第30話 父と子

「父上、お尋ねしてもよろしいですか?」


「あぁなんだ?言ってみろ」


談話室に移動した国王と王子は、椅子に座ると、国王がタバコを吸う中王子が言った。


「父上…なぜ罪人を無罪放免なされたのです?それと父上が不老不死の薬を開発しようとしていると噂されているそうですが、嘘ですよね?」


ストレートな王子の質問に、国王は思わず笑うと、王子に言った。


「何を言うかと思えば…。息子よ。なぜ私が不老不死になど着手しなければならない?私は元気だぞ?それにスピネルの事なら疑いがはれたからだ。奴が捕まったのは何かの間違いだったとジャスパーも言っていた。私を信じろ息子よ」


「…。」


少し安心したような、しかし笑顔に影を落とす王子に、国王は言った。


「一体どこからそんな話を聞いてきた?」


「…風の噂で…父上こそ、なぜそんな事をお尋ねに?」


「ほれ…王子の情報網に興味を持っただけの事だ。気にするな」


「…そうですか…。ありがとうございました父上」


王子は他には何も聞けないまま、その場を離れた。


「おい…誰かおるか?」


王子が去ったあと、国王が使用人を呼ぶと言った。


「ブルーを見張れ、それとブルーの交友関係を調べろ、よいな」


「はっ!」


使用人がそう言って出て行くと、国王は不老不死について上がっている報告書を、証拠が残らないように暖炉で燃やした。


***


次の日、フィオナがセレスタイトと登校していると、急に火の玉が二人を襲った。


「何!?なんなの一体!?」


フィオナがそう言うと、セレスタイトは猫から元の姿に戻り、フィオナを抱き抱えて民家の塀に隠れた。


「フィオナ様!おケガは!?」


「大丈夫よ!それより何者の仕業なの!?」


「わかりません。とりあえず様子を見ましょう」


そう言って塀の隙間から覗き込むと、スピネルが兵団の者を束ねて勝ち誇ったように二人に向かって言った。


「この前の借りを返させてもらうぞ女!安心しろ、寂しくないように男もすぐにあの世に送ってやる!」


そう言ってスピネルは魔導砲を二人のいる塀へ向けた。


「来るわよ!?」


「わかっています!」


セレスタイトが前に出て、魔導砲の玉を剣で切ると、エネルギー弾は割れて塀のある民家のスレスレの空き地へと着弾した。


「ふん!セレスタイトが関わっていたのは承知の上だ!仲良くあの世に行ってもらおうか!」


スピネルはそう言って今度は何発もエネルギー弾を発射した。

しかしそれをことごとく弾くか切り落とし、セレスタイトは息も上げずに乗り切った。


「おのれこしゃくな!」


スピネルは魔導砲を増やすと、それをセレスタイトとフィオナに向けて放った。

するとその時、水が噴水や家の水道などから流れ出て、エネルギー弾を包み込み無効にした。


「ラピス!?」


フィオナが魔法を見て瞬時にそう呼ぶと、ラピスが分かれ道から現れ、フィオナに言った。


「また派手に変なのに絡まれてんな?」


「目当ては私と貴方よラピス!私より来るのが早ければ、絡まれてたのは貴方だからね!」


「マジ?勘弁しろよ…。」


余裕で魔導砲を無視して話すフィオナとラピスに、腹の虫がおさまらないといった風にスピネルは言った。


「おのれ!我々をコケにしおって!構わん打て打てー!」


砲撃がまた始まると、セレスタイトがそのエネルギー弾全てを落とし、フィオナとラピスは二つある魔導砲に向けて炎と水を放ち、それぞれエネルギーチャージしている所に前から侵入させて破壊した。


「何!?」


魔導砲が壊れると、スピネルは驚きながらも、まだやる気満々に兵団の兵士達に言った。


「やつらの首を取って来い!仕留めた者には褒美を取らすぞ!」


兵団の兵士達が剣を抜き迫ってくると、セレスタイトが言った。


「ここは私にお任せください。お二人は学校の中へ…。」


「置いてなんて行けないわ!それにあいつらの狙いは私達なんだから離れたら逆に危険よ!守ってくれるんでしょう?」


フィオナの問いかけに、セレスタイトは笑顔で頷いた。


「とりあえず援護は任せてくれ、なるべく俺とフィオナの真ん中にいてくれたらやりやすい。頼んだぞ」


「わかりました!任せてください!」


セレスタイトは雷撃の魔法を唱えて、剣に雷を纏わせ、兵士達に切り掛かった。

フィオナとラピスは呪文を唱え、セレスタイトを援護した。


***


暖炉の前で本を静かに読んでいた王子は、人の気配がずっとしているのに気づいていた。


…見張られている?なぜ?


「父上…そう来るなら僕にも考えがらありますよ…。」


王子は本をパタンと閉じると、王子は見張りの数を確認し始めた







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