第15話 スキル

 アレス達のもとに向かう頃には大雨が降りだし、空には稲妻が走っている。

 視界が悪い中、ウラノの案内でアレス達のもとに到着すると、そこではすでにゴブリンたちとの戦闘が始まっていた。


「オラオラァ!もっとかかってこいや!」

「そんなにゴブリンを挑発しないでよー。これじゃ戦いが終わらないってー」

「ラピウスの言う通りです。一度離れて落ち着きましょう」

「うるせぇ!逃げたいなら勝手にしろ!」


 3体はゴブリンの集団に囲まれ、輪の中心で奮闘している。

 アレスがなりふり構わずゴブリンを潰していき、ラピウスとタナが討ち漏らしたものを始末していく。

 アレスの棍棒一振りでゴブリンが気絶するほど、力の差ははっきりしていた。


 しかし上位個体相手にはそうはいかない。

 何度も攻撃をしないと倒せない相手だが、他にもゴブリンがいるため上位個体に集中できなかった。

 アレスが上位個体に集中するための時間を取れれば倒せるかもしれないが、上位個体は1体だけではないのだ。

 そのせいで、押されていた。


 遠くからアレスたちの様子を見たリュウトは声をかける。


「アレス、ラピウス、タナ!!大丈夫か!」


 しかし戦いに夢中になっているアレスたちは、遠くからのリュウトの声は全く耳に届いていない。

 何度呼びかけても無駄だった。


「こうなったら俺らが近付いていくしかない。ゴブリンを倒しながらアレスたちのもとに行こう!」

「分かったよ!進化した私の力を見せてあげる!」

「僕も・・・できるだけ頑張る・・・!」



 リュウトは手に持っている棍棒で、片っ端からゴブリンの頭を叩いている。

 幸いなことに、近くに上位個体はいない。

 そのため、アレスの力を持っているリュウトは容易に倒すことが出来た。


 ウラノは足で潰したり、口から炎を吐いたりして倒している。

 アレスほどの力はないが、ゴブリン相手には十分だ。

 リュウトと同じくらいのペースで倒している。


 アクモはゴブリンに体当たりや噛みつきなどで攻撃をしている。

 しかしまだ自信がなくゴブリンに対する怯えがあった。

 だからあまり多く倒せていない。


「こいつら多すぎるだろ!きりがないな!」

「これじゃあいつまで経ってもアレス達のところに着かないよ!」

「でも今は確実に倒していくしかないだろ!」


 ゴブリンに傷つけられることは無いが、数の差はやはり大きい。

 何体も倒しているが、ほとんど進めていなかった。


 その現状を不味いと思ったウラノは行動を変える。


「・・・よし!」


 ウラノはいままでしていた攻撃を止め、上空へと飛び立った。

 ある程度の高さまで飛ぶと、そこからゴブリンたちを見下ろしている。


「ここから私がアレス達に通じる道を開く!だから二人はそこを通って、先に助けに向かって!」

「わかった!」

「う、うん・・・!」


 ウラノは口に力を溜め、進化によって手に入れたスキルを使用する。


「『竜息』!!」


 いつも吐いている炎よりも指向性と威力があがっている。

 リュウトのいるところからアレス達のもとへは数十メートルがあったが、そこにいたゴブリン達は悲鳴をあげながら『竜息』の犠牲になった。


「今のうちだよ!」

「ありがとう!ウラノ!・・・行こう、アクモ!」」

「うん・・・!」

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