第5話 彦星、神々と対話した。

あれから、何も起こらず次の日 。


朝。

『ーーピーッピピピピピ・・・』


(うるさ、、、)

ベット脇の窓。

その上に掛かっているカーテンの隙間から朝の光が漏れ出ていて、朝になったことを物語っている。


「はぁーーー、、、」

俺は、重い体を起こしながら昨日の事を思い出し、盛大にため息をついた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『はぁ?!』

『図々しいにも程があるわよ!』

『ここまでしてあげたのに、まだ何かあるわけ?』

聞き覚えのある女性の怒声が、耳を刺す。


俺だって、お前達に頼み事をするなんて、これ以上嫌だ。

でも、ここで引き下がったら何のためにここまでやってきたんだ。


(我慢しろ、我慢だ)

俺は、家のベランダから星空を見上げながら、心の中でそう叫んでいた。


この、奥がなく吸い込まれるような星空を目を凝らして見ると

胸がふくよかで波打つ美しい金髪をもち母性愛を感じさせる女性 -生命の神とストレートの紺の髪に透明度の高い古代紫の目をもつ、まるで菖蒲の花を連想させる女性-摂理の神、そして、赤焦げ茶の髪を高い位置で結って首に輪廻の輪をモチーフにしたものと神石しんせきを組み合わせてできている首飾りを付けている、見た目は少女だが永年を生きる女性-輪廻の輪を司る神が俺に向かって冗談めかしく腹を立てている様子が見える。


もちろん、普通の人間が目を凝らしてもこの光景が見える訳ではない。

俺が普通ではないのだから。


普通、神が〖死に〗生まれ変わっても魂が少し特殊なだけて、せいぜい陰陽師おんみょうじ霊祓師れいばいし程度の力しか使えない。


しかし、普通のそれらに比べたら一国を滅ぼす程度には、力を持っている。


しかし、俺の場合、前世での神力しんりきが、かなり強く生まれ変わっても神力が残っていた。

否、少し違う。俺が先程の3神と全ての神の生命を司る最高神に頼み込んだからだ。


そう、俺は前世〖神〗だった。




『仕方ないだろ!せっかくここまでやっておいて、近づけないのは、問題だろ!』

俺は、怒鳴った。当たり前だ。

我慢なんて出来るはずがない。

様々な根回しをして、多くの神々に認めさせ、やっと会えたと思った彼女には全く近づけない。


これで、クレームを発しない奴がいたら会いたいくらいだ。

いや、出てこい。根性叩き直してやる。


『あらあら、そんなこと言って良いのかなー?』

『誰が、最高神に取り次いで上げたと思ってんの?』

『神々の説得手伝ってやったのにー!』

人を煽るかのように、否、冗談めかしく煽りながら、笑いを堪えているようだ。

それでも、最高神に次ぐ高位八神

なのだろうか。

完全に遊ばれている、、、。

これでも、我慢してるんだ。


少しの間、沈黙が続いた。


『はぁーーー』

生命の神がこれでもかというような盛大なため息をつく。


『仕方ないなー。私だって、神々の世界と人間界2つの世界の摂理を管理してるから、あまり余裕ないんだからな!』

摂理の神は、少しだるそうにしながらも、しかし少し張り切っているように言ってくる。


『まぁ、元々君の事応援していたから協力してあげられるけど、これが最後になる。しかも、あまり力にはなってやれない』

輪廻の輪の神は、諭すように言った。


『どれくらい、力になって頂けますか?』

気持ちを改め、堂々と神々に問う。

力に限りがあるならば、よく考えて頼らなければならない。


『君の、生命の元の方の魂に前世の記憶を、さらには神力をのせるのにかなり力を使ったから、、』

生命の神は、こめかみをおさえて言葉を発している。


『お前と、あの娘の魂を同じ世界に送るのに力を使ったからな』

輪廻の輪の神は[どうする?]とでも言うように、摂理の神に言う。


『そのせいで、私も力を使ったからな』

と、摂理の神は輪廻の神に返す。



神々は、死んだらもちろん生まれ変わる。

しかし、神はそれぞれの力が強く、記憶はなくとも陰陽師や霊媒師等になり、自然と世界を導いていく。

そのため、1つの次元に1神しか生まれ変われない。

そうでなければ、世界が、次元の根元が崩れていくからだ。


だから、本来は俺と彼女が同じ世界に生まれ変わるはずがないのだ。

それを、摂理の神に頼み、次元の摂理を曲げてもらい、

さらには、輪廻の神に意図的に同じ世界に、国に生まれ変われるように指示を出してもらった。


『しかし、まさかあの娘に 近づけないとはね、、』

生命の神が、心底意外そうに言う。


そうだ。本当ならば、彼女と再会し少しずつ、少しずつ距離を縮めていきまた、恋仲になろうと思ったのに。


それが、俺が彼女に近づくと彼女は、拒否反応を起こすように体調が悪くなった。


理由は、大体予想できている。


『何故だと思う?』

気を取り直した摂理の神は、作業のように俺に淡々と問う。



それに対して、自分が予想している事を述べた。

『〖神力〗のせいでしょうか』

と。


ただ、ひたすら冷静に。予想は当たりだったようだ。


神々が俺の言葉をを聞いたとたん、顔付きが真剣なものに変化した。


『そう、なんですよね?』

自分としてはそうであってほしくなかった。


『ああ』

しかし、その願いは虚しくも摂理の神の冷たくも同情が含まれた一言により崩れた。


『元々、あの娘は神力は有れど、特殊なゆえに他の神力のはあまり相性が良くない。さらに、お前は、元々神力が強いから、、、』


そうだ、前世もそのせいで、、。


今回は、神々との会話や万が一のとき、そして前世の記憶を保つため、神の生まれ変わりの平均以上の神力を持って生まれ変わったのだ。

こうなることは、想定できた、はずだったのに。


考えが、、、。

甘かった。これは、俺の落ち度だ。でも、この問題は何とかしなければいけない。


『ならば、、、。

ならば、一定の条件を満たしたとき。、、俺の神力を消す事は出来ますか?』


『完全に消す事は出来ないが、あの娘が反応しない程度には弱めることが出来る。我々の力を持っても、お前の神力を押さえきることが出来ないからな』

摂理の神が答えた。

『しかし、条件とはどうするのだ?』

輪廻の輪の神が問う。


『例えば、あの娘と君の距離がが10m以内、、、要するに短くなった時のみに、とかはどう?』

『そんなに、力が使えるんですか?』

生命の神の提案にいち速く俺が反応する。


当たり前だ。いくら神々でも、今までの俺のわがままを聞いてくれたから、[星空の下でのみ]とか、[彼女が風邪を引いてるときだけ]とか、かなり狭い条件だと思ってたのだ。


それなのに、距離だけの問題?

そんなのもう、いつでも、神力の事を考えずに会うことが出来るってことだ。

あり得なだろ。



『ああ。そのくらいなら、我々3神の力を合わせればギリギリ行える』

『でも、その代わり、急にあの娘の様子がおかしくなったりしたときは、神力が弱くなっているため、我々とは急ぎの対話が出来ない。それでも良いのか?』

輪廻の輪の神と摂理の神は、可能だと答える。

予想外だ。近づくことが出来るのならば、その方がいい。


『はい、それで、お願いします』

『判断が早いなー。本当に良いのか?これをやったら、これ以上、手を貸せないよ』生命の神が念のためと、わざわざ確認してくる。

『ああ。彼女に近づくとが出来るのならば、それ以上望むことはないので』

俺は、もうこの意見を曲げる気はない。

本当にその通りだからだ。


すると摂理の神が

『しかし、最初は我々の神力を調整したりしなければならないから、いくら我々3神の力でも弱まる。だから、初回はもう1つ条件を付けよう』


『分かりました』


その後、軽い打ち合わせが入り、


こうして神々と俺の対話は無事終わった。

俺は、対話により疲れた心身をベランダ付近にあるベッドに体を沈め、まぶたを閉じる。


ここで、俺の意識の線はテレビの電源を落としたようにプツンと切れた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


とりあえず、7月8日からじゃないと学校には通えなそうだ。


でも、しっかり勉強はしないと。

授業に遅れてしまうからな。


(はぁ、待ちきれない。)


しかし、楽しみだな。


7月7日の夜、

彼女に会うことが。


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