第2話 織姫と彦星の休み時間

「いやー、あんなに嫌がってたのに、朝一緒に登校だなんて、あはッあはははははーwwwヤバーイ、腹筋崩壊しそうwww」


そういいながら、輪廻は膝の上にあるお弁当を落とさないようにしながらも、腹を抱えて爆笑していた。


「もぉー。輪廻、あんまり笑うと結花が可愛そうでしょwでも、確かにおもしろーい!」


莉子は、しているのか分からないフォローをしながらも、持っているはしを震える体と共に揺らしている。


そう、今は昼ご飯の時間。

場所は屋上。

この学校では、週2で給食、週3でお弁当の日になっている。


ちなみに、先程の2人の言葉を聞いて結花は笑いながらも、それは、それは黒い笑みを浮かべていた。

もう、これだけで結花が機嫌が悪いことが容易に窺える。


もちろん、この事を悟った2人は少しずつではあるが話題を別の方向へとずらしていった。

しかし、気になることはしっかりと聞きたいのが2人の性格である。


「でも、なーんであんなに嫌がってたのに朝一緒に登校してきたのー?」

「家が近かったから?私、家遠いからそこら辺よく分からないんだよね」


輪廻と莉子は最初からずっと気になっていたことをキラキラとした好奇心の塊であるような目を結花に向けて聞いた。


うーん。何処から話そうかな。と結花は悩みながらも大体の事を───昨日の夜のことは話さずに今朝の事のみを話した。


「あのね、朝ね──────」


「──────────」




「珍しいねー。結花が寝坊なんて」

「そうだよね、結花ってしっかりと時間守るイメージがあるから」

「でも隣なのは偶然にしてもすごいねー」

「そうそう!もしかしたら運命かも!」

とそれぞれ、感想を述べていく。

莉子に関しては最後の頃恋愛バカが爆発していた。


「私だって、寝坊なんて初めてだよ!昨日、よく眠れなかったの!」

何か誤解されていることに気付いた結花は慌てて弁解する。



「何を、楽しそうに会話してるんですか?」


結花達の頭の上から天女のような声が聞こえた。でもその声は、結構低めのハスキーボイスだ。

3人が揃って上を向くと、そこには清理が立っていた。

そう、声の主は清理だったのだ。


「おー!丘星君かー!」

「すごく良いところに来てくれたね!」

輪廻と莉子はナイスタイミングとでも言うようにすかさず清理に声をかける。

「げッ」

一方、結花は何とも嫌そうな顔をしていた。


「そんな顔しないで下さい、、」

そして清理は、朝と同様凹んだ空気を纏う。


「そーだよ!結花!」

「ほらぁ、可愛そうでしょ」

輪廻と莉子は結花のフォローなどは全くせず、清理についた。


「裏切り者!私じゃなくて、そっちにつくのか!」

結花は、戸惑いながらも怒りに満ちた声で言い放った。

そこから、一方の遊び心によって始まった言い争いは続く。


「まぁまぁ、そんなに争わないで下さい」

その言い争いに幕を下ろそうとしたのは女子3人ではなく清理だった。

しかし、、、


「「「誰のせいでこうなったと思ってるんだ!」」」

いつの間にか、争いはヒートアップしていたのだろう。


頭に血が上っている女子3人は全ての元凶である清理に怒鳴った。


────数分後─────


「はぁ──────」

「こんな争いしてても埒が明かないよね」

「何やってたんだろう、私達」


結局、清理の一言は争いの幕退きに役立った。


「、、────で、何がナイスタイミングだったんですか?」

ここで聞いて良いものかと悩んだが、ずーっと気になっていたことを清理は輪廻や莉子に聞く。


「あぁ!それねー。丁度、君の話してたんだよー」

「そうそう」

「まぁ、間違ってはないですよ、、」

3人は、同意する。

何故か結花だけ敬語だ。


そんな彼女に違和感を抱きながらも清理は、会話を進める。


「なんの話ですか?」


「今朝ねー、丘星君と結花がドアを出た時にばったり会ったって話ー!」

「そうそう!運命感じちゃうよね!」

「ッちょ!止めてよ!」


またもや莉子の恋愛バカが爆発し、それを結花が慌てて押さえる。


「確かに、あれは正直ビックリしました」

清理は、3人に向かってそんなことを言いながら何とも胡散臭い笑みを浮かべながらも、視線は結花のみに向いている。

まるで、

『昨日の話してないんだな』

とでも言うように。


もちろん、結い花はこの事に気付いた。

だから、

「私も、すごく驚きましたよ」

と清理に向かって彼と似たような笑みを顔に張り付ける。

まるで、

『えぇ。言うわけないでしょう。バカですか?』

とでも言うように。


これを、〖視線での会話〗と比喩して良いのか迷うところだが、そうだった、ということにしておこう。


キーンコーンカーンコーン───

キーンコーンカーンコーン───


聞き慣れた、ウェストミンスターの鐘の音が校内に響き渡る。

それは、屋上も例外ではなかった。


「じゃあ、またねー」

「「またねー」」

「じゃあ、教室に戻りましょうか」

「えっ?一緒に?」


昼休みの終わりのチャイムにより、屋上での昼食と談話の時間はお開きとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る