機神創生(三)
当時は
寝殿には
「よう参られた」
「
「此処は私邸ぞ、堅苦しい挨拶はよい。お主らも聴いてみんか? 普段おとなしい学者らが大声で議論するなど、なかなか面白い」
上品な笑いを向けながら、二人を手招きして坐るよう招く。
「だから! どうやってそれを証明するんですか!」
「それよりもこの骸――
「名前より『動かすところを見せよ』との
骸は
「いやはや、博士らや
「面白かろう? そろそろ、話が一巡したようではあるが」
聞けば三日も前から此処に集まって連日この有様だという。流石に
「まずは名を定めよ。名が定まれば自ずと字も定まろう」
「
「名を定めるにはこれがどういうものかを定義せねば」
「
「いや、蝦夷の勇者が着る鎧では?」
「神の依代に似るか」
「
それぞれが思うがままに言い出す。
「――神がかった『からくり』。神
全員の声が止まった。声を発した
「それだ!」
全員の意見が一致した。学者らの声は当て
「大変失礼いたしました」
「佐伯殿もいらしたか」
「
「
武人らしい笑い飛ばす。凍りついた場の空気を一瞬にして掻き消すほどの笑い声であった。つられて
「大野按察使は佐伯阿良太を陸奥に連れていきたいのだな?」
二人の親しげな様子を見ていた舎人皇子は東人の考えを察したのか、両人の意思を確認した。恐縮しながらも拱手する東人。佐伯阿良太は手を着いて首肯している。この人事は長屋王の機嫌を損ねぬと考えた舎人皇子は
「
言葉を紐解くように、
「からくりを宛てた一字とは『機』のことか?」
「私たちはこれの構えも造りも分かりませんが、これが人が操るものであることだけは知っております。故に『機』の字を『くり』と読ませ、神を補い『
これには三宅兄弟もほぅと感嘆の声を挙げた。
「なるほどのぅ。機神と書いて『クリガミ』か。良いではないか。明日にも早速、お上に奏上しようぞ!」
「
「
「良い大和名にございますな」
口々に『クリガミ』を何度も何度も呟いた。誰も違和感がないようだった。絡繰の語源に遡って言葉を紐解き、漢字の
「
「三宅殿、からかってくれるな……」
著作とは
そのことを阿倍粳蟲が後悔するのは、まだ大分先の話である。
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