第17話 兵団の秘密
視察が終わり、王子が帰って行くと、フィオナはラピスとセレスタイトと合流した。
「まさか王子が来るとは…仲が良さそうで何よりだが、気を許し過ぎるなよ?」
「まぁラピスったら!わかってますよ!」
フィオナがプリプリしながらそう言うと、セレスタイトを抱き上げた。
猫のままのセレスタイトは少し頬を赤らめると、フィオナとラピスの頭に直接話しかけるように言った。
「王太子妃様…その…胸が…。」
フィオナの胸の谷間に挟まれる形となったセレスタイトが恥ずかしそうにそう言うと、二人はあまり気にした様子は無く、冷静に言った。
「まぁ減るもんじゃねーしいいだろフィオナ」
「そうね…ごめんね苦しかった?もう着くから我慢してちょうだい」
フィオナがそう言うと、セレスタイトは顔を赤くしながら頷いた。
三人が学校終わりに訪れたのは酒場だった。
フィオナとラピスが迷う事なく入って行くと、おろされたセレスタイトもそれに続いた。
「またお前らか…ガキに出す酒はねーぞ?」
「だから何も言わずにいつものフルーツジュース出してくれよマスター。どうせ客もいないんだし」
ラピスが調子良くそう言うと、マスターはため息をつきながら言った。
「あいよ…フルーツジュース二杯に猫ちゃんにはミルクな」
ドカンとビールジョッキで出されたフルーツジュースと平たい猫用の皿に入ったミルクを、セレスタイトはしげしげと見つめた。
「マスター、それで?また何かヤバい情報あるんだろ?」
ラピスがそう言うと、視線は自然とマスターに集まった。
マスターは咳払いをしながら、三人に顔を近づけると話し出した。
「いやな…兵団の若い兵士が話してるのを聞いちまったんだが、兵団はどうやら、秘密結社タルタロスと繋がりがあるらしい」
「タルタロス!?黒魔術で人を呪い殺したり、生贄を要求して願いを叶えたりしてるって噂だぞ!?」
「そう…そのヤバいのに兵団は関わりがあるらしいんだ」
黙って聞いていたフィオナはセレスタイトに視線を向けると、セレスタイトは頷いた。
「はい、本当かどうか部下に調べさせます」
頭に直接セレスタイトがそう話すと、フィオナは一つ頷いた。
「そのタルタロスが、最近小さい子供をさらっているって噂だ。うちの孫が被害にあわないといいが…。」
マスターはそう言うと、奥で寝ている小さい女の子に視線を向けた。
「小さい子供を…許せないわ」
静かに、しかし燃える様な目でフィオナがそう言うと、ラピスはやれやれといった顔でそれを見つめた。
「ジャスパー…いったい何を企んでいるのか知らないけど、潰させてもらうわ!」
「…いつも通り、力になるよ」
フィオナがジョッキを掴むと、ラピスもジョッキを手に取りフィオナのジョッキに押し当て乾杯した。
***
数日後の早朝、フィオナが庭園を走り抜けると、セレスタイトが猫の姿でまた待ち受けていた。
「フィオナ様。調べさせたところ、本当に兵団はタルタロスと繋がりがある事がわかりました」
「子供達をさらって何をしようとしているのかわかった?」
「はい…ジャスパー将軍は生贄を使った悪趣味な儀式に興味を示されていたとか…信じたくはありませんが複数の貴族が関与しているものと…。」
「本当…この国は病んでいるわ…。わかった、ご苦労だったわねセレスタイト」
セレスタイトはしっぽを揺らしながら、照れたように顔を洗った。
フィオナはタルタロスに何とか潜入出来ないかと考えていた。
***
「というわけなのです。オニキス先生、何かお知恵をおかし下さいませんか?」
「まったく…私の家にやって来たかと思えば…これだから最近の若者は」
そう言いながらも、オニキスはやって来たフィオナとラピスを座らせ、セレスタイトも猫の姿のまま参加させた。
「よいか皆、秘密結社タルタロスは地下に張り巡らせた基地を基盤に活動していると聞いた事がある。私の持つ真実の鏡ならば、タルタロスに出入りしているであろう兵団の者からどこが秘密結社の入り口かわらるであろう」
「なるほど…流石先生。潜入は何とか出来そうだな」
ラピスの言葉にフィオナも頷くと、フィオナは立ち上がり言った。
「潜入したらさらわれた子供の救出が最優先よ!変な儀式の生贄になんてさせないわ!」
フィオナとラピス、セレスタイトで円陣を組むと、静かに掛け声を上げた。
「やりましょう!私達で!」
その様子を見ていたオニキスはため息をつきながらやれやれと鏡を机に置いた。
その鏡は静かに光っていた。
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