第2章 〖急接近〗
第1話 織姫と彦星の登校
ピ、、、ピピッ、、、、
?、なんの音?
ピーーーッ、、、、ピピピピピー
少しずつ、意識が浮上していく。
ピーーーーーーーーーー
「あぁ!もう!うっさい!」
朝からやかましくも、結花は鼓膜が破れるような大声を発して目を覚ました。
時計に目をやると、
8時45分。
急がないと学校に遅刻してしまう時間だ。
「ぎゃー!!ヤバいヤバいヤバーイ!!」
悲鳴に近い叫び声を上げて、寝ていたために反転している視界を通常に戻す。
この、え?!誰?!このキャラ?!と思わせる人物はもちろんの事、結花である。これは、彼女が学校では、まず見せない彼女の真の姿。
とそんな、くだらない解説はさておき、、、、。
結花は、飛ぶようにベットから飛び起きると、秒で制服に着替える。本当に秒単位だった。
そして、階段を滑り落ちそうになりながらかけ降り、リビングにスライディングで入室する。
座る時間なんて、まず存在しないので結花は立ちながら朝食を食べる。
「ッいただきますッ」
ごめんね、お母さん。時間がないから半分ね!
そう、心の中で謝りながら結花は早食いする。
3分後、、、。
「うぐっ、、ご馳走でしたッ」
そして洗面所に向けて走り、歯を30秒で完璧に磨き、忘れていた顔を勢いよく
次に、髪。
ぐちゃぐちゃどうのこうのは、考えないものとして、とりあえず
もう、顔の水滴は蒸発した。
リビングのテーブルの上には、まだ朝食をのせていた食器が無造作に置いてある。
しかし
「ッ、いってきますッ」
時間がこれでもかという程に惜しいため、結花は荷物を持ち、家を飛び出した。
その時だった。
「───じゃぁ、母さん!いってきます!
ヤバッ、もうこんな時間じゃん!」
隣の家の奴も、寝坊した生徒?だろうか。そんな、考えが頭をよぎり右隣の家のドアに目をやる。
なんか、聞いたことある声だな。
でも、この家ってつい最近引っ越して来た家だったような、、、。
と考えを巡らせていると、結花の視界には結花の思考を停止させるのに十分な、非常に驚くべき光景が飛び込んできた。
向こうも、結花の方に目を向ける。
「「え?」」
隣の家から出てきたのは昨日の夜、結花が会った人物だった。
綺麗な青い瞳が、登り始めた日の光を反射してキラキラと輝いている。そんな目を見開き、さらにはパカッと開けて一向に閉まらなそうな口を見るとその人物───丘星清理が相当驚いていることが
一方、結花はというと口元を歪ませて、嫌悪の視線を清理に送る。
「そんな嫌そうに見なくても、、、」
清理は我に返りいきなり、しゅんとして最愛の飼い主に捨てられた大型犬のような雰囲気を纏う。
そして、結花も自分が非常に悪い態度を相手にしていたことと、遅刻するかもしれないという事実に気付く。
「あ、あぁ、ごめんなさい!時間が無いんで行きます!」
「あ!そうだ!ヤベッ!俺も急がないと!!」
そんなお互い、独り言かも分からない声を上げ、全力で走り出した。
結花が先に走り始めたはずだが、やはり体力の違いだろうか、清理は軽々と結花に追い付く。結花も女子の中ではそれなりに体力がある方なのに。
「先に行けば良いじゃないですかッ!!」
「いやー、一晩の付き合いがあったのでやっぱり見捨てない方が良いのかなって─────」
「誤解を招くような言い方しないッ!」
そんな、漫才とも捉えることが出来るやり取りをしながら2人はひたすら走る。
やっぱりと言うべきだろうか。学校に近づくにつれ登校する生徒の姿も増えていった。
どうやら、2人は走ったおかげで遅刻を免れそうだ。
「ねぇ、あれって?」
「隣にいるの誰?彼女?」
「えぇー?!うそ?!やだぁー!」
「狙ってたのにー!!清理様ー!!」
結花の背中に何とも言えない女子生徒から発せられる怒りに満ちた言葉が突き刺さる。
「たかが1日しか登校してないのに人気なんですねー。〖清理様〗」
「その嫌みがある言い方止めてくれません?その最後の清理様って愛情よりも嫌みが大きいと思うんですけど」
「勘違いしているようなので訂正させてください。愛情なんて1ミリもありません。安心してください」
結花は、目立つことを嫌う。人前でも猫を被り、陰キャを演じる。
なのに、どうして清理の前では隠すことが出来ないのだろうか。
様々な嫌み、ストレスをこれでもかと言うだけ込めて、結花は清理を煽る。
「まぁ、そういうことにしておきましょう」
先に折れたのは清理だった。
そして、
「廊下走るなー!!」
最初からの勢いのまま教室まで行こうとした2人は先生に怒られた。
「「はーい」」
一応、2人とも学校では真面目で通しているので、しっかりと返事をする。
もちろん、その後は2人そろって走らずに教室に向かう。
教室に着き、いつも通り自分の席に座ろう。そう思った結花はあることに気付いたとたん、苦虫を噛み潰したような顔をした。
「嫌そうですね。顔が雄弁ですよ」
「、、まぁ、嫌って言葉が一番適切な感情を抱いてますよ、、」
結花の席は一番後ろの窓際から2番目の席だ。窓側の隣の席は清理が転校してくるまで空席だった。
すなわち、清理は結花の隣の席だったのだ。
「たかが1日しか来てないし、すぐ私、教室から出てっちゃったから知らなかったわ、、、はぁ───」
「よかったですね───」
清理は、さっきのお返しだ、とでもいうようにニコニコと胡散臭い笑顔を撒き散らしながら隣に座る。
対して結花は、ほぼ1日こいつの隣で過ごすのかと思い、快晴の天気とは裏腹に憂鬱そうな顔をするのであった。
こうして、7月8日の学校生活が始まった。
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