第15話 戦友

「ラピス、紹介するわね?セレスタイトよ」


そうフィオナの胸に抱かれた子猫の姿のセレスタイトを見て、ラピスは目を点にしていた。


「セレスタイト?あの勇ましい騎士団長の?は?…どうしてこうなった!?」


そう言って勝手にショックをうけているラピスを見て、フィオナもセレスタイトも目を皿の様にして見ていた。


***


その後、猫のセレスタイトも加えて二人と一匹で昼食を学校の裏手の草原で食べながら、今後の事を話し合った。


「ねぇラピス、不正をやめさせるにはやっぱり法を変えなきゃだめかなって思うんだけど、何をどうすればいいかさっぱりわからないわ。どうすればいいと思う?」


「法を変える前に、政の勉強は必要だな。王太子妃なんだし実際に政に加わってみるといいかもしれないぞ。王子に言ってみるといい」


そう話すフィオナとラピスに、直接頭に話しかけるようにセレスタイトが言った。


「お二人は学生でお友達とおみうけしましたが、先程から、らしくない話をされていますね?どの様なご友人なのでしょう?」


セレスタイトの質問に、フィオナとラピスは含み笑いをすると、身を乗り出してセレスタイトに近づき言った。


「私達は戦友なのよ。この国から不正をなくして、より良い国にするための」


「戦友…。」


セレスタイトは少し考え込むと、二人に言った。


「素晴らしい考えですね。出来れば私も戦友に加えて頂く事は出来ますか?」


「そうね、そのつもりで今、話をしたのよ」


フィオナがそう言うと、セレスタイトは嬉しそうに笑った。


「では、私も仲間に入れてくれるのですね?」


「そうしてくれたらこっちも助かるよ。何てったって騎士団長様だもんな」


ラピスが手を差し出すと、セレスタイトも猫の手を出さして握手を交わした。


「同盟成立ね」


それを見ていたフィオナもラピスの次に握手を交わした。

セレスタイトは少し間を置いたあと、フィオナとラピスに何やら尋ねた。


「王子は同盟に加わってないのですか?」


その言葉にフィオナは一瞬固まると、寂しそうに言った。


「ブルーはダメよ…この国をこんな風にしたのは元はと言えば王家だもの」


寂しそうに弁当をかたずけるフィオナを見ながら、セレスタイトもラピスも黙った。

この国は貴族と平民の格差が激しく、犯罪も多い。

それを長い事見過ごして来たのは、他ならぬ王家だった。

フィオナは出来る事なら夫である王子を信じたいが、そう簡単な話では無いのが事実だった。


「ブルーの事、何にも信用してないって訳じゃないけど、今はダメよ」


フィオナがそう言うと、セレスタイトもラピスもその後、何も言わなかった。


***


その頃、ジャスパーはまたワインを片手に揺らしながら、スピネルと話していた。


「スピネルよ、王太子妃に相応の報いを受けさせるんじゃ無かったのか?」


「ジャスパー様…それがガードが固く、王太子妃に近づく事さえままなりません。騎士団側の侍女であろう少女を痛めつけるのもセレスタイトに阻まれましたし、うつ手が…。」


ジャスパーはワイングラスをスピネルに向けて叩き割るとスピネルは縮こまってしまった。


「おっ…お許し下さいジャスパー様!」


「ラリマーとかいう女や、他の背丈の似た女共に王太子妃を装わせて悪行の限りをつくさせたが、それもどうやら本物に無かったことにされつつある。むしろ善行を行ういい妃だと言う者までいる始末だ。中々しぶとい相手のようだな王太子妃は」


「はい…声以外我々に情報を与えない、謎の多い相手です。どうしたものかと…。」


スピネルが消えそうな声でそう言うと、ジャスパーは高笑いをした。

そして言った。


「何者でも構わない、私に従わないのであれば、退かせるまで…。」


そう言ってジャスパーは椅子に座った。

スピネルはそんなジャスパーに頭を下げると部屋を出て行った。


***


草原から学校へ戻って来たフィオナ達は何か騒がしいのに気がついた。

そして近くにいた学生に尋ねた。


「どうしたの?この騒ぎは何?」


「王子様が視察にいらしたんだよ。みんな大騒ぎさ」


「王子様が…。」


それを聞いてフィオナはこっそりその場を離れようとしたが、その姿は王子に見つかった。


「そこの君!君だよ君!校内の案内を頼めるかな?」


「はっ…はい」


…私に案内しろと!?


フィオナがそう思いぎこちなく王子を案内すると、ラピスとセレスタイトは温かい目でそれを見送った。
























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