第34話 国王とフィオナ


フィオナが火球を国王に浴びせるように放つと、国王はそれらを次元を歪めるように他の場所へと転送させて、それらはフィオナの部屋の全方位にあたり、部屋をぐちゃぐちゃにした。


「やりますね。でもこれはどうです!」


そう言ったのはオニキスだった。

オニキスは鳥籠の様な檻を出現させ、国王を捕らえようとした。

だが国王はまた次元を捻じ曲げてその檻をオニキスの方へ跳ね返しオニキスはそれをなんとか避けたが、服は少し破けた。


「行くぞラピス!」


「OKエメラルド!」


そう言ってエメラルドとラピスが国王に休む暇を与えないよう飛び出し、植物と水の魔法で国王をオニキス同様捕らえようとした。

しかし国王はツルで縛ろうとしたエメラルドを縛り、水の魔法でドウムを作ったラピスをあらぬ方へ吹っ飛ばした。


「父上!ご覚悟!」


再び王子が国王に氷の魔法を使った。

それはラピスの作ったドウムを凍らせ、その中に国王を閉じ込めた。


「これでワシを捕まえたつもりか?ワシはこの国一番の魔法使いだ。この程度の魔法…!?」


フィオナが上の部分の氷を大量に溶かすと、国王は一瞬気づくのが遅れ、金魚鉢のようなドウムの中で溺れた。


「殺しはしないわ。ただ罪を償ってもらうわよ」


フィオナがそう言うと、国王は残っている力で、フィオナを違う次元に飛ばそうとした。

物凄い風が、全てを吸い込むかの如く吹き荒れ皆吸い込まれそうになった。


「フィオナ!」


王子が駆け寄りフィオナを抱きしめると、国王は驚きながらすぐに次元の隙間を閉じた。


「助かった…?」


柱に掴まっていたラピスがそう言うと、エメラルドもキョトンとした顔をしてから頷いた。


「やっぱり…国王も親だったって事かしら…?」


「父上…。」


水中から出され眠っている国王の方を見ながら、フィオナと王子は強く抱き合った。


***


兵団と騎士団の戦闘が開始しようかという時、伝令が両者の間に馬を走らせ、戦闘をはばんだ。


「伝令!伝令!先ほど王宮で国王が拘束され、王太子と王太子妃様が即位され、兵団も騎士団もただちに戦闘をやめるよう王名をくだされた!それとジャスパー将軍はすみやかに投降せよとのこと!以上です!」


それを聞いて、そこにいた者は皆武器を納め、ジャスパーは座っていた馬車で、倒れそうなほど愕然とし、ショックを受けていた。

セレスタイトは剣を鞘に納めながら、天を仰ぎ笑った。


「やりましたね…王太子妃様」


風をかんじながら、セレスタイトは髪をなびかせていた。


***


その後…国王とジャスパー、スピネルは牢獄に入り、一生出て来れない事が決まった。

兵団は解体され、悪さをしていた者達も咎められる事となった。

フィオナの住んでいた離宮は開放され、ジルコン伯爵とオブシディアンが身寄りのない子供達を受け入れている。

シトリンは領内の人々やダネル達と共にドラゴンの世話をしている。

最近ドラゴンが卵を産んで大騒ぎになったとのことだ。

キーラはなんと騎士団に入団した。

今、セレスタイトがしごきにしごいているらしい。

コンウェナは成長して侍女長となり毎日忙しくしている。

ラリマーは呪いと戦いながら解く方法を探して旅に出た。

たまに珍しい物を送ってくれている。

そのラリマーを刺してしまったフランは自ら出頭し、娘を弔いながら罪を償っている。

ラピスは、なんとエメラルドと結婚した。

お祝いは仲間内だけでやり、皆で祝福した。

フィオナとブルー・ゴールド国王は即位後すぐに改革を進めて、不正の蔓延らない世の中へと前進し続けている。

そして、更に嬉しい事が起こっていた。


「よしよし、いい子ですねー。」


「お父さん、お母さんですよー。わかるかな?」


フィオナは赤ん坊を抱き抱えながら、ブルーと共に赤ん坊をあやしていた。

そう二人に新しい命が誕生していたのだ。

カラカラ鳴るあやし器具であやしながら、ブルーは楽しそうに言った。


「ベイビー、君の名前を考えているんだが、中々決められないよ。どうしようかフィオナ?」


「ピンクでいいんじゃない?女の子だし」


「ピンク・ゴールド王女か…いいじゃないか!早速国中に発表しないと!」


そう言ってブルーがいそいそと部屋を出て行くと、フィオナは苦笑した。

その後、王妃となったフィオナは、その行動力で国を正しい道へ道ぴいて行く。

しかしそれはまた別の話である。


完。



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鳥妃 雪兎 @yukito0219

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