第31話 交戦


見張りに気づいた王子は、なんとかその場から脱出しようと部屋を眺めてみた。

そして窓に手をかけ指輪から杖を取り出すと、外にも見張りがいるのに気づいて部屋の内側に戻った。


…参ったな、隙がない。こうもがんじがらめにされると笑えてくる。


そう思いクスリと笑うと、今度はフィオナ達の心配をし始めた。


…無事に学校に行けていたらいいのだが…もしかしたら父上やジャスパーの手先に!?


そう思うと居ても立っても居られず、やはり窓から飛び出した。


「王子!お待ちを!」


杖に乗って行こうとした王子を止めたのはエメラルドだった。


「この宮殿内は私達が制圧しました!有事にはそうするようにとフィオナ様のご命令です!」


「フィオナの…ではフィオナは無事なのか!?」


「ただ今スピネルと抗戦中との事です。セレスタイトもついていますので大丈夫だとは思いますが…。」


「そうか…わかったありがとう」


そう言って居ても立っても居られない王子がまた窓から出て行こうとすると、エメラルドがまた王子にしがみついて止めた。


「離してくれ!僕のフィオナが危ないんだ!」


「現場は大変危険です!王子を行かせるわけには…!」


そこへ他のフィオナの使用人達が集まって来て王子を止めた。


「離してくれー!フィオナー!」


王子の心配は切実だった。


***


一方フィオナ達は未だに交戦中だった。

セレスタイトが前に出て戦い、そのフォローをフィオナとラピスがしていた。


「くそっ!相手は三人だぞ!?何をぐずぐずしている!?」


「そうは言ってもスピネル様、奴ら只者じゃありませんよ!?高等魔法を使ってくる上に、息もピッタリで隙がありません!」


そう言う兵士をスピネルは杖で殴りつけた。


「あんな奴らに手も足も出ないとは!…こうなったら私が相手してやる!」


スピネルはそう言うと、魔法でトラクターの様な物を出し、それに乗り込むと言った。


「これでひき殺してやる!覚悟しろ!」


スピネルがものすごい勢いで向かってくると、三人は横に飛び、大事には至らなかったが、何人かの兵士は巻き込まれた。


「そんな…自分の味方を…!」


「なんて奴!負けるわけにはいかないわ!必ず捉えましょう!」


少しショックを受けていたセレスタイトにそう言うと、フィオナはラピスと共に杖をスピネルに向けた。

それを見てセレスタイトも立ち上がり、三人でスピネルに立ちはだかった。


「おやちょうどいい、命知らずで助かった。まとめてあの世に送ってやる!」


トラクターの様な乗り物で、スピネルが向かってくると、まずラピスが乗り物に水を嵐の様にふりかけ、その後にセレスタイトが剣に稲妻を纏わせ、それをスピネルの乗っている所の前に投げた。


「それで攻撃したつもりか!?」


トラクターの様な乗り物は、少しエンジンが狂い出したが、スピネルは構わず向かって来た。

それを見て今度はフィオナが火球を乗り物めがけて打ち込んだ。


「何!?」


火球があたり、エンジンに引火すると、スピネルの乗っている前方のところから爆発し、スピネルは放り出された。

スピネルは恐る恐る起き上がると、三人に囲まれた形となった。


「…それでは私はこの辺で…。」


踵を返し帰ろうとしたスピネルを、セレスタイトが取り押さえると、スピネルはギャーギャーわめき始めた。


「今までのは私の意思ではない!全部ジャスパー様に命じられて…!」


「味方の兵士達を殺したのもジャスパーの命令だと言うのか!?」


「そうは見えなかったがな〜、言い逃れは出来ねぇぜ、スピネルさんよ」


セレスタイトとラピスがそう言うと、スピネルは青い顔をした。


「スピネル、貴方を現行犯で拘束します。貴方の罪は重いですよ」


フィオナがそう言うと、スピネルは肩を落としてうなだれた。


「うるさいと思って来てみたら…なんだいこのありさまは?」


そう言ってオニキスが学校から出てくると、皆疲れが出たのかへたり込んだ。


「アンタ達、何があったかあとでしっかり話してもらうからね。その前に…。」


オニキスは壊れた民家や道をアッと言う間にもとに戻し、兵士達の遺体をリアカーに乗せた。


「敵であろうが味方であろうが亡くなったら皆同じだ。手厚く埋葬するぞ、お前達も手伝え」


「はい…。」


「…ちょっと待ってくれ!俺はどうなるんだ!?」


三人は苦笑いを浮かべると、スピネルを木に拘束したまま遺体を運んで行った。










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