第5話 劣勢のコボルト戦

「良いぞ!ゴブリン、スライム!コボルトを確実に倒せてる!」


 洞窟の中は細い通路が入り組んでいる。

 人が一人通れるほどの幅しかないため、コボルトも1体ずつしか通れないのだ。

 そこでゴブリンがコボルトを抑え、スライムが1体ずつ確実に仕留めている。



 この時、レッサーウルフ、レッサースモールドラゴン、ボーンバットはコボルトの集団を挟みこむため、入り口近くで身を潜めていた。

 こうすることでコボルト達を逃がさないようにするのだ。


 30体ものコボルトの集団が予定の場所を通過した時、作戦を開始した。

 集団の背後から襲い掛かり、噛みつき始めたのだ。


「コボッ!!?」


 コボルトは一度に3体に襲われたため、成すすべがなかった。

 前にいるコボルトもスペースがないため、助けることは出来ない。

 次第に身体の肉が抉られていき、大量の血が溢れ出す。

 

 そして時間はかかったがコボルト1体を仕留めることに成功した。


 しかし休んでいる暇はない。

 1体を倒せば次の1体が襲い掛かってくる。


 生き残るために、必死に倒していった。



 必死に戦っているのはリュウト達も同じだ。

 すでに10体以上のコボルトを倒している。


「ゴブリン!交代しよう!俺が前に行く!」


 しかしゴブリンは動こうとはしなかった。

 言葉が通じていないわけではない。

 ゴブリンはリュウトの言葉を聞いたうえで、その提案を拒否したのだ。


 ゴブリンの表情は明るい。

 疲れはたまっているはずだが、戦いを楽しんでいる様子だった。


「ゴブリンは戦うのが好きなんだな・・・。よし!全滅させる勢いで頑張ってくれ!」


 もちろんゴブリンだけが頑張るのではなく、スライムもしっかりと仕留めていった。

 その様子を見ていたリュウトは、少し情けなく思っている。


(俺って、何の活躍もしてなくない?)


 そんなリュウトも動かざるを得ない時がやってくる。


「あ! ゴブリン!」


 今までコボルトを抑えていたゴブリンが倒されてしまったのだ。

 倒した相手はただのコボルトではない。

 一回りも大きいハイコボルトだ。

 

 コボルトを倒しきることのできないゴブリンでは、ハイコボルトの力に耐えきることなど出来るはずもなかった。


「今までゴブリンが頑張ってくれたんだ。俺がやらないと!・・・スライム、手伝ってくれ!」


 リュウトは倒れているコボルトから棍棒を2つ奪い、ハイコボルトに立ち向かった。

 スライムは顔にまとわりつき、邪魔をしてくれている。


「はあ!!」


 リュウト一人では、ハイコボルトの攻撃に到底耐えきれるわけはない。

 スライムがいるからこそ、ギリギリ耐えられている。


「これは・・・ヤバい・・・」


 何度も棍棒同士がぶつかり合っているが、一度もハイコボルトに当てることは出来ていない。

 反対にリュウトへは攻撃が当たっているため、いくつもあざをつくっている。


 何とか耐えていたリュウトとスライム。

 しかしついに、ハイコボルトの顔にまとわりついていたスライムも壁に叩きつけられてしまった。


「スライム!」


 スライムがいなければリュウトに勝ち目はない。

 攻撃力や防御力など、ハイコボルトに勝るものは何もないのだ。

 リュウトは絶体絶命のピンチといえる。


「・・・こんなにもあっさりと終わってしまうのか。・・・いや、諦めるな!・・・最期まで抗ってやる!」


 無理やり自分を奮い立たせて、ハイコボルトの前に立つ。

 しかし恐怖から足は震え、棍棒を持つ手には無駄な力が入っている。


 そんなリュウトの様子を見たハイコボルトは勝ちを確信したのか、先ほどよりも雑な攻撃を仕掛けてきた。

 スライムがいたときにはやらなかった大ぶりな攻撃や、力のこもっていない攻撃などだ。


 ハイコボルトは遊んでいた。


 だからといってリュウトに攻撃が防げるわけでもない。

 なめられていることは分かっても、どうしようもなかったのだ。


「ぐはっ・・・!」


 しばらくするとハイコボルトも攻撃する事に飽き、仕留めにかかってきた。

 その攻撃によって、洞窟通路の天井に打ち付けられる。


 ハイコボルトは、重力によって地面に落ちてきたリュウトを見下し、最後の攻撃をするために振りかぶった。

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