第33話 ドラゴン作戦
国王とそれに従う者達でフィオナの離宮を囲むと、国王が言った。
「王太子妃!聞こえているな!今なら他の者達を反逆の罪にとわない!降伏しろ!」
国王の呼びかけに、フィオナ達はただ沈黙した。
それを見て国王は言った。
「いいだろう!警告はしたぞ!皆かかれ!」
国王がそう言うと、従う者達が離宮の門を開き雪崩れ込んで行こうとしたが行けなかった。
そこにはドラゴンが、入り口を塞ぐように佇んでいたのだ。
「何だこれは!?」
皆、驚いている間にドラゴンの炎で何人か吹き飛ばされた。
「陛下!これは…!」
「厄介だ…私は一人で先に行く、あとは頼んだぞ」
「はっ!」
国王は従う者達を残し、離宮の階段を駆け上がって行った。
***
その頃、騎士団の弾圧を任されたジャスパーは兵団を従えて騎士団の駐屯地に向かっていた。
「ジャスパー様、どうやら駐屯地にスピネル様も捕まっているようです」
「スピネルか…そんな奴の事は忘れた。それよりどうセレスタイトを降伏させるか、それだけが問題だ」
ジャスパーは馬車の中でそう言うと、見えて来た駐屯地を窓から確認した。
駐屯地は綺麗に整備されており、警備も万全で関係者以外ネズミ一匹入れないといった感じであった。
そこへ到着すると、すぐに騎士団の者達が出て来て兵団と睨み合いを始めた。
「お前達を国王は反逆者とみなした!降伏しろ!さもなくば血を流す事になるぞ!」
ジャスパーがそう言うと、セレスタイトが出て来て言った。
「我々は王太子様と王太子妃様に密命を受けている!例え国王陛下の命令でもここを動く事はない!」
「やむを得んな…そっちがその気ならこちらも武力行使させてもらう!覚悟しろ!」
ジャスパーはそう言うと、杖を取りそれをゆっくり騎士団の方に下ろした。
「かかれ!」
その合図を皮切りに戦闘が開始された。
…神よ、どうか我らをお守り下さい。
セレスタイトは城の方を見ながら、そう思っていた。
***
国王がフィオナの部屋まで上がって来ると、フィオナは仮面もつけずに、一人紅茶を飲んでいた。
「王太子妃…だな?」
「陛下、遅かったですね。紅茶はいかがです?」
「…頂こう」
国王はフィオナの向かい側に座ると、フィオナの入れた紅茶を口にした。
「なぜ邪魔をする?ワシはただ末長くこの国をおさめたい…それだけなのだが」
「そのために犠牲を伴いながら不老不死を?」
「全てはこの国のためだ。息子もわかってくれると思っていたが…。」
奥の部屋から王子が現れると、国王はそう言って同意を得ようとした。
しかし王子は俯き国王から顔を背けるとゆっくり目を閉じて言った。
「父上に今までしたがってきました。しかし犠牲者を出しながら不老不死を得るなど…到底擁護出来ません」
「息子よ、この国は今乱れているのを憂いていたではないか。だからこそ不滅の指導者が必要なのだ。ワシならば国民を導いていける。まだまだやり残した事がいっぱいあるのだ…。ゴホ…ゴホ…!」
国王は咳き込むと、そのままハンカチの上に吐血した。
「やはり…お悪いのですね陛下」
フィオナがそう言うと、国王は静かに頷いた。
「…ワシは死なん。必ず不老不死となり、この国を変えてみせる!」
国王が杖を取り、金色の杖が光ると、フィオナも耳飾りの杖を大きくし手に持って構えた。
「陛下!不本意ですが数で勝負させてもらいます!」
フィオナがそう言ったかと思うと、仲間達が続々と現れ国王を囲んだ。
「何人がかりでも結果は変わらん!かかって来るがいい!」
国王がそう言うと、ラピスは圧倒されながら笑い、言った。
「なるほど圧が半端ねぇな!これが国王の威厳か!?」
「大丈夫!手筈通りやるわよ!」
その場のフィオナ、ラピス、オニキス、エメラルド、そして王子は、皆杖を構え、他の者達は下の部屋で子供達と避難していた。
「父上!参ります!」
そう言うと王子が、氷の魔法で国王めがけて氷のツブテを飛ばすと、国王は空間魔法でそれをマジックのように自分を透明にして受け流し、そのツブテがフィオナに向かうように仕向けた。
だがフィオナはそれを見越していて、氷のツブテの上を二段ほど駆け上がると、国王の真上から火球を浴びせた。
その火球が迫って来るのを、国王は少し驚きながら笑った。
まだ戦闘は始まったばかりだ。
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