第12話:ゼロの脅威
「ふぅ。」
セラは間一髪のところで間に合ったことに、改めて安堵の息を漏らす。
その直後に13番隊のメンバー、と言ってもリューネとニアの二人が遅れて到着する。
――――――――――
少し前
「エマージェンシーコールは強制だから、あなた達とは此処で一度お別れね。」
下位13番隊隊長は三人の隊員に告げる。
エマージェンシーコールの強制力が彼らに突き付けられる。
「指示を出すわ。13番隊は12番隊と合流すること。現場の指揮は・・・ニア中位戦士、任せたわよ?」
「分かりました。」
アトラは最後に「死ぬんじゃないわよ」とだけ告げ、総指揮を執っていたガラナと共に現場へ飛んでいった。
「我々も急ぎましょう。」
ニアの声を皮切りにセラ達も、先の通信の際に12番隊の位置を登録した偵察ドローンと同期を行い走り出した。
――――――――――
僕は戦場の恐ろしさを目の当たりした。
偵察ドローンからアインが戦闘中の通知を受け、全速力で飛んで紙一重だった。
もし、一秒着くのが遅かったと考えると恐ろしくて逃避したくなる。
「セラ助かったぜ。流石の俺も今のはヒヤッとした。」
「任せてよ。」
友に胸を張ってみせるが、これが僕の精一杯の強がりだった。
ドローンの反応と辺りの様子を確認しアークを解く。
「アインさん、お疲れ様です。通信以降で何か変化はありましたか?」
「ニアさん大丈夫です!もうすぐ被災者を連れた本隊もきますよ。」
「分かりました。」
ニアは直ぐに情報の整理を始めようとしていた。
中位戦士の冷静さに、僕は改めて関心する。
「おい、セラ。ぼーっとするな。」
リューネに言われ意識が他所に向いていたのを修正する。
ここは戦場。忘れてはいけない。
頭を振って思考をリセットする。
「あ!アインー。それにセラ!13番隊の方々!来てくれたんですね!」
12番隊の本隊が近くまで来ていた。先頭を歩くミヤビが淡い青の髪を揺らし笑顔で手を振っていた。
その時。
ボンっ、ボンっ、ボンっ
彼らの上空で待機をしていたドローン三機が爆発した。木っ端微塵に破壊された。
残ったセラを此処まで案内したドローンがこれまでに聞いたことないほどの大音量で
思わずセラを始めとした新人戦士、避難途中の一般市民は耳を塞いでしまう。
「皆さん!警戒を!」
ニアが叫ぶ。常に冷静なニアの額に汗が流れる。
一番初めに回復したリューネがヤツを視界に捉えた。
「・・・なんだあいつ。」
それは空中で羽ばたいていた。
姿は甲虫の様ではあるが、頭らしき付近からはカマキリのような鎌を備えている。
大きさは人間の子供ほどで、これまで戦った星壊の獣と比べても小さい。
だが、これまでと大きく異なる点があった。
「黒い
回復したてのアインが言葉を漏らす。
これまで戦ってきた星壊の獣、ましてやセラとミルネが戦った一級相当の異形も一概なく黒い靄に実体が覆われていた。
しかし、彼らの前に浮かぶヤツは黒くはあるが靄を纏っていなかった。
ニアがこれまでになく大きく叫ぶ。
「皆さん!自分の命を守ることに全神経を集中させてください!一般市民は私が死守します!」
ヤツは地上で喚く者たちを嘲笑うかのように自前の鎌同士を叩きホバリングをする。
遂にニアが告げる。絶望の宣告を。
「ヤツは、この災害における三体目の0級です!」
星壊の獣は、その力を増すごとに知性と共に身体に溜める星壊エネルギーの濃度が上昇していく。そのため常に制御できない分の星壊エネルギーが漏れ出している。その漏れ出すエネルギー量で協会は強さの判断を行っている。
しかし、極まれに身体に溜める星壊エネルギーを全て扱い切ることのできる個体が誕生する。
それが0級の個体。漆黒の実体を持つ化け物である。
つまり、0級は星壊の獣の力が判断できる最後のラインであり、正確な強さが分からない。しかし、言えるのは一番弱い個体であっても上位戦士が複数人相手しなければ倒すことができないとされている。
現在、中位戦士2名。下位戦士が5名。そして一般市民十数名。
絶望の降臨である。
ニアは即座にアークを起動。腰に備えていた筒状の銃を空へ放つ。
放たれた弾丸は空高く打ち上げられ光を放つ。信号弾だ。
エマージェンシーコール中で通信ができない
「皆!ボクのできる最大の加護を授けます!恐らく30分は持つはずです!」
アークを起動していたアズールが権能【祝福】を行使する。加護をうけた者の全ての力が上昇するものである。
彼の両手に握られた杖から光が伸び、一般市民を含む全員を包む。
セラを始めとする下位戦士もアークを起動し身構える。
その時、黒き絶望が姿を消した。
だれも目を離していなかったのにその姿を見失った。一部を除いて。
「アズールさん!後ろ!!」
リューネが叫ぶ。彼の権能を以てしても明確に捉えることはできなかった。
「え?」
ぼとっ
黒き絶望はアズールに振り向く隙すら与えず、彼を細切れにした。空中で破壊されたドローンのように。
肉片と判断することもできず彼の居た場所が赤に染まる。
ヤツは満足げに鎌に付いた血液を払っていた。
あと6人
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