第12話 アレスの怒り

 洞窟の中にはすでに、アレスとラピウスがご飯を食べて待っていた。

 狩った魔物をラピウスの身体に収納して運んだみたいだ。


 アレスはリュウト達に気がつくと、眉間にしわを寄せた。


「遅くないか?」

「ごめん。ちょっとトラブルがあって遅くなっちゃった」


 リュウトがアレスに詰められそうになったところで、二人の間にアクモが入る。


「リュウトは悪くないんだ!僕のせいだから・・・」

「何があったんだ」

「川の上流に向かって調査をしてたら、ゴブリンの集落があったんだ・・・。そこで襲われた時に、僕はリュウトを置いて逃げ出した・・・」

「・・・それで?」

「一度洞窟に帰ったらウラノとタナがいたから、一緒にリュウトの助けに向かったんだ・・・。だから遅れた・・・。ごめん」

「なんで逃げたんだ・・・」

「ごめん・・・」

「どうしてだ!!」


 アレスは食べていた魔物の肉を投げ捨て、アクモに掴みかかった。

 これには周りのみんなも不味いと思い、アレスを引きはがす。


「アレス、やめろ!」


 それでもアレスは引き下がらなかった。

 しかしアレスがアクモに怒っていることは、リュウトを置いていったことではない。


「なんで逃げるなんてことをしたんだ!!戦うチャンスを自ら捨てるなんて!!」


「あ、そっちか」


 アレスは戦いが好きだからこそ、戦う機会から逃げたアクモのことを理解できなかった。

 それでアクモに詰め寄ったのだ。


「リュウト!そのゴブリン達は全滅させたのか?!」

「いや、俺も隙をみて逃げてきたからゴブリンはまだまだいるぞ」

「よし・・・」

「いや、ちょっとまて。嫌な予感がする」


 リュウトの不安とは対照的に、アレスの表情は晴れやかになっている。


「そこの奴らを滅ぼしに行くぞ!!」

「いいね!楽しそう!!私もやるよ!」


 アレスの言葉に大半は聞く耳を持たなかった。

 しかしウラノだけは乗り気だったのだ。


「本気で言ってるのか?!そんな軽い気持ちで敵うような相手じゃなかったぞ!」

「戦いに気持ちの軽いも重いもない。相手を倒す・・・それだけだ」

「そうは言っても・・・」


 アレスの言葉にウラノも乗っかる。


「そうだよ!相手を倒すだけだって!それにゴブリンたちを倒しきったら、その場所を拠点に出来るんじゃない?」

「た、たしかに・・・」

「安心できる場所を確保するためにも、やっぱり倒すべきだって!」


 リュウトも倒した方がいいと考え始めた。

 完全にゴブリン退治に行く流れだが、そこでタナが注意をする。


「確かにゴブリン達を全て倒すことが出来れば、私たちが安全に暮らせる場所が確保できるでしょう。しかし相手の戦力がどの程度なのかは把握するべきです。そうでなければ私は参加しません」

「それはその通りだな。いつも冷静で助かるよ」

「当然です」

「僕はなんでもいいよー」


 ゴブリン退治をすることに関して、ラピウスも問題ないようだ。

 ただアクモにはまだ自信がなかった。


「アクモはどうだ?」

「僕は・・・」


 うつむき気味なアクモにアレスが声をかける。


「まあ、そんな無理しなくてもいいぜ。俺が戦う相手が少なくなるからな」

「・・・」

「洞窟でゆっくり休んでろよ」

「アレス、そのくらいにしておけ」


 少し空気が悪くなった時にリュウトは二人の会話をさえぎった。


「とにかく今は身体を休めよう。今日一日動いて疲れているだろうし」


 とりあえずはゴブリン退治をするという事で決まり、その後はラピウスの体内にしまっていた魔物や魚などを食べることとなった。

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