間章
揺れる船にて#1
『消サナイト、消サナイト。コノ世界ハ順応デキナイ。コレジャ受ケ止メラレナイ。消サナイト、変エナイト。』
『**ヲ壊サナイト。』
~~~~~~~~~~
「ぅわあああぁぁ!?」
「へぇッ!?びっくりさせないで!もう・・・・・でも、おはよう。ようやくお目覚めね?」
「ご、ごめん。」
(今のは一体・・・?)
驚いたミルネの声でセラは、現実に戻ってきたことを彼は実感する。
意識の覚醒前まで頭に響いていた声は既に消えており、彼は頭を傾げる。
また、セラは自分が今知らない部屋に居ることに気付き、周囲を見渡した。
「ここはどこ・・・?」
「ムー大陸中央にある学園アルゴに向かう創天協会所有の船よ。」
「ふぇ!?」
ミルネの回答にセラは
声が、白を基調としたこの部屋に響き、すぐに静寂が訪れる。
戸惑いを隠せていないセラに、部屋の椅子に腰を据えるがジト目で尋ねた。
「あんた、気を失う前のこと覚えているの?」
「え・・・、んー・・ミルネの姿を見て無我夢中に・・・あっ!」
ベッドから上体を起こしていた彼は、気を失う前の行動を思い出し、思わず身体を横に座るミルネの方へ詰めて、逆に尋ねる。
「怪我は!?」
「怪我は!?じゃないわよ・・・はぁ、全くもう。まぁ、おかげ様で何とかなったわ。・・・とりあえず、あたしが説明するより見た方が早いわ。自分の眼で確認しなさい。」
ミルネはそう言い、セラに2つの手鏡を渡し、うなじを見るように指を指す。
セラは言われるがままに自分のうなじを確認し、見たことのない黒い刻印があることに気が付いた。
刻印の場所と大きさには見覚えがあった。
隣の華奢な少女が翼を広げた時、眼に焼き付けたものと同じであると。
「これは、もしかして?」
「それがアークよ。」
「ンッ"!!・・・ふぅ~。」
セラは思わず声を上げそうになったが、部屋にある窓と時計が深夜であることを告げていることに気付き、声を押し殺し、息を漏らした。
同時にセラは、ミルネに聞かないといけないことがあるのを思い出し、彼女の顔を見た。
彼女も何を訪ねられるのかを気付いたのか、先ほどのジト目は異なり、真剣な表情で投げられる問を待っていた。
眼があったのは一瞬であったが、彼らの内なる世界には時計の針が回る姿が浮かぶほどの時間が過ぎた。
セラは頭を振る。
「やっぱり僕は・・・何も聞かないよ。」
「・・・・え!?」
ミルネは思わず
「だって、過ごしてきた時間は嘘じゃないし、戦いの始まりの時にミルネが言ってたことを思い出したら分かる。・・・嘘は僕のためだったってこと・・・。」
――――あなたを守る我儘は言わせて欲しいの・・・
自分の発言を思い出し、ミルネは思わず赤面して目線を逸らす。
しかし、直ぐに表情を戻しセラに向き合う。
「あんたは、いつからそんなに物分かりが良くなったのかしら・・・。でも、あたしの思いを汲み取ってくれて、ありがとう。」
「へへっ」
面を向って謝罪をされたセラが今度は頬を赤くし眼を細め右手で頭を掻く。
「照れてる所悪いけど、聞かれなくても言わなきゃいけないことがあるの。」
ミルネの真剣な声色を聞き、セラは掻いていた手を下す。
「あの戦闘を視たなら分かるとは思うけど、あたしたちの居た家、街は全壊よ。」
「・・・」
分かっていたがいざ言葉として告げられると・・・やはり重い。
「だから、あんたのルビア姉を探したい願望と、そのアーク、そして学園長である、あたし権限を以て、戦士育成をしている学園アルゴへ向かうわ。」
「が、学園長!?」
「そうよ?誰があんたに勉強を教えてたか忘れたわけじゃないでしょうね?」
「・・・ソ、ソウデスネ。」
「まぁ、これもあたしが隠していたことの一つだから、驚くのも無理ないけど。」
そう言いながらミルネは両手を空に挙げ、大きく伸びをした。
そんな彼女を視て、セラは何か思い出したかのように目線を上げ、左手を顎へ持って行っていき、その体制で固まる。
「セラ、何か言いたいことでもあるのかしら?」
「なにも聞かないって言ったけど、一つだけ・・・。母さんのこと、何か教えてくれないの?あの黒い男は行方不明って言ってたけど。」
「・・・」
ミルネの動きが止まる。
セラにとっては何よりも大切なことであった。ミルネもそのことは理解しているので表情が凍る。
「えぇ、あの男の言ってた通り、ルビア姉は今、行方不明の状態よ。誰もどこに居るか知らないの。でも、これだけは言える。・・・ルビア姉は生きてる。妹である、あたしが保証するわ。」
(ルビア姉を倒せる人間、生物なんて存在しないもの)
「・・・そっか。捜し
「そうね、あたしも学園に戻ったら協会と協力して捜索の準備をするわ。何か掴んだら、真っ先にあんたへ連絡を飛ばすから。」
「ありがとう。」
母親の捜索、此のことにセラが囚われ過ぎていることは明白であった。
セラの横に座る少女は知っている。一つの物事に囚われ過ぎると重い柵となり、その者の視野が狭くなり、取り返しのつかない失態になると。
ミルネは、ほんの少し、顔を伏せ眼を閉じる。
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