第8話 進化と命名
洞窟の最奥には、少し開けた場所がある。リュウトがこの世界に生まれた場所だ。
コボルト達を倒しきったリュウト達は、コボルトを山積みにしていた。
「ホブゴブリンのお陰で、何とか勝つことが出来たよ。ありがとう!」
「進化した俺が負けるはずがない」
ホブゴブリン以外の仲間も集まっている。
スライムはコボルトの山の上で睡眠。
レッサースモールドラゴンは進化したホブゴブリンの身体を舐めまわしている。
ボーンバットはコボルトの数を数え、レッサーウルフが手伝っていた。
リュウトはホブゴブリンの進化について疑問をぶつけてみた。
「たくさん魔物を食べると進化できるの?」
「全員かは分からないけど、基本的にはそのはず」
魔物が進化するためには、相当なエネルギーを必要とする。
魔物の肉や魔石で蓄えることが出来るのだ。
進化後の力の強さや特徴については、その前にどんな生活や戦闘をしてきたかによって決まる。
ギリギリの戦闘を繰り返してから進化すると、それだけ強力な個体となるのだ。
「同じ時に生まれたみんなだから、ホブゴブリン以外もそろそろ進化するんじゃないか?」
「ここにあるコボルトの山を分ければ、出来ると思うぜ」
「よし!じゃあ食事の時間にしよう」
バーンバットによると、山積みになっているコボルトの数は全部で24体。これにプラスしてハイコボルトの身体がある。
ホブゴブリンは戦闘中に何体か食べていたため、コボルトは食べない。ということでホブゴブリン以外が6体ずつ食べることになった。
ハイコボルトについては、倒したホブゴブリンが食べる。
「戦闘のときも言っていたけど、魔物の身体って美味しくないのか?」
「他を食べたことないから分からないが、多分強い魔物の肉ほど美味しくなると思う。実際、ハイコボルトの方が美味しいしな」
「へーそうなんだ」
リュウトは川でとった魚を食べている。生ではなく焼き魚だ。
レッサースモールドラゴンが戦闘中に炎を吐けるようになったらしく、おかげで焼くことが出来た。
「そろそろみんな食べ終わったかな」
山積みになっていたコボルトの身体は骨すら残っていない。みんなが食べきったのだ。
すると、ホブゴブリン以外の仲間の身体に変化が表れ始める。
「始まったみたいだぜ」
淡い光に包まれ、身体の構造が変わっていく。
あるものは身体が大きくなり、あるものは身体が丈夫になった。
光がなくなると進化をし終え、新たな身体を手に入れた仲間たちが佇む。
「少し大きくなったから、移動が楽になるなー」
その言葉を発したのは元スライム。進化した結果、ビッグスライムとなった。
「少し大きくなった」と言っているが、リュウトの腰くらいのサイズになっているため、元の何倍も大きくなっている。
声は中性的。
「進化したけど、みんなの役に立てるかな・・・」
次に言葉を発したのは元レッサーウルフ。進化した結果、シルバーウルフとなった。
身体の大きさは変わっていないが、毛色が銀色になっている。
少年のような声だった。
「新しい身体で空を飛びたい!」
次は元レッサースモールドラゴン。進化してスモールドラゴンとなった。
一回り大きくなり、洞窟の通路を通るには少し窮屈。
活発な女の子のような声をしている。
「勝手に行ってはダメですよ」
スモールドラゴンの言葉に反応したのは元ボーンバット。ブラッドバットに進化したことで、骨のみの身体から卒業した。
サイズはリュウトの頭ほどで、あまり変化はない。
クールなお姉さんのような声だった。
みんなが無事進化できたことにリュウトは大興奮していた。
「凄いな!みんなカッコ良くなってるよ!」
そういって一体ずつ身体をなで始めた。
リュウトになでられて嫌な思いをする者はいない。寧ろ好ましく思っている。
「そうだ!せっかく話せるようになったことだし、みんなに名前を付けよう!」
今までは種族の名前で呼んできた。しかし進化によって種族が変わり、言葉も話せるようになったのだ。
これを機に、リュウトは仲間たちに名前を付けることにした。
数分悩んだ結果、次のような名前をつけた。
アレス(ホブゴブリン)
ラピウス(ビッグスライム)
アクモ(シルバーウルフ)
ウラノ(スモールドラゴン)
タナ(ブラッドバット)
「みんな気に入ってくれたかな・・・?」
「まあまあだな」
「気に入ったよー」
「カッコいいと思う」
「私も良いと思うな!」
「すてきです」
「なら良かった。・・・それで突然なんだけど、別の場所に引っ越さないか?」
リュウト達が今いるのは、この世界にうまれたときの洞窟だ。
しかし通路の幅は狭く、洞窟内には食糧や水もない。
だからリュウトは、もっと広くて近くに水や食糧のある土地に引っ越しをしようと提案したのだ。
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