第4話 大森林の異変

「あの数はさすがにまずい・・・!急いで逃げよう!」


 ゴブリンは戦いたそうにしているが、洞窟で苦戦したことを思い出し、渋々逃げることを選択した。


 コボルトたちとは少し距離が離れていたため、すぐに追いつかれることはない。

 ただ全力で走らないとすぐに追いつかれてしまうため、必死に洞窟まで逃げた。


「急いで洞窟の中に隠れるんだ!」


 洞窟の入り口はかなりの広さがあり、隠れられない。

 しかし少し中に入ると、人が一人通れるほどの細く入り組んだ道になっているため、隠れるには持って来いなのだ。


 リュウト達は出来るだけ奥に進んでいき、距離を取っている。

 コボルト達は洞窟の入り口まではしっかりと付いてきていたが、距離ができるとリュウト達を見失っていた。


 コボルト達が追ってこない事を確認したリュウト達は、横たわって荒れた呼吸を整えている。


「はあ、はあ・・・何とか逃げられたな・・・」


 束の間の休息だが安心することは出来ない。

 コボルト達は今も探している。


(どうやって倒せばいいんだ・・・)


・・・


 リュウト達がいる洞窟から北に行くと、ヒトの暮らすヒューリッテ王国がある。世界に存在している唯一のヒトの国だ。


 玉座に座るヒューリッテ国王のもとへは、悪魔の動向や近隣地域などに関するニュースが息つく間もなく入ってくる。

 ただ全てに目を通している時間は無いので、宰相が簡潔にまとめたものを伝えていた。


「悪魔に関する情報は以上です」

「また動き出したみたいだな。近頃は落ち着いていたと思っていたんだが・・・」


 ヒューリッテ王の歳は70。

 かなり高齢であるが筋肉質で威厳がある。


 宰相もヒューリッテ王とほぼ同じ歳ではあるが、文官という事もあり年相応の見た目だ。


「これと関連しているか分かりませんが、南の大森林で魔物の動きが活発になっているようです」

「ほう・・・」


 このヒューリッテ王国の南には広大な森林が存在している。

 南に行けば行くほど危険度が増していき、最南端は悪魔も近づかないほど危険な区域だ。

 ただ今回、宰相が報告したのは比較的浅い部分であるため危険度はそれほど高くない。


「最近では森の外でワイルドボアが確認されています」

「今まで森の中でしか確認されていなかった魔物だな」

「冒険者たちの話では森の中でゴブリンが異常発生し、住みかを奪われた魔物たちが移動しているとのことです」

「悪魔との関係がなかったとしても、そのままにしておけばスタンピードが起きる可能性もある。これはA級以上に対処させろ」


 ヒューリッテ王国には、魔物の討伐や素材集めと言った仕事を生業とする冒険者がいる。

 E、D、C、B、A、Sでランク分けがされており、力や実績等によって決められる。

 C級になれば一人前。

 S級にもなると規格外の強さから人外といわれる。


「おっしゃる通り高ランクの冒険者に任せたいのですが、悪魔関連の依頼が立て込んでいましてすぐに動けるものがおりません。現状は森から出てきた魔物に対処するしか・・・」

「根本的な解決は出来そうにないか・・・」


 ヒューリッテ王は席を立ち、南の方角が見える窓から外を見る。

 距離が離れているため森を見ることは出来ないが、森の近くにある町を考えていた。

 その表情はかなり険しく、眉間にしわが寄っている。


・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る