第7話 大森林の調査

 リュウト達がいる大森林の入り口には二人のB級冒険者がいた。


 一人はバートン。身長2メートル超え100キロオーバーの大男だ。そんな身体よりも大きい大槌を抱えている。

 もう一人はスロア。身長は1.5メートルほどの小柄の男。手にはナイフを持っている。


「ねえバートン。本当にこの依頼、受けてよかったの?」

「スロアはいつも弱気だな。そんなんじゃいつまで経ってもS級なれないぜ?」


 二人は子供の頃からの付き合いで、30年近くを共にしている幼馴染だ。

 そんな二人の夢はS級の冒険者になることだが、B級冒険者になってから10年以上の月日が経っている。


「分かってるけどこの依頼の推奨ランクはA級以上だよ?僕らには危険だって」

「俺らにA級以上の力があるって示すチャンスじゃねえか。受けない理由がない!」


 冒険者が依頼を受けることに関して制限はない。基本的には自己責任だ。

 だからバートン達がB級冒険者であっても今回の依頼を受けることが出来た。


「それに大森林の調査をするってだけだろ?」

「バートンは分かってないよ。推奨がA級ってことは、それだけ危険だってことじゃないか。いつもならこんな依頼を受けないのに、どうして今回はそんなに乗り気なんだい?」

「・・・」


 スロアがバートンに依頼を受けた理由を尋ねると、途端に顔を赤くして照れ始める。

 30年近く関わっているスロアには分かってしまった。


「女かよ・・・」

「な、何でわかんだよ!!」

「はあ、どれだけの付き合いがあると思ってるんだ」

「そ、そうだよな・・・」

「それで女と今回の依頼にどんな関係があるんだ?」


 バートンは大きな身体をモジモジさせ、顔を真っ赤にしながら説明をし始める。


「俺、実は彼女がいるんだよ・・・」

「ああ、知ってる。看板娘の子でしょ」

「なんだよ、知ってたのか」

「もちろん。それで?」

「俺、この依頼に成功したら結婚するって約束をしたんだ」

「え・・・」

「この依頼を達成すればA級になれること間違いなし!そうすれば胸を張って結婚出来るだろ?」


 晴れやかな顔をしているバートンとは対照的に、スロアの表情はかなり暗くなっている。


「僕らの命はここまでってことか・・・」

「おいおい!そんな不吉なこと言うなよ!まだ分からないじゃないか!!」

「いや分かる。・・・もう旗は立ってしまったからね」


 対照的な表情を見せる二人は気を引き締めて大森林の中へと入っていった。


 それから2週間の時が経ち、このような記事が出される。


・・・


『南の大森林への行動制限』


 昨日、ヒューリッテ王国報道部が南の大森林への行動を制限すると発表しました。

 本日より南の大森林へ入ることが出来るのはS級冒険者、A級冒険者、通行許可証保有者のみです。

 報道部によりますと、行動制限を課した理由として「世界情勢の悪化」「B級冒険者の死亡認定」が挙げられています。

 なお、行動制限解除の目途は立っていないとのことです。


死亡認定冒険者

・バートン(B級)

・スロア(B級)


・・・

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