第24話 祝われる者
フィオナがラピスといったん別れて宮殿に戻ると、同じく帰って来たであろうコンウェナが小さく声を上げて何か箱を隠した。
「何?どうしたの?」
フィオナがそう言うと、コンウェナは観念したように箱を出し、フィオナに渡した。
「フィオナ様!この宮殿にいる子供達とエメラルド様にセレスタイト様、そして私からです!受け取って下さい!」
「これは…。」
箱を見ると、赤いヒールのついた靴が一足、中に入っていた。
「履くだけでダンスができるようになる魔法の靴です。フィオナ様に似合うと思って…。」
「ありがとう…コンウェナ、他のみんなもありがとうね」
遠目にその様子を見ていた子供達にもそう言うと、フィオナはみんなの目の前で靴を履いて見せた。
するとみんながどよめいた所でフィオナがタップダンスを踊って見せた。
「わぁ!凄い凄い!」
フィオナは少し複雑な心境だったが、みんなが祝ってくれているのを知って少し気は晴れていた。
「今日のお祝いの席にはこれを履かせてもらうわ。ダンスはするかわからないけどね」
フィオナが苦笑すると、子供達は自然と拍手し笑顔がこぼれた。
そんな中、ジルコン伯爵とオブシディアンは花束を持って現れ、フィオナにそれを渡した。
「ここに匿ってもらっているお礼もかねて、私達からささやかながら贈り物です。受け取って下さいますね?」
「そんないいのに…でもありがとう、好きなだけここにいてちょうだい」
花を受け取りながら、フィオナがそう言うと、ジルコン伯爵とオブシディアンは安堵したようなは笑みをこぼした。
そこへ、手を鳴らし、注目を集めた者がいた。
「さぁ、もういいかな?フィオナ、宴の時間が迫っている。準備して来ておくれ」
王子がそう言うと、フィオナはみんなに手を振りながら、エメラルドやコンウェナと共に自室へと入って行った。
***
その夜、フィオナの誕生日という事でささやかな宴が催された。
「王太子妃様、この度はお誕生日おめでとうございます」
そう言って現れたのはオニキス先生とラリマーだった。
「ありがとう…珍しい贈り物、感謝します」
オニキスとラリマーから贈られたのは、魔法の植物で表情豊かで威張っているような、鉢植えの花だった。
「上手に愛情を持って育てれば、いい事があるでしょう。王太子妃様に幸あらんことを」
オニキスはそう言い残すと、ラリマーと共に行ってしまった。
「いい事…?」
フィオナが覗き込むと、葉っぱでパシリと花はフィオナの頬を叩いた。
「…これは躾が必要ね」
フィオナがそう言い花を睨みつけると、花は萎縮しおとなしくなった。
「そういえばラピスから何も貰ってないわね」
そう思っていると、ラピスが正装をして、客人に混じって現れた。
「ごほん…王太子妃様、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう」
フィオナがそう言うと、ラピスは小さなイヤリングを箱を開けて見せた。
そして耳打ちしながら言った。
「その杖使い古してるだろ?変えがあってもいいと思ってな」
フィオナの普段らイヤリングの杖は、赤い宝石のついたものだが、それに花をあしらったようなデザインのイヤリングは、着けても杖として使っても良さそうだった。
「ありがとう、使わせてもらうわ」
フィオナがそう言うと、ラピスはすぐにその場を離れて行った。
王子が道を開けさせながらフィオナの側へと向かっていたからだ。
「我が妃よ、何を貰ったんだい?」
「そうね、みんな考えて贈ってくれたような物ばかりで気にいったわ」
「そうかい。じゃあこれも気にいってくれるといいんだけど」
そう言い王子が箱から取り出したのはペンダントだった。
そこへゴールド・シュタイン国王もやって来て言った。
「我が家に代々伝わるペンダントだ。開けると大切な者の顔が浮かび上がる。一家の一員として受け取ってくれるかね?」
「はい、もちろんです!」
フィオナが少し緊張しながらそう答えると、国王は柔らかく笑い手を叩いた。
「今日は王太子妃の誕生日だ!皆存分に飲んでくれ!」
国王がそう言うと、皆グラスを持ち乾杯した。
王子はフィオナの手を握ると、宴が盛り上がり周りがうるさい中、おめでとうと口を動かしてフィオナにわかるように伝えた。
フィオナもありがとうと口をパクパクしながら伝えた。
オニキスからもらった花が、その真ん中でノリノリでダンスをしていた。
それを見てフィオナも王子も、可笑しそうに笑っていた。
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