第3話 リュウトの食糧調達

 命が尽きた魔物の体内には魔石が入っている。ヒトでいう心臓のようなものだ。

 魔物は肉を食べたり草を食べたりすることでも力をつけることは出来るが、最も効率がいいのは魔石を食べることである。

 だからリュウトの仲間たちは、一心不乱にコボルトの魔石を食べていた。

 レッサースモールドラゴンとウルフはコボルトの肉まで食べ、スライムは一体を丸ごと溶かして吸収している。


 それを見ていたリュウトのお腹が鳴った。


「俺も何か食べたいな・・・。さっきの戦闘で疲れたし・・・」


 リュウトの考えを理解したレッサーウルフは、目の前にあるコボルトの肉とリュウトを交互に見る。

 レッサーウルフもお腹がすいているため食べたいが、リュウトに分けてあげようか迷っているのだ。


 結局分けることにしたレッサーウルフは、リュウトのためにコボルトの肉を分けてきた。


「俺に分けてくれるのか?ありがとうな!」


 リュウトはレッサーウルフの優しさを感じ、頭をなでた。

 それが気持ちよかったレッサーウルフの表情がやわらかくなっている。


 コボルトの肉を分けてもらったリュウトだったが、さすがに食べる気にはならなかった。

 火が通っているわけでもないし、少し臭いのだ。

 だからもらった肉はレッサーウルフに返した。


「でも俺は食べられないや。気持ちだけ受け取るよ」


 レッサーウルフは「どうして?」という表情を見せていた。

 ただ肉は断られてしまったので、一目散に食べ始める。


(何か食べ物を探すために、洞窟の外に出ないとだめだな。喉も乾いたし)


 コボルトを食べ終えた一行は、リュウトの食べ物を探すために外に出ることとなった。


 その日はとても天気が良く、春のような心地よさがあった。

 洞窟の周囲は木々に囲まれていて視界は悪いが、時折吹き抜ける風は気持ちいい。


「とりあえずはみんなで行動しよう。そこまで危険じゃなかったら、そのうち各自で動くようにするからさ」


 レッサースモールドラゴンは空が飛べることもあって、好き勝手に飛んでいきたがっている。

 しかしリュウトの考えも理解できるため、一緒に行動することを選んだ。


「安心して食べられるのは、木の上になっている果実かな。あとは魚とか?いるか分からないけど」


 レッサースモールドラゴンとボーンバットは空から川水辺を探し、リュウトとゴブリン、レッサーウルフは木の実を探す。

 スライムはというと、レッサーウルフの背中で眠っていた。



 10分くらい時間が経ったところでボーンバットが川を見つけたため、みんなはそこを目指して歩いている。


「何個か果物があって良かった」


 リュウトは柑橘系の果物を食べながら歩いていた。

 その果物は少し酸味が強いため、甘いというほどではない。

 ただお腹の好いていたリュウトにとっては格別の食べ物だ。


 川につくと先に来ていたレッサースモールドラゴンとボーンバットが水を飲んでいた。


「かなり綺麗な川だ!魚もいるし!」


 リュウトものどの渇きを潤すために、川に頭を突っ込んで水を飲んだ。


「上手い!!生き返るな~」


 水は冷たくなっており、臭みも全くない。

 リュウトの疲れた体に染みわたっている。


「あとは魚を手に入れるだけだ!」


 釣り竿のような道具は無い。

 そのためリュウト達は手づかみで魚を獲る。

 

 魚の動きはそれなりに早いが、レッサーウルフの方が素早い。

 だから何匹もの魚を捕まえている。

 また、レッサーウルフのステータスが加算されているリュウトも魚より素早いため、簡単に獲っていた。


 みんなで魚を20匹近く捕まえることができ、十分な量となった。


「捕まえたはいいけど、どうやって運ぼうか・・・。ん?」


 リュウトが運び方を悩んでいると、スライムの考えが伝わってきた。

 どうやらスライムの体内にしまっておけるらしい。


「それができるなら助かる!じゃあ頼んだ!」


 スライムは魚を飲み込み、半透明な体の中で魚が漂っている。


「食べるものを手に入れたことだし、帰ろうか」


 そういって帰ろうと考えたとき、川の対岸にある草が揺れ始めた。


「何だ?」


 すると草の中から、コボルトの集団が現れた。

 洞窟のときよりも数が多く30体ほどいる。

 中には通常よりも大きいハイコボルトもいた。

 ハイコボルトが一団を指揮しているようだ。


「あの数はさすがにまずい・・・!急いで逃げよう!」

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