第27話 監獄


監獄は小高い丘の上に威圧感を醸し出しながら佇んでいた。

フィオナにラピス、オニキス、セレスタイト、ラリマー、キーラはその塀を見上げ、馬から降りた。


「ここに母さんが…。」


フィオナがそう言うと、キーラが逃げ出そうとしたため、フィオナは視線を監獄から外す事なく、キーラの服を掴んだ。


「わかったよわかりました!逃げないって!」


そう言うキーラの足はガクガク震えていた。


「凄い厳重な塀ね、よく脱獄出来たわねキーラ」


「まぁ…土が柔らかかったからいいクッションになってくれてな…。」


「キーラ、その手はどうしたの?」


ラリマーがキーラの手を見てそう言うと、キーラは紫色に変色した手の内側を隠した。


「これは…ここの林檎を収穫してると、自然とこの色になっちまうんだよ」


「ちょっとよく見せてみろ、どれどれ…。」


ラピスがキーラの手を見ると、キーラは苦笑した。


「毒だってのはわかってる。何人も仲間が死んじまったからな。治せないだろ?」


「やってみないとわからないだろ?」


ラピスが治癒魔法を唱えると、辺りは青い光に包まれた。

そして光が消えると、キーラの手は少し赤みをとりもどしていた。


「すげえ!何やっても効果が無かったのに!?」


「簡単な治癒魔法だ。アンタに教えるから後でまだ生きてる仲間に使ってやれ」


ラピスがそう言うと、キーラは真剣にラピスの魔法を学んでいた。


「それで、どこから侵入します?」


塀を見上げながらセレスタイトがそう言うと、ラリマーが手をぶんぶん振り回して言った。


「これくらいの壁ならいけるかもしれない」


「いける?何がですか?って…え!?」


ラリマーが呪詛がまだ残る腕を振るい、壁を壊すと、物凄い音と共に、壁に人が通れるほどの穴が空いた。


「…思い切りましたね」


「そうね、流石ラリマー」


セレスタイトとフィオナがそう言うと、ラリマーは少し恥ずかしそうに咳払いをし言った。


「行きましょう!お母様を助けるんでしょう!?」


「そうね、これだけ大きな穴あけたら監視してる兵団員が飛んでくるだろうし」


「まったくだ。もう少し静かに侵入する予定だったからな」


オニキスがそう言うと、ラリマーは少し申し訳なさそうに道を開けた。


「今の音は何だ!?」


「侵入者だー!」


当然のように兵団員が騒ぎ始めると、皆中に入り、毒林檎を収穫させられている人達を見渡した。


「結構人数いるわね」


「そうですね、王太子妃様。ここはオニキス先生とラリマーさんに任せて奥へ参りましょう」


セレスタイトがそう言うと、フィオナはキーラを先頭に立たせた。


「はいはい!わかりました!案内しますよ…。てゆーか何?王太子妃様って?」


「はいはい、いいから先へ進もうかー。」


キーラはラピスに背を押されて、道案内をさせられた。


***


「…一体なんの騒ぎだ?」


スピネルが兵士にそう尋ねると、兵士は敬礼し言った。


「ハッ!侵入者のようです!混乱に乗じて脱走する者も出ております!では急ぎますので!」


兵士がキビキビと去って行くと、スピネルは嫌な予感がしていた。


「タルタロスの時と似ている…あの時も突然だった。セレスタイトか…?いや、もっと得体の知れない…。」


スピネルは槍の様な杖を取ると、騒がしい方へと足を運んだ。


***


「母さんが居そうなのは本当にこっち?先が見えないけど!?」


「そこの壁を貫けば近道なんだ!俺は杖を持ってないから頼む!」


「もう!」


キーラに頼まれて、フィオナは魔法で壁を爆破するように破壊すると、火が一瞬で消えた。


「今のでまた兵士が来そうですね…。先に行っていてください。私はここでくい止めます」


セレスタイトがそう言って剣を抜くと、光の魔法で走ってくる兵士達の目をくらませた。


「お早く!」


兵士達の相手をしながら、セレスタイトがそう言った。


「わかったわ!頼んだわよセレスタイト!」


そう言うとフィオナはラピス、キーラと共に更に奥へと進んで行った。


***


「さぁ皆さん!ここから出られます!行った行った!」


「急いでください!立ち止まらないで!」


オニキスとラリマーが囚人達を誘導していると、兵士達がそれをくい止めようと二人に剣を振って火の玉をおこし攻撃してきた。

それを一振りでオニキスは抑え込むと、チリを払い、逃げている囚人を結界で守りながら言った。


「私は結界を張るので忙しいので、ラリマー、相手をして差し上げなさい」


「はい先生」


ラリマーはそう言うと、腕にグルグル巻きになっていた包帯を解いた。

そこにはびっしりと呪詛が描かれていた。













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