機神創生(四)
一条一坊の北のあたり、平城宮のすぐ北に位置し、坊の半分――
――トンテンカン、トンテンカン。
槌の音も響き渡り、既に出来上がっている建物には人が出入りしていた。新たな城壁の内側には、中央奥に社殿があり、社殿の前には朱塗の大鳥居が建てられている。それを見る限り神社にも見える和風建築で、その周りに並ぶ建物は唐風建築と一見異様に見える。それらには
社殿の前は四方から階段状に地面を窪ませて、
「最早、後には引けなくなりましたね……」
「
「いや、そういうことではなく……」
「親王殿下のご期待の程が分かるというもの」
「それに困っているのですけどね」
「貴殿は元皇族故、そこまでお困りでもありますまい」
「……そうでもないのですよ?」
「
「ええ、
首を竦めて阿弥陀の顔をみる。阿弥陀は笑顔のままだ。二人の歳は親子ほど離れてはいるが、専門が違えど学術の徒同士、心の通うものもあるのだろう、まるで二十年来の親友のような付き合いをしていた。
「まぁ、あれだけ平素から書に埋もれていればそうもなりましょうなぁ」
「
慌てて咳払いをする
「それにしても、
「『
この『臣連伴造国造百八十部幷公民等本記』は大和朝廷に仕えた豪族ら臣・連・伴造・国造と百八十部におよぶ公民らの出自や伝承を蒐めて
「当然『
「なれば、残るは伝承の類を調べるしかないかも知れませぬな」
阿弥陀が至極真面目な顔で言うのが
「そういえば
「……流石は佐伯殿。やはり此方に残っていただきたかったですな」
同感とばかりに
大宝律令によって律令制が定められたことで、全国の神社も
「そうか地祇を調べるのがよいか」
元々国津神は
闇に閉ざされていた所に、一条の光が差した心持ちである。先に完成していた社殿の地下では、蝦夷らの鎧――
今後は神祗官にも協力を仰ぎたいところではあるが、彼らと
「
「ここに居る。如何した?」
「あ〜、良かった〜。著作佐郎様に親王殿下より使いが参っております」
「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます