第16話 仲間の救出

 ウラノによって通り道からゴブリンが消え、リュウトのいる場所からアレス達の様子がはっきりと見えた。

 そこはアレス達が倒したゴブリン数十体とホブゴブリン2体が積まれている。


 しかし攻撃を受けたのか、ラピウスとタナも気絶してぐったりと倒れていた。

 もちろんアレスも無傷ではない。

 身体は傷だらけになり、地面に膝をついている。


 そしてホブゴブリンがとどめを刺そうと、通常よりも一回り大きい棍棒を振りかざしていた。

 アレスはそれに目を向けているため気づいてはいるが、身体に力が入っていない。

 絶体絶命の状況と言える。


「やばい!!」


 リュウトとアクモは駆け出し、アレスの助けになろうとする。

 しかし全力疾走をしたとしても間に合うとは思えなかった。


「リュウト・・・」


 走りながらアクモがリュウトに話しかける。


「僕、いくよ」

「でもこのまま走っても間に合わないぞ」

「大丈夫だよ。僕ならできるから・・・」

「アクモ・・・」


 するとアクモの身体が光り始め、スキルを使った。


「僕は仲間のためにいくよ。・・・『瞬歩』!」


 スキルを使ったアクモは一瞬にしてリュウトの隣からはいなくなり、アレスにとどめを刺そうとしているホブゴブリンに向かっていった。

 あまりの早さに、近くにいたゴブリンが吹っ飛ばされている。


「はやっ!」


 アクモはホブゴブリンに突っ込んだことで、棍棒が振り下ろされることは無かった。

 アレスを救う事に成功したのだ。

 もう一体のホブゴブリンも何が起きたのか理解できずに固まっている。


「アレス・・・助けに来たよ」

「・・・助けなんか・・・要らなかったのによ」

「そうは見えなかったけど・・・?」

「・・・ありがとよ」


 アレスはそう言うと緊張が解け、気を失ってしまった。


「ここからどうしよう・・・」


 アクモの周囲にはゴブリンが集まってきていた。

 飛ばされたホブゴブリンも立ち上がり、額に青筋を浮かべている。


「アクモ!大丈夫か!」

「僕は大丈夫」

「そうか!それはよかった・・・。あとはこいつらだな」


 リュウトはアクモのもとに辿りつき、アレス・ラピウス・タナの状態を確認する。

 周囲の警戒も怠らない。


「リュウト。みんなを運びながら逃げられるかな・・・?」

「ゴブリンを相手にする人とみんなを運ぶ人で担当を分けた方が良いだろうな」


 検討した結果、アクモとウラノがゴブリンを相手にし、最も力のあるリュウトが運ぶことになった。

 ウラノはゴブリンの集団の端の方にいるため、そこから『竜息』でゴブリンを減らしてもらう。

 アクモはリュウトに近づいてくる相手を遠ざける役目だ。


 リュウトはアレス達を腕に抱えて、脱出を試みる。

 向かってくるゴブリンに対しては、アクモが突進と噛みつきでリュウトの道を開けていた。


 しかし簡単に逃げられるわけではない。

 ホブゴブリンもリュウトを止めようと動き出す。


「グギャア!!!」

「グギギィ!!」


 ホブゴブリンとは少し距離が出来ていたため、追いつかれる前に逃げる必要がある。

 アクモではホブゴブリン2体を相手にすることは出来ないからだ。


「アクモ!ペースをあげるぞ!」

「うん!」


 リュウトとアクモは、さらに移動スピードを上げた。


・・・


 この様子を少し離れた位置から見ている者達がいた。

 片方はホブゴブリンよりも一回り身体が大きく、錆びた大剣を持っている。

 その正体はゴブリンの大軍を率いている、ゴブリンジェネラルだ。

 横にいるもう一方はホブゴブリンと同じサイズだが、杖を持ち紫のローブを着ている。

 そいつは魔法を使うことが出来るゴブリンメイジだ。


「オレモ、タタカッタホウガ、イインジャナイノカ?・・・デモ、アノカタガ、イクナトイウナラ、マチガイナイカ」

「ワレラニハ、オモイツカナイ、サクセンガ、アルンダロウ」


 この2体はホブゴブリンよりもはるかに強いため、戦闘に参加すれば瞬殺だろう。

 それだけの力を持っているが、見るだけにとどまっている。

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