第32話 宮殿にて
宮殿はエメラルド達がクーデターを起こした形となり、大騒ぎになっていた。
「国王陛下!王太子妃の使用人達が王子を匿ったと連絡が!」
「そうか…王太子妃は今どこだ?」
「さぁ…どこでしょう?」
使用人にそう答えられ、国王は頭を押さえながら、椅子に座った。
「国王陛下!」
「今度はなんだ?」
国王がそう尋ねると、使用人がまた報告した。
「以前調べるように言われた王子の交友関係ですが、王太子妃と出会ってからその友人や教師、兵団と対立している騎士団のセレスタイトなどと交友が深いようです!」
「なるほど、やはりあの王太子妃か。ワシに喧嘩をうるとは、いい度胸だ。ジャスパーを呼べ!ワシに歯向かうとどうなるか思い知らせるのだ!」
「はっ!」
国王にそう言われて、使用人達は王太子妃の宮殿の方へと向かって行った。
***
「国王陛下!」
「どうした?」
「スピネルがセレスタイトとその仲間と思われる男女に捕まったとの事です!」
「何…?」
これには国王も、怪訝な顔をして言った。
「使えない奴だ…。もっと利口だと思っていたが…仕方がない、ワシの部下をいかせよう」
「それがですね陛下…。そのセレスタイトと男女は王太子妃の宮殿に入って行ったそうで…。」
「それは本当か?」
使用人が報告する中、ジャスパーがそう言いながら入ってくると、ジャスパーに国王は言った。
「遅かったなジャスパー。」
「遅れて申し訳ございません。それでそのセレスタイトと一緒にいた男女の女の方ですが、王太子妃はお忍びで学校に通っていたとの情報がありましたので、もしや…と思いまして」
「なるほど…つくづく王太子妃はワシにたてつきたいらしい」
国王はそう言うと、杖を取り、マントを着けると、言った。
「これより反逆者どもを排除する。ジャスパーお前に騎士団は任せる。ワシは王太子妃に用がある。この国一番の魔法使いを怒らせるとどうなるか、目に物を見せてやる。皆ワシに続け!」
そう国王が言うと、宮殿にいる者達と共に国王はフィオナの離宮へと向かった。
「さて、どうなるか見ものだな」
ジャスパーはそう言うと、兵団を連れて騎士団を殲滅に向かった。
***
その頃フィオナの寝所のある離宮では、怯える子供達を避難させながら、フィオナ達は作戦会議をしていた。
「多分私の正体もバレるのは時間の問題か、すでにバレていると思うわ」
「そうだな、問題はこの国一番の魔法使いを敵に回してるって事だ。どうする?勝算はあるか?」
ラピスの言葉に皆口ごもる中、学校からついて来たオニキスが口を開いた。
「皆、恐るな。相手は百戦錬磨の魔法使いというが、負けた事が無い分そこに隙が生まれる。そこをつくというのはどうだ?」
「…先生、具体的に何をすれば?」
フィオナが尋ねると、オニキスは具体的に話し始めた。
「まず国王付きの者達を排除する。それは誰か一人でやらねばならない。国王を一人にできたら、次は国王の余裕を奪い、切迫させる。そのためにはただ攻撃するのではダメだ。順番に攻撃し、相手の自由を奪う、王子もいいな?」
王子が不安そうに座っているのを見て、フィオナが肩に手をやり、そのまま頬を王子の肩にくっつけた。
「戦わなければならないのはわかっています。しかし父上が負けるところを見た事が無いのです…!あんなに力のある人は他にいません。今速攻で考えた作戦で上手く行くでしょうか。それに一人で付き人を相手にするなど出来るわけありません。考えてもらっているのに失礼ですが、考え直した方がいいのでは?」
王子がそう言うと、その場に沈黙が流れた。
しかしその時、窓の外から何か大きな影が横切ったのがわかった。
「あれはドラゴンと…シトリン!?」
「王太子妃様ー!」
シトリンがドラゴンに乗りながら手を振ると、フィオナもかなり固くなりながら手を振り返した。
「聖水、いり用かと思いましたのでお届けに上がりました…どうかなされたのですか?」
「いや…いろんな意味でついて行けなくて…。」
シトリンはドラゴンから降りそのままバルコニーから宮殿に入って来ると、皆少し引いていた。
「聖水を届けてくれるのはいいとして…何でドラゴンに乗って来た?そんなに仲良くなったのかドラゴンと?」
ラピスがそう尋ねると、シトリンは礼儀正しく答えた。
「こんなにいいドラゴンは居ませんよ?この子とても素直ないい子なんです。皆さんもお乗りになります?」
「それどころじゃないのよ!実は…。」
真剣なフィオナ達の顔を見て、シトリンはフィオナの話に耳を傾けた。
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