第3話:天使は降臨し戦地を駆ける
2人の周りには、四足獣のような姿の異形から、二足で立ち、こちらに歩きよるものまで様々な靄で覆われた異形が迫り始めていた。
そんな中、華奢の少女による
他から孤立した、四足獣の異形3体が並ぶ正面に対し、右手に握られた華奢な身体に似合わない大盾を少女は目いっぱいに投げつける。
大盾を投げつけられ真ん中の異形が、その身に纏う靄をも消し飛ぶ勢いで木っ端みじんに飛び散る。ミルネは、木っ端みじんに消し飛んだ異形の靄と投げた大盾の光の塵が残る場に、地が爆ぜ、身に纏う光の装甲が残像を刻む速度で残る2体の元へ迫る。
「ヤァァァッ!!!!」
ミルネのシャウトと共に、いつの間にか再び右手に握られている大盾を使い、残る2体を薙ぎ払い吹き飛ばす。吹き飛ばされた異形が地を抉る様に転がり、その摩擦で消し炭と化した。
まさに瞬殺。
ミルネは薙ぎ払い終えた大盾を右手から離し、両手を身体の前に出す。役目を終えた盾が光の塵となると同じタイミングで、両手には彼女の背丈と変わらない大きさの光の槍が握られていた。
そして、何かを願うかのように、祈るかのように眼を閉じ、光の槍を掲げる。
「
呟かれた言葉が枯れる間に少女は、星槍を地面へ深く、深く突き刺す。
刺さった槍は地面へ吸い込まれるかのように消えた。
周囲に居る大小、姿形、様々な異形がミルネに向かって走り出している。
異形らは華奢な少女が手に何も持っていない、今、この状況を、攻め時だと思ったのだろう。彼らに仲間意識など存在しないが、それでも瞬殺された同胞を見て危機感を持ったのが見てわかる。
ミルネは右手を空に掲げる。
パチンッ!
ミルネの指から乾いた音が鳴る。
空気が震え異形らの足音のみが音を刻む。
彼女に向け走り出していた異形たちの足元の地面がひび割れ、光が顔を覗かせる。
そのまま飛び出した星のかけらは、突き刺されたものと比べかなり細い槍であったが異形の頭を的確に貫き、空へと昇る。
その様子はまるで地から月夜へと流れ星が駆けていく様であった。
貫かれ活動停止した異形らは、その場に伏し身体が砕け塵となった。
約半数近くが串刺しとなり、ミルネの周りはがらんと空間が空く。しかし、黒い靄は未だに明ける気配を見せず、それどころか再び集まりだし異形を生み出す。
「チッ。」
その光景を見たミルネが舌打ちをする。
ミルネは、即座に大盾と槍を再び創造し、新たな敵に目掛けて地を深く蹴り、駆けだす。
夜の闇に刻む光の軌跡となり、敵を屠る少女を、光の球体に閉じ込められた少年は、ただ
突如、非日常になった現実にセラは思考が追いつかない。
セラが唯一理解できているのは、5年間共に過ごした存在に翼が生え【天使】になったということ。
(もしかして、あれがアークなのか?ミルネがなんで?今まで、あの人の身体にアークなんて見たことなかったのに・・・でも、確かに。)
「デタラメだ・・・」
セラは、普段ミルネがアークの説明する際の「デタラメ」という言葉が頭に過り思わず呟く。
異形を文字通り
物語に登場する英雄、
戦士であることを告げているようであり、
彼の眼は、ミルネのことを光の装甲が残す軌跡のみでしか追い切ることが出来ず、その情景を眺めることしかできなかった。
そんな彼の元へも異形が迫っていた。
少女に見惚れていたセラは、二足獣の異形が夜の闇に紛れ自身の寸前まで近づいていたことに気付くことができなかった。
「ッ!?」
異形が光の球体ごとセラの背を捉えんと拳を構えた時に彼はようやく気づき、思わず眼を瞑り身構えた。
が、拳は振り下ろされることなく彼の前に光が遮る。
恐る恐るセラが眼を開けるとミルネが拳を大盾で防ぎ、頭を槍で貫き、立っていた。彼女はその異形が塵になったのを確認すると再び光の軌跡と地に踏み抜かれた靴の痕を残し駆けだす。
戦地を駆ける天使は湧き続ける異形を蹂躙し続ける。
手に持つ大楯で四足獣の異形の頭を地面に殴るように叩きつけ、そこに槍を地面ごと突き刺す。
後方から来る二足獣の異形に対し地面に突き刺した槍を掴み、そして軸にして回転、加速し、首目掛け蹴りを繰り出す。蹴られた異形の首は超速で飛び、その首に触れた異形共をも撃ち抜いた。
軸にした槍から手を離し、地面へ着地したタイミングを狙い突進をする異形もいたが、ミルネに触れることなく、寸前で壁に衝突したかのように動きを止める。
「視えてるわよ!」
ミルネと異形の間には、セラを覆ってるものとよく似た模様でできた光の壁があり、その動きを止めていた。
ミルネは、衝突したことで蹌踉た異形を逃す事なく手に持つ大楯で地面に叩きつけ塵とした。
しばらく蹂躙が続き、異形の軍勢にようやく限りが見えた時、
特異点が降臨する。
パチ、パチ、パチ
「いやぁ、流石の力だぁ。こんなところに居たんですね。【
戦場と化していた街はずれに、乾いた拍手が響く。
まだ黒い靄が佇む大地に執事服を纏った黒髪、
男の首元にあるバッジが月明りに反射している。戦っていたミルネが相手にしていた目の前の異形を塵にし、男を見て顔を顰めた。
(しばらく戦っていたといえ、あたしが気配に気がつかなった・・・しかもあのバッチは・・・)
「あんた、そのバッジは『
男は怪しげに笑う。
「フッ・・・ご
旅人と名乗った男は深くお辞儀をした。優雅にる舞う彼の周囲にいる獣たちが彼を見えていないかのように走り抜けていく。戦場には変わりないこの地に無傷で、尚且つ戦闘を行えるような姿ではない彼は異様であった。
ミルネは彼を無視し攻撃を仕掛けてくる異形の相手をしながら、黒に包まれた執事に問を投げ続ける。
「まさか・・・この災害は、あんたの仕業なのかしら?」
「そんなぁ、我々の目標は人類の勝利でございます。」
彼は薄っぺらい笑顔見せ、短く答える。
「じゃあ、なんで、あんたは星壊の獣に襲われないのよ!操っているんじゃないの?」
「災害を操るなんて・・・使徒でもない私にできるわけございません。まあ・・・対抗する手段をいくつか持っているだけですよ。」
彼はそう言い、着ている執事服に指をさし、魅せつけるよう軽く会釈した。
「じゃあ!一体なんの用なの!?見ての通り、こっちは暇じゃないのよ!?」
のらりくらりと意図が掴めない男に対し、ミルネは思わず苛立ちを露にし声を荒らげた。
状況に置いて行かれているセラは、ミルネと男を交互に見ることしか出来なかった。
そんな状況のセラを男は
「ヘッ!?」
セラは、一瞬であったが男と眼が合い、その顔がニヤついてるのを見て、思わず顔を背けた。
男はミルネ、セラを確認したことで満足そうに笑みをこぼしてきた。
そして、とある災害の出来事と、自身の目的を淡々と語りだした。
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