流してもらう。

 すぐに魔力を感じ取れたみたいで、リュウトよりも早く終わった。


 アレス、ラピウス、タナはまだ目を覚ましていない。

 だからこの3体は後回しにして、リュウト達は魔力操作に移る。


「次は感じた魔力を動かすんじゃ。体内にある水のような液体を動かすイメージじゃな」

「水を動かすか・・・」


 グー爺に教わったイメージを元に、魔力操作を実践する。

 しかし教わってすぐに出来るようなものでもない。

 リュウトは体の中にある魔力を感じ取ることは出来ているが、それを全く動かせていなかった。


「難しいな」

「そんな簡単なものじゃないからのぉ。もう少し頑張ってみぃ」

「わかりました」


 リュウトはグー爺に励まされながら魔力操作の特訓をしていた。

 するとその横から、喜びの声が聞こえてくる。


「あ!できた!!」

「ぼ、僕も・・・!」


 何とウラノとアクモが魔力操作に成功したのだ。

 2体はそのうれしさから、洞窟の中を駆け回っている。


「こんな早くに魔力操作を成功させるとはのぉ・・・。驚きじゃ」

「俺も負けてられないな!」


 先を越されたリュウトは、再び集中して魔力操作に励む。


・・・


 ヒューリッテ王国で最も力を持っているのはヒューリッテ王だ。

 法律や予算といった重要な事柄の最終決定権を持っている。

 だからといって独裁的に国を治めているわけではない。

 むしろ、悪魔に勝ってきたその手腕から高く評価され、歴代最高の王とも言われていた。


 そんなヒューリッテ王に匹敵する程の影響力を持っている人がいる。

 それは聖アンゲロス教の教皇にして、聖母とも言われる80歳を超えた老婆。

 メリア・パルステンだ。


 メリアは、聖アンゲロス教の教会の中でも限られた人しか入れない聖堂で、一人祈りをささげていた。


「我らを悪魔からお守りください・・・我らを悪魔からお守りください・・・」


 世界で唯一の人の国となったその日から、毎日12時間かけて祈りを捧げている。

 しかし、聖母メリアが何時間も祈ったからといって『天啓』を受けられるわけではない。

 これは運やタイミングだ。

 もちろんメリアも知っている。

 ただ祈らずにはいられなかったのだ。


「我らを悪魔からお守りください・・・。ん?おぉ・・・!これは!!」


 なんとこの日は聖堂に聖なる光が降り注ぐ。

 これは聖母が天啓を受けているということだ。


 一語一句聞き逃さないように、全神経を集中させる。

 額には汗が浮かんでいた。


 数十秒ほどの時間が経ち、聖堂への光が収まった。

 そしてメリアは、天啓に従って動き出す。


「まずはメティに話を・・・。後は『異世界の英雄』を探さなくては・・・」


 メリアは聖女メティに話をするため、聖堂から飛び出した。


・・・

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