第14話 セレスタイトとフィオナ


セレスタイトが兵団の者と剣を交える中、フィオナは考えていた。


…セレスタイト、騎士団の長と言うだけあってやっぱり強い。それにあの包容力、それだけでみんな集まってくるに違いないわ。


そんな事を思いながら、フィオナが座っていると、討伐を終えたセレスタイトがフィオナの前にひざまづいた。


「申し訳ありません、そうとわからぬよう護衛せよというご命令に背きこのような出しゃばった真似を…すべて私の不徳のいたすところであります。できる事ならその…王子にはご内密にして頂きたい、王太子妃様」


「やはり気づいていたのですね?私の身分に」


「はい…僭越ながら見守らせて頂いておりました」


…やっぱりめんどくさい。


兵団の者達が奥で転がっている中、そうとわからぬ様に変顔をし、フィオナはそう思っていた。


「どうかなさいましたか?」


「いえ…感謝します、セレスタイト。この事は思夫にはふせておきますので安心して下さい」


「はい…!」


そう言って顔を明るくするセレスタイトを見て、フィオナはまた変顔をするのだった。


***


その後、猫にまた姿を変えたセレスタイトに見送られると、フィオナはセレスタイトに言った。


「ご苦労様、明日も出来ればその姿でお願い。あまり目立たない事!いいわね!」


セレスタイトはしっぽをピンと立てると、わかったと首を一つ縦に振った。

そしてフィオナが宮殿に入って行くのを見送っていた。


***


フィオナが自室へ戻って来ると、部屋の中で王子が紅茶を飲みながら座って待っていた。


「お帰りフィオナ。今日はどうだった?」


「ブルー、どうだったじゃないわよ。猫に化けさせてたのら貴方の考え?」


フィオナがそう尋ねると、王子は首を傾げながら言った。


「おや?セレスタイトにはそうとわからないように護衛を任せたはずだが…?」


…しまった!


フィオナはそう思いながら、セレスタイトとの約束を思い出しあわあわと黙った。


「フィオナ…どういう事かな?」


「えぇっと…それはその…。」


王子の追求に、フィオナは縮こまりながら、帰り道であった事をあらいざらい話す事になった。


***


「ハハハ!それはフィオナもセレスタイトも大変だったね!」


「大変だったねじゃないわよ、兵団もいい迷惑だわ!」


紅茶を入れ直すフィオナを見ながら笑う王子にそう言いながら、フィオナは少しむくれていた。


「いい男だろセレスタイトは、僕の次に」


「はいはいそうですね。もう一度言っておくけど、くれぐれも言いつけを破った事を責めないであげてね?」


「責めるわけないだろう、大事な妃を守ってくれたのだから」


そう話す王子にフィオナはため息をつくと、王子はフィオナの頬に手をそえてきた。


「君が僕にとってどれだけ大事か考えた事あるかい?僕はセレスタイトが護衛についてくれて安心してるんだよ?」


「わかった…わかったからブルー。セレスタイトはこのまま護衛についててもらうわ。私もわがままだったって自覚してるから」


「よろしい!じゃあ僕は行くよ、謁見があってね…。」


「そう、お疲れ様。頑張って」


フィオナがそう言うと、王子は名残り惜しそうにフィオナの部屋から出て行った。


***


その数十分後、ブルー・ゴールド王子はジャスパー将軍と謁見していた。


「王子、私の兵団とセレスタイトが争ったという報告が上がっているのですが、騎士団を設立したご本人としてはどうなのです?是非とも意見をいただきたいものですな」


そう言うジャスパーの表情は笑っていても、目は笑っていなかった。


「そうですか…困りましたね」


王子はそう言うと、結婚指輪に触れながら言った。


「僕の聞いた話ではセレスタイトはあるお嬢さんを守っていたと聞きましたが?兵団にも何か不手際があったのではありませんか?」


王子の言葉に、ジャスパーは高笑いをすると、何でも無いと言わんばかりに言った。


「その様な事あったら大変ですよ。私は別に喧嘩を売りに来たのではありません。セレスタイト様も振る舞いに気をつけて頂きたいと言いに来たんです。いつどこで誰に足元をすくわれるかわかりませんからな」


そう笑うジャスパーを見て王子は思った。


…この様子だとセレスタイトもフィオナも何をされるかわからない。


「…わかりました。身の振り方には気をつけるように言っておきましょう」


「感謝します」


そう言ってジャスパーが出て行くと、王子は深く椅子に座りため息をついた。


***


翌日、元気よくフィオナが宮殿を出て庭園を駆けて行くと、猫に化けたセレスタイトが塀の上を走りながら並走した。


「おはようセレスタイト!今日もよろしくね!」


少し止まって降りて来たセレスタイトの頭を撫でながらそう言うと、セレスタイトは照れたように顔を洗いながらしっぽをゆらゆらと動かしていた。

















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